1-17 vs マーダーラビット①
「さて、そろそろですね」
Gラビットを倒した後、ボスエリアを出てフィールドでラビットを狩り続けていると、だんだんと辺りが暗くなってきました。
『お、確かに暗くなってきた』
『何匹くらい倒したんだっけ? 50越えた?』
『最後の方は雑談しながら淡々とウサギ狩ってたからな』
まぁ、草原を駆け回って片っ端からラビットを狩ってましたからね。
討伐数を数えるのは途中で止めちゃいましたけど、多分50匹は軽く狩ったんじゃないかと思います。
普通だったら横取りやらなんやらと言われる迷惑な行為ですが、このフィールドには私以外のプレイヤーがいませんからね。いやー、過疎最高。
『過疎最高とか言うなし』
『ギルド長泣いちゃう』
おっと口に出てましたか。
でも実際、他のプレイヤーがいたらこんな無茶な乱獲は無理でしたから、早く討伐数を稼ぐことはできなかったでしょう。
そんなことを考えながらボスエリアの前までやってくると、2本の尖岩の間にあるゲートの色が少しずつ青から赤へと変わっていくのが見えます。
『おー、色が変わってきてる』
『やっぱり夜ってのが条件の1つだったんだな』
完全に色が赤く染まったのを確認して、ゲートを越えてボスエリアへ。
Gラビットの時と同様にムービーは無く、月明かりに照らされた草原には大振りの包丁を携えた首刈り兎の姿。
深紅の瞳がこちらを捉えるのと同時、月が雲に隠れて暗闇の中に見えていたHPゲージが消滅し――
「――――《ステップ》!!」
頭で考えるよりも先に咄嗟にスキルを発動。
その効果で僅かに身体が移動した瞬間、今まで私の首があった場所を銀線が通り過ぎていくのが見えました。
『躱した!』
『やった!』
『アリーシアちゃんスゲー!』
「さぁ、ここからが本番ですよ……!」
双剣を持つ手に力を込めつつ、一気にマーダーラビットとの距離を詰めます。
「せいっ!」
牽制のために放った1撃はマーダーラビットの振るった包丁で弾かれてしまいましたが、それでも足を止めることには成功。
「予想通り、ランタンの効果範囲だと《影渡り》は使えないみたいですね」
《影渡り》を使うにはそれなりの大きさの影が必要、そしてランタンの効果はランタン本体を中心にして一定範囲内を明るくするというもの。
つまりランタンの効果範囲内で接近戦をし続ける限り、回避の難しい不意打ちをされることは無いということになります。
狩りの途中でランタン買いに走った甲斐がありました。
『 ( -`ω-)✧ドヤッ』
『うーんいいドヤ顔w』
『まぁでもドヤ顔したくなる気持ちも分かる』
ちなみにこのことを考えたのは私ではなくリスナーさんの1人です。
ラビットを狩ってる最中の雑談で《影渡り》対策の話になって、そこで出た中で1番現実的で実行できそうなのがこれだったんですよね。
というか他に出たのが『目を瞑って心眼で回避する』とか『殺気を読んで反応する』とかでしたし。
いや心眼とか殺気とかスキルも無いのに無理ですからね? 我普通のJDぞ?
「《ウエポンパリィ》! そぉい!」
弾き飛ばし効果がありそうな大振りの1撃をアーツで受け流して、反撃。
戦闘開始から何度かこんな感じで攻撃を当てているものの、双剣から伝わってくる感触はGラビットより固く、与えたダメージもごく僅か。
流石シークレットボスというか、ノーマルボスのGラビットよりかなり強めに設定されてるみたいです。
「せめて弱点でもあればいいんですけどね……っと!」
パリィ、攻撃、回避、パリィ、回避、回避、攻撃、パリィ。
まともに食らえば1発で致命傷になりかねないので、焦らず丁寧に、あくまでも回避と受け流しを中心にしてちょこちょことHPを削っていきます。
『うーんこれは時間かかりそうな感じ』
『ミリ単位でしか削れてないからな』
状況的に連撃もアーツも使えないせいでダメージが出せませんからね。
一応攻撃を当てる場所を変えたりもしてますが、普通に狙える場所だとどこも防御力は同じくらいみたいですし。
『てかなんで誰もこの攻撃をノーダメで捌いてることに突っ込まないの……?』
『だってアリーシアちゃんだし』
朝になると強制的に戦闘が終了してしまう可能性がある以上、なんとかそれまでに決着を付けたいところですけど……そこまで集中力が持つかどうか。
これが現実世界ならエナドリをキメて集中力を回復させるところですけど、流石にゲーム内にはエナジードリンクなんて無いでしょうし。
ああ、でも〈調合〉スキルでポーションが作れるそうですし、味付けを工夫してカフェインと似た効果の材料を…………おわぁ危ない!?
マーダーラビットの包丁が掠ってHPが2割ほど削れました。
『おわぁ危ねぇ!』
『集中集中!』
『紙装甲なのに油断すんなよ!』
リスナーさんからの総ツッコミを受けつつ集中力を再動員させ、マーダーラビットと対峙します。
……相手のHPはあと7割ちょっと。まだまだ先は長いですが、気を引き締めて頑張りましょう!




