1-6 現実世界にて ~昼食~
気が付くと、私は現実世界で目を開けていました。
接続終了の文字が浮かんだVRヘッドを外し、軽くストレッチしてから部屋を出ます。
短い廊下を歩いてリビングルームに入ると、ちょうどルームメイトである千鶴が昼食を作ってるところでした。
「良い匂い……」
「はいはい。もうちょっとでできるから食器用意して」
「はーい」
そう返事をしつつ、食器棚から必要なお皿を取り出しカウンターの上に。
ついでに冷蔵庫から取り出したエナジードリンクをゴクゴク。
うーん、カフェインが身体に染み渡りますね。
「なんで食事前にそんなの飲むかな」
「私にとってエナジードリンクは水みたいな物ですから」
「このカフェイン中毒者め……」
友よ、それは我々にとってはむしろ褒め言葉ですよ。
「はい。できたから自分の分持って行ってね」
自分の分の皿と半分残ったエナジードリンクを持って食卓に着くと、すぐに千鶴もやってきて私の正面に座りました。
そして2人でモグモグしながら話題に上がるのは本日届いたゲームの話。
「で、例のゲームはどうだったの?」
「流石はトップハント社の最新VRって感じですね。アバターも違和感なく動かせましたし、景色なんかもゲームとは思えないくらいにリアルでしたよ」
一昔前のゲームだと動作がカクついたり、グラフィックが雑だったりっていうのがザラでしたからね。
「ちなみに、これが私が使ってるキャラです」
携帯端末に自分のキャラデータを表示させて千鶴に渡します。
「おー、可愛い。ちっちゃい」
「グラスランナーっていう種族で、身体が小さいのは種族的な特徴ですね」
せっかくですし、ゲーム内で撮ったスクショを千鶴と一緒に見ていきますか。
「これがグラスランナーの集落」
「ほー、なんかあれだね。モンゴルのテントっぽい」
「多分他の種族もそれぞれ特徴のある集落になってるんじゃないですか?」
例えばエルフだと樹上の家とか、ドワーフだったら地下都市だとか。
行く機会があれば是非とも見てみたいものです。
「で、これがモンスター」
「ひぃっ。な、なにこれ?」
「リトルワームっていう、いわゆるミミズですね」
「いやいや拡大しなくていいから。こんなのと戦わなくちゃいけないの?」
「慣れれば案外平気なものですよ?」
実質動くサンドバッグみたいなものですし。
ビジュアルさえ気にしなければ戦いやすいモンスターなんですよね。リトルワームって。
「それにどうしても戦えないっていうんなら生産職としてプレイするっていう選択肢もありますし」
私はまだ手を出してませんけど、このゲームは生産活動でも経験値が貰えるらしいです。
なので一切モンスターと戦わずに――というのは難しいかもしれませんけど、ほとんど戦闘をすることなくゲームを楽しむことも可能というわけですね。
「千鶴だったら料理とかどうですか? ファンタジー世界特有の素材を使ったオリジナル料理とか作れますよ」
「それはちょっと興味あるけど……そもそもの話、今からやろうと思ってもソフトが手に入らないんじゃないの?」
「あー、確かに」
2陣の予約も瞬殺したってネットニュースで言ってましたし。
多分年末までには3陣の加入があるでしょうけど、少なくとも現時点での参加は難しいと言わざるを得ないでしょう。
「残念。あっちでも千鶴の料理が食べられると思ったんですけど」
「プレイヤーはいっぱいいるんだし他に料理する人くらいいるでしょ。というかゲーム内でくらい自炊するっていう選択肢は?」
「はっはっは。ご冗談を」
笑顔でそう応えると、呆れたような眼差しでため息を吐かれました。何故。
「まぁゲームに興味があるならとりあえず予約だけしてみたらどうです? 運が良ければ3陣で参加できるかもしれませんし」
今なら私が使ってたVR機器が余ってますから、お得に始められますよチラッチラッ。
「はいはい。一応前向きに検討しておくわ」
ひらひらと手を振りつつ、空になった食器を持って席を立つ千鶴。
私も残ってたエナドリを飲み干し、自分の分の食器を持ってキッチンへと向かいます。
「それじゃあ、後はお願いね」
洗い物の担当は私なので、千鶴はそのまま自室へ。
さて、私もちゃっちゃと片付けを終わらせてゲームの続きをしましょうか。




