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1-1 キャラクターメイキング

 ――『全ては、少女の願いからだった』


 真っ黒い空間の中、どこからか声が聞こえます。

 ああ、オープニング的なアレですね。


 ――迫力のある戦闘に賑やかな街の様子。


 ――雄大な山々に幻想的な雨の降る森。


 ――透き通った湖畔に浮かぶ水晶の城。


 ――強大なドラゴンと雨のように降り注ぐ雷。


 ――身の丈ほどの大剣を振り回す金属鎧姿の戦士、槍を構えて突撃する兵士たち。


 そんな壮大かつファンタジーな光景が次々と展開され――


「スキップで」


『――オープニングをスキップしますか?』


「はい」


 まぁオープニングムービーは公式のホームページでいつでも見れますしね。

 それより今は早くゲームがプレイしたい。

 オープニングをスキップすると再び視界が真っ黒い空間に戻りました。

 おや? いつの間にやら目の前に古めかしい風体の本が浮いてますね?


『To The World Roadへようこそ』


 本が勝手に開き、どこからともなく声が響きます。

 ……こいつ……直接脳内に……。いや、VRなんだから特におかしくもないんですが。

 そういえばさっきスキップしたオープニングのナレーションも似た感じでしたっけ。


『これから貴女の分身となるアバターを作成します』


 と、私の右手前方、本の隣に半透明の等身大マネキンが表示されました。

 ふむ。これがゲーム内でコントロールするキャラクターになるわけですね。

 つるんとしたマネキンを表面を眺めていると『アバターにリアルでの身体データを反映させるますか?』との表示が出たので、ポチッとYesを選択。

 するとマネキンの姿がいつも鏡で見ている自分と同じ姿に変化……てか再現率高いですね。流石最新のVR機器といったところでしょうか。


『まずはアバターの種族を選択してください』


 最初に決めるのはキャラクターの種族。

 今表示されているのはヒューマン……いわゆる人間ですね。

 このゲームでは人間以外にもエルフやドワーフ、獣人などの種族が選択可能で、それぞれの種族によって上がりやすいステータスや取得しやすいスキル傾向に差があるとのことです。

 各ステータスについては、


 HP(生命力)…これが無くなると死亡する

 MP(魔力)…魔法やアーツを使うのに必要

 STR(筋力)…近接攻撃のダメージ、装備できる武具の重量に影響

 DEX(器用)…遠距離攻撃のダメージ、手先を使った行為、生産に影響

 VIT(耐久力)…物理的な防御力に影響

 AGI(敏捷)…機動力、移動スピードに影響

 TEC(技量)…命中率、攻撃スピードに影響

 INT(知力)…魔法攻撃のダメージ、詠唱速度に影響

 MND(精神力)…魔法的な防御力、回復魔法の効果量に影響

 LUC(幸運)…クリティカル、アイテムのドロップ率に影響


 こんな感じに説明がされてます。

 ちなみにヒューマンのステータスはHPからLUCまで全部『C』。

 特徴が無いのが特徴というか、成長のさせ方でどんな方向性にも変化できるという万能性が売りで、まさに「とりあえず迷ったらこれ!」という感じの種族ですね。

 他の種族に関しては概ねA~Eの範囲で各能力値に差があって、例えばエルフはSTRやVITが低くMPやINTが高いだとか、ドワーフはDEXやVITが高くAGIやTECが低いとかいった特徴があります。

 で、そんな数ある種族の中から私が選ぶのは――


「グラスランナー……これですね」


 ぽちっとその種族を選択すると、アバターの身長が一気に縮みました。

 ドワーフがずんぐりむっくりした体型なのに比べて、こっちは単純に子供みたいな見た目ですね。あとはエルフほどじゃないけどちょっと耳がとがっているのが特徴ですか。

 パラメータ的には、


 HP:F

 MP:C

 STR:E

 DEX:B

 VIT:E

 AGI:S

 TEC:A

 INT:D

 MND:B

 LUC:B


 といった感じ。

 STRやVITはエルフ並みの低さで、HPに至っては全種族最低レベル。その代わりにずば抜けたAGIを持ちTECも高いというテクニカルなタイプで、いわゆるシーフやレンジャー向けの種族ですね。

 個人的にはSTRやVITが高いパワータイプよりはこういうキャラの方が好みですし、何より見た目が小さくなるというのがとてもポイントが高い。

 カワイイは正義ですよ。たとえ性能が多少ピーキーだったとしても、見た目が可愛ければ何とかなります。

 はい。というわけで種族はグラスランナーに決定、っと。


『貴女がその身に宿す神秘(アルカナム)を選択してください』


 おっと、いきなり目の前に縦長のカードが出現しましたね。

 枚数は全部で22枚。絵柄は若干デフォルメされてますが、どうやらタロットカードみたいです。

 説明によると、ここで選んだ『神秘』によって能力値に補正がかかるらしく、つまり種族による能力値と神秘による補正を足したものが最終的なキャラクターのパラメーターになるとのこと。


「ふむ……」


 さて、それを踏まえて私はどの神秘を選ぶべきか。

 普通に考えれば弱点を補うか、長所を伸ばすかでしょう。私の場合だとHPやVITが上がるものを選んで少しでも死ににくくするか、AGIやTECが上がるものを選んでより高機動型にするかというのがセオリーですけど……貧弱紙装甲のグラスランナーだとHPやVITを多少上げたところで焼け石に水ですし、AGIやTECは素のステータスが高いのでそのままでも特に問題は無い気がしますね?


「となると、これですか」


 悩んだ結果、神秘は運に補正がかかる“ 運命の輪(WHEEL of FORTUNE)”にすることにしました。

 運はクリティカルやドロップ率に影響あるそうですからね。これさえあれば絶対!というほどのレベルではないでしょうけど、幸運が高くて困る事はないはずです。


『容姿を決定してください』


 次はキャラクターの外見の調整ですね。

 このゲーム、ハラスメントの関係か性別は変更できないものの、それ以外に関してはかなりの部分が自由に設定可能らしいです。

 今私の目の前に展開しているウインドウにある項目だけでも顔の造形や髪型、身長や筋肉の付き方、腕や足など各部分の太さ、肌や髪の色などといったものが20種類ほど。それだけでも充分な数があるというのに、その下にはさらに詳細な項目がいくつも用意してあります。


「これ、こだわる人はキャラクターメイキングだけで数時間はかけそうですね……」


 とはいえ、あまり色々やり過ぎても調整が難しい気がしますし、弄るにしても最小限にして……あ、おっぱい盛れる……いやいや、なんかそれをやったら負けな気が……でも少しくらいなら………………………………うん。これくらいなら許容範囲内ですね!


「さて、体格に関してはこれでいいとして、あとはファンタジーっぽく髪と瞳の色を変えておきましょうか」


 そういえばゲーム内で髪型を弄ることってできるんですかね?

試しに質問してみると、『髪型については縛ったり切ったりといったことは可能ですが、伸ばすことはできません』とのこと。

 なるほど。じゃあとりあえず長めにしておいて後で調整するのもありですね。

 肩……背中……腰……膝……地面……いや自由度高すぎでは?

 流石に限度があるので、腰くらいまでのストレートロングにしておきます。後はそれに合わせて前髪やもみあげの部分を弄って……と。うん。良い感じですね。


 次は髪色ですけど、せっかくですしこっち(ゲーム)では派手目にしましょう。

 まず基本色は赤。設定弄ったら部分的に色を変えたりグラデーションを付けたりもできるみたいなので、先端に行くほど明るくなるようにしておきましょうか。

 髪色に合わせて瞳の色も赤系にして……って、あれ?

 なんか思いつくままに弄ってたら炎髪灼眼とか二つ名が付きそうな見た目になっちゃいましたけど……大丈夫ですかねこれ? 版権に引っかかったりしない?


『問題ありません』


 あ、そうですか。

 天の声から許可が出たので、とりあえず外見に関してはこれでいくことにします。

 次はいよいよスキルの習得ですね。


『基本となる武器技能スキルと、初期スキルを5個まで選択して下さい』


 まずは武器技能。

 選択できる武器種は『短剣』『片手剣』『斧』『槍』『ナックル』『弓』『鈍器』『杖』といったメジャーなものから、『双剣』や『鞭』、『爪』なんてちょっとマイナーなものまで。色々ありますけどどの武器を選ぶべきか……。


「お勧めされてたのは弓と短剣でしたっけ」


 公式でグラスランナーが使う武器としてお勧めしてたのは弓と短剣の2つ。弓は遠距離攻撃でダメージがDEX依存、短剣は取り回しが良くダメージにAGIによる補正がかかるらしいので、確かにグラスランナーとの相性が良さそうです。

 というかSTRが低いグラスランナーは筋力=攻撃力みたいな武器とは相性が悪いですし、それ以外の選択肢が……いや、TECが高いから手数で戦う系の武器もアリですか。


「となると……双剣?」


 双剣はその名の通り2本1組になってる剣で、一撃の威力よりも左右の剣による素早い連続攻撃でダメージを稼ぐタイプの武器です。

 また、盾が装備できない代わりに専用の防御系スキルを習得可能とのこと。

 重量的にも両手を使うからかグラスランナーでも大丈夫っぽいですし……うん。武器は双剣でいきましょう。


 次は初期スキル。5つの内2つは「これは取っておいた方がいい」とお勧めされていたものを選ぶとして、残り3つ。うーん……。

 スキルの一覧を眺めながら悩み抜いた結果、初期スキルは以下の5つに決まりました。


〈鑑定〉

 アイテムの情報を見ることができるようになる。


〈識別〉

 モンスターの情報を見ることができるようになる。


〈直感〉

 危ないものに対する知覚が敏感になる。


〈看破〉

 隠れているものを見つけたり、弱点を見抜いたりすることができる。


〈足捌き〉

 足運びに補正が入る。


 〈鑑定〉と〈識別〉は公式でお勧めされたスキルですね。それぞれアイテムとモンスターの情報を見ることができるようになるスキルで、この2つはここで取っておかないと後々習得しようとした際の条件がちょっと面倒とのこと。


 〈直感〉は危険を察知するスキル。似たようなスキルに〈感知〉がありましたが、あっちはINT依存らしいのでこっちを選びました。

 ちなみに〈直感〉はLUC依存。『運命の輪』でLUCに補正がかかっている私とは相性が良いスキルです。


 〈看破〉は隠れているものを見つけたりできるスキル。不意打ちを防止したり、〈識別〉と組み合わせることでモンスターの弱点も見抜けるようになるのだとか。効果は視界内限定とはいえ、地味に便利なスキルだと思います。


 〈足捌き〉は説明だけだと微妙な感じですけど、詳しく聞いてみると回避行動や歩く・走るといった『足』に関わる動作全般に補正がかかるみたいなので取ってみました。

 種族的にグラスランナーは走り回ることが多くなりそうですからね。


 他にも気になるスキルはありましたが、今はこれだけ。ゲームが始まってから取れるように頑張りましょう。


『武器技能スキル〈双剣〉、初期スキル〈鑑定〉〈識別〉〈直感〉〈看破〉〈足捌き〉でよろしいですか?』


 最終確認にYesと答えると、本がペラっと捲れて白紙のページが表示され、その上に薄く光を放つ羽ペンが出現しました。


『最後にキャラクターの名前を書き込んでください』


 音声入力やキーボードで打ち込むんじゃなくて手書きでっていうのは珍しいですね。

 ともあれキャラクター名。当然リアルでの名前は使えません。


「アリス……っと」


 ちなみにこれ、私が他のゲームでもよく使っている名前です。本名をもじった名前で、女性主人公でゲームをする時は大体この名前なんですが……使えますかね?


『アリス……重複チェック中です…………重複有り。この名前は使用できません』


 残念。この名前はすでに誰かが登録済みのようです。

 となると別の名前を……うーん、どうしましょう?


「えーっと、ファンタジーっぽい名前を五十音順で表示してもらうことってできますか?」


 試しに問いかけてみると、目の前にウインドウ画面が開いてそれっぽいカタカナの名前がずらずらずらっと大量に表示されました。

 おぉ、言ってみるものですね。どうせなら普段使ってる名前に近い方がいいですし、よさげな名前は……っと。 

 アリーシア。いいですね。これでいきましょう。


『プレイヤーネーム“アリーシア”……登録完了。以上で初期設定は終了になります』


 目の前にあったウインドウが消えると、本がペラペラと捲れ始め――ぴたりと途中で止まりました。

 ……おや?


『キャラクターが人間以外の種族のため、種族スタートが選択可能です』


 ふむん?

 どうやら種族スタートとは人間以外の種族を選んでスタートした場合、一般的なスタート地点ではなく各種族の集落という別のマップからゲームを開始できる機能だとのこと。

 なお、種族スタートを選んだとしても、一定条件を満たしさえすれば一般的なスタート地点である始まりの街に移動できるようになるらしいです。

 だったらまぁ、選択肢は1つですよね。


「種族スタートでお願いします」


 当然種族スタートですよ。

 せっかくの特殊コンテンツ、やらない理由はありません。


『種族スタートが選択されました。【Eresia Online】へのログインを開始します』


 システムの声と同時に、止まっていた本のページが再び捲れ始めました。

 そこからページが外れ、紙吹雪のように回転しながら私の周りを取り囲みます。


『それではアリーシア様、貴女の旅路が幸多きものでありますことを』


 紙吹雪の中から響く声。

 無機質なはずのその声音の中にどこか子供を慈しむかのような響きを感じた瞬間、目の前が光に包まれました。

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