1-14 未知との遭遇
「というわけで買い取りをお願いします」
そう言って私が買い取りリストを出すと、それを見たおばあさんが呆れたような目をこちらを向けてきました。
「……また随分と集めてきたもんだね。草原のラビットを絶滅させる気かい」
「あははは……」
まぁあれから日中ひたすらにウサギを狩り続けましたからね。
現状私以外のプレイヤーがいないので遠慮無く乱獲させてもらいました。
「はぁ……。で、取り置きしといたのを買いに来たんだろう?」
「はい。ついでに他の装備も」
アイテムを売って懐が潤ったので、早速目を付けていた装備を購入。
これで私の装備は以下のようになりました。
■装備
右手:初心者の双剣
左手:初心者の双剣
頭:レザーハット
上半身:初心者の服(上)
下半身:初心者の服(下)
腕:レザーグローブ
足:初心者の靴
アクセサリ:解体ナイフ、深淵に染まりし漆黒の聖骸布
まずはレザー製の帽子とグローブ。
この2つは装備無しだった部分を埋めた感じですね。無いよりはマシ。
そして取り置きしてもらってた深淵に染まりし漆黒の聖骸布ですが――
『……うわぁ』
『これは……』
『ビジュアルが凄いw』
コメントが引いてますけど、さもありなん。
この深淵に染まりし(略)、いったいどこにどんな感じで装備するんだろうと思ってメニューから装備してみたら、右手の指先から二の腕辺りまで真っ黒い包帯でグルグル巻きの状態になりました。
前のコメントで『封印されし右手が~』とかいうのがありましたけど、正にそんな感じ。
しかも腕にはレザーグローブを装備してるのに、右手だけは深淵に(略)が優先されるのかグラフィックが表示されていません。
つまりこの厨二病感溢れる深(略)は他の装備で隠すことができない……っ!!
『ま、まぁ、似合ってる……よ?』
『好きな人はめっちゃ好きそう』
『是非とも「俺の右手が疼く」ってやってほしい』
「鎮まれ……私の中に昏睡る《悪魔の右手(ディアボロス)》……っ! 」
『wwwwww』
『wwwwww』
『なんだよディアボロスって。笑』
『foooo! アリーシアちゃんカッケ――――っ!!』
『ノリノリで草』
喜んでもらえたようで何より。
「さて、無事に買い物も終えたことですし、いよいよGラビットにリベンジしに向かうとしましょうか」
集落を出て、ボスエリアに向けてダッシュ。
夜の草原を一直線に駆け抜け、再び私はボスゲートの前へとやってきました。
「――はい! ということでやってきましたリベンジマッチ!」
『早い』
『そういやアリーシアちゃん、明かりは?』
「ランタンはGラビットに潰された時に壊れちゃったんですよね」
アイテムの説明にも『強い衝撃を受けた場合に壊れてしまう可能性がある』って書いてましたし、流石にあの攻撃には耐えきれなかったみたいです。
買い直そうにも微妙に予算が足りなかったので今回は見送っています。
「まぁ明かりが無くても多分大丈夫でしょう」
ちなみにレベリングを終えた私の装備品以外のステータスはこんな感じになってます。
■名前:アリーシア
■種族:グラスランナー
■Lv:7
■クラス:ノービス
■スキル
〈双剣〉Lv10
〈鑑定〉Lv5
〈識別〉Lv4
〈直感〉Lv6
〈看破〉Lv4
〈足捌き〉Lv6
〈敏捷強化〉Lv2
〈技術強化〉Lv2
〈採取〉Lv5
〈受け流し〉Lv3
■アーツ
《ツインスラッシュ》
《スパイラルエッジ》
《ステップ》
《ウエポンパリィ》
■称号
【冒険者見習い】
新しく覚えたスキルは〈敏捷強化〉と〈技術強化〉。最初から解放されているステータス強化系のパッシブスキルで、〈敏捷強化〉は逃げるウサギを追いかけて倒すため、〈技術強化〉は双剣の回転率を上げるために覚えました。
アーツは〈双剣〉Lv10で《スパイラルエッジ》を習得。
左右の双剣を抉り込むように突き刺すアーツで、多少隙はあるものの威力の高いアーツです。
基本レベルと他のスキルレベルも全体的に上がってますし、まぁよっぽど油断したりしない限りは負けたりしないでしょう。
「ログアウトの時間も迫ってますし、勝ってスッキリ終わりたいですね」
携帯食料をポーションで流し込んでHPも満腹度も満タン。気合い十分で2本の岩を繋ぐ赤い線を踏み越えます。
……あれ? このゲートってこんな色でしたっけ?
▶シークレットクエスト『復讐の兎』が発生しました
はい? シークレットクエスト?
謎のインフォメーションが流れ、身体の制御がシステムに奪われます。
このゲームって1回見たボスイベントってスキップできな――?
――――――――――
ゲートを越えた先のボスエリアは見渡す限りの大草原で、地平線を望むことも出来、空には明るく輝く月と数多の星々が浮かんでいる。
見上げていた視線を降ろすと、いつの間にかそこには小さな影が立っていた。
右手に大きな包丁を握ったソレは、血のような赤い瞳をこちらに向けた。
――――――――――
ムービーが終わり、身体の自由が戻ってきました。
「やっぱりGラビットとは別のモンスターですね……」
月下の草原に佇むのは2足歩行のウサギ。
見た目はシルバ○アファミリーに出てきそうな外見ですが、その手にはほのぼのした世界観に似付かわしくない鋭い刃が握られています。
〈識別〉の効果でモンスターの頭上にHPを表すバーが表示された瞬間、月に雲がかかったのか周囲に影が落ちて――
ざんっ、という軽い衝撃。
………………はっ!?
気がつくと、私は赤い光の輪を出しながら冒険者ギルド前の広場に立っていました。
▶アリーシアは死亡したため、所持金が半減します
▶死亡ペナルティーで一定時間ステータスが半減します
「――――えっ?」
『え?』
『いや、ちょっと、え?』
『まさか死んだ? 何があったの??』
『ボスの攻撃?』
『いやいや初見殺しにも程がありません?』
『てゆーかあの草原のボスってGラビットじゃなかったん?』
コメント欄が絶賛混乱中ですが、正直私も混乱してます。
いやだってボスエリアに入ったと思ったらイベントムービーが始まって、Gラビットじゃないモンスターが現れたと思ったら急に姿が消えて…………死んだ?
負けイベント? でも何の情報も無くいきなり死ぬイベントとかある?
…………駄目ですね。考えがまとまりません。
とりあえず宿屋に行って不貞寝しましょう。
モルダー、私疲れてるのよ……。




