1-10 フィールドボス①
ボスエリアに入った瞬間、身体の制御が利かなくなりました。
……これは、ムービー?
ゲームにはよくある、ストーリーなどに重要なモノが出現した場合に流れたりする、ゲーム内では出来ない挙動ばかりをするあれです。
どうせ身体は動きませんし、大人しく流れに任せましょう。
――――――――――
中天に浮かぶ満月。
すっと視点が下がればそこにはどこまでも広がる草原。
その緑を割るように凄まじい勢いで何かが走ってくる。
白いそれは草原の中央に立つこちらの姿を見定めると横を通り過ぎた所で急停止、反転。白く長い耳と丸い尻尾をピコピコと揺らし、こちらを威嚇するように唸りながら睨みつけてきた。
――――――――――
ムービーが終わり身体の制御が戻ってくると、眼前のウサギの頭上にGラビットという名前とHPを表すバーが表示されました。
『ウサギでっかw』
『GはジャイアントのG?』
『このサイズだともうイノシシと変わらんな』
確かに。
草原にいるラビットも普通のウサギに比べればかなり大きなサイズでしたが、今目の前にいるGラビットはそれを遙かに凌ぐサイズ。体重で言えば私の2倍以上あるんじゃないでしょうか。
サイズだけ見れば冗談抜きにイノシシやクマと変わらないレベルですね。
そうやって眺めていると、Gラビットが動き出しました。
ぴょんぴょんと――ではなくどっすんどっすんと跳ねながらこちらに向かってきます。
「これ、潰されたら1撃で死にそうですねぇ……」
とはいえ真っ直ぐ突っ込んでくるだけなので回避するのはそう難しくなさそうですけど。
それでも念のためにまずは大きく距離を取って回避。
体当たりを躱されたGラビットはしばらくそのまま跳ねていった後、くるりと方向転換をして再びどっすんどっすんと突っ込んできました。
うーん、動きを観察した感じどうやら単純な体当たり攻撃みたいですし、もうちょっとだけ様子を見たらこっちも攻撃してみましょうか。
というわけで3回目の体当たり攻撃で間合いを確認し、再び突っ込んできたGラビットを最低限の動きで回避しつつ――そぉい!
すれ違いざまに無防備な側面に刃を突き刺すと、筋力不足が原因なのか少々剣ごと持ってかれそうになりつつも、ちゃんとダメージエフェクトの赤いポリゴンが飛び散りました。
『おっ、1撃入れた』
『闘牛士みたい』
『相手がウサギだから闘兎士だな』
『なんて読むんだよwww』
そんな感じでちょこちょことダメージを重ねていると、2割ほどHPバーが減ったところで急にGラビットが動きを止めました。
おそらくボスによくあるHP減少による行動パターンの変化ですね。
警戒しつつ離れた場所から眺めていると、動きを止めたGラビットがぐっと全身に力を漲らせて……ってえええええええっ!?
『跳んだぁぁぁぁぁぁっ!』
『飛んだぁぁぁぁぁぁっ!?』
『あいきゃんふらーい!!!』
『Yeahhhhhhhh!』
大盛り上がりのコメント欄を余所に天高く飛び上がったGラビットは、そのまま放物線を描いてこちらの方へと――
「退避退避――――っ!!!」
どーん、という音を立ててGラビットが着地。
……あっぶなー。衝撃波みたいなエフェクトが広がったところを見るに、落下地点の周囲にもダメージ判定がある感じですね。
ただ着地後しばらくは動きが止まるようなので、おそらくそこを狙って攻撃しろということなのでしょう。
「背中に張り付いて滅多刺しにしたらダメージ稼げそうですね」
『やめれ』
『振り落とされて死ぬ未来しか見えない』
『発想が狂戦士なんだよなぁ』
『もっと紙装甲なの自覚してww』
いやいやいけますって。
何故か消極的なリスナーのコメント(?)を受けつつ、私は再び飛び上がり落下してきたGラビットに向かってダッシュ。地面に広がった衝撃波をジャンプで飛び越えそのままの勢いで白い背中に着地し、無防備なそこに向かって――連撃、連撃、連撃、連撃ぃ!
「《ツインスラッシュ》!」
最後にアーツを叩き込んだ後、とんっ、と背中を蹴って離脱。
くるりと宙返りすることで体勢を整えつつ、安全圏に着地しました。
「うん。やっぱり結構いい感じにダメージが稼げましたね」
『……はい?』
『(゜д゜)ポカーン』
『めっちゃあっさり実行してて草』
「? ゲームなんだからそんな難しいことじゃないでしょう?」
ステータスやスキルの補正がありますからね。流石に私だってリアルでこんなアクションはできませんよ。
『そんなもんなん?』
『まぁある程度育てたキャラなら人外じみたアクションもできると思うけど』
『ゲーム開始したばっかのキャラでできるかっつーと……微妙?』
さーて、この感じならあと2~3回も同じことをやれば次の行動変化まで持って行けそうですね。
バンバン削っていきますよー!




