1-9 夜のフィールド
というわけで夜のフィールドにやってきました。
すでに時刻は完全に夜になっており、中天にある月と腰に下げたランタンの明かりだけが周囲を照らしています。
腰に付けているのに周囲全体が明るくなってることに関しては……まぁいわゆるゲーム的な処理ってやつですね。何でもかんでもリアルに寄せ過ぎても面白くないですし。
「でも思ってたよりは暗くないですね」
『せやな』
『もっと真っ暗になると思ってたんだけど、薄暗闇くらい?』
『これならランタンいらなかったんじゃね?』
コメントにある通り、周囲のフィールドはランタンの効果範囲外であっても月明かりのおかげである程度の視界は確保されているみたいです。
とはいえそれはあくまでも最低限。安全に探索をするつもりなら、ちゃんと自前の明かりを用意するのが正解でしょう。ええきっと。決して所持金の半分近くを突っ込んだランタンが無駄だったなったなんて思いたくないわけじゃありません。
「……うん? あれは?」
ランタンの明かりが届いていない辺りを眺めていると、なんか地面の一部がうっすら光ってるのを発見。
近づいて確認してみると、どうやら地面じゃなくて生えてる草が光ってるみたいです。
[素材]月光草
魔力を含んだ野草。昼間は他の草に紛れて見つけづらいが、夜になるとうっすら光を放つため発見が容易になる。
昼間に無いなと思っていたら、夜にしか見つからない素材もあるんですね。
まぁこれに関しては発見しづらいだけで、〈採取〉のレベルが上がったら昼でも見つかるようになるのかもしれませんけど。
ともあれ、これも採取依頼が出てる品なので見つけ次第回収していくことにしましょう。
「っと」
地面にしゃがんでプチプチやってると、〈直感〉が反応。
その反応があった先に視線を向けると、薄闇の向こうから何かがこちらへと飛んできているのが見えました。
じっと目を凝らすと〈識別〉の効果で名前が表示されて……?
「……『???』?」
今まではちゃんとモンスター名が表示されたのに、何故か今回はモンスター名が『???』としか表示されていません。
『鑑定失敗した?』
『シルエット的に多分コウモリだと思うんだけど……』
『あ、表記が『???』から『バット』に変わった』
コメントに反応して――ではなく、おそらくランタンの効果範囲に入ったことで〈識別〉がちゃんと働くようになったのでしょう。モンスターの名前が『???』から『バット』に変化しました。
コウモリ――夜に出現する定番のモンスターで、ゲームによっては毒や吸血や超音波といった攻撃をしてくるやつですね。
とりあえず正体が判明しましたし、まずは先手必勝!
一気に近づいて右の刃を一閃。ヒット!
「そいっ、そいっ、そいっ! 《ツインスラッシュ》!」
そのまま怯みを切らさないように左右の連撃を入れ、最後にアーツによる1撃(正確には2撃ですけど)を決めるとHPの尽きたバットが地面に落ちました。
「ふぅ。HP的にはハチ以上ミミズ未満、ウサギよりちょっと低いくらいといったところですか」
『瞬殺www』
『てか双剣強すぎひん?』
『それな』
『1発入れたらあとはノーダメで勝てるとかチート臭』
それは私もそう思う。
攻撃力最弱種族の私がこうして戦っていられるのは双剣のおかげというのが大きいですし。
「まぁ、それも今の内だけでしょうけど」
最初のフィールドだからあっさり怯みも入ってくれますけど、敵が強くなってくればこの戦法も使えなくなるでしょう。今後の課題ですね。
さて、それはそうとして戦闘終了したので解体の時間。
通常だと倒したモンスターはすぐに消滅してしまいますが、解体ナイフを装備していると死体が一定時間残るようになり、そこにナイフを突き刺すことでドロップ品を追加で入手できるという仕様になっています。
「ドロップはコウモリの皮膜とバットの魔石……?」
ドロップ品の名前が何故かコウモリとバットなのはともかくとして。
こっちの魔石はレアドロップっぽいですね? 何に使うのかは分かりませんけど。
後でギルド長に確認しておきましょう。
その後もプチプチと月光草を採取しつつ、たまに飛んでくるコウモリを撃墜したり、草むらで寝ているウサギを襲撃したりしながら草原を奥へと進むことしばし。
「…………ん?」
何やら向こうに月光草とは違う謎の明かりが見えるような?
確認のために行ってみると、そこにあったのは地面から天に向かって伸びる2本の赤い岩の柱と、その2本の岩を繋ぐよう地面を走る青い光の線。
『なんぞこれ??』
『あれじゃね? いわゆるボスゲートってやつ』
『あー、確かにフィールドボスとかいそうだしな』
「なるほど。確かにそれっぽい感じですね」
位置的に草原の最奥みたいですし。
柱を繋ぐ青いラインが通常フィールドとボスエリアの境界なのだとすると、ここを越えた先に草原のボス的モンスターが待ち構えていることになります。
「ふむ……」
このゲームにおけるデスペナルティーは一定時間のステータス減少と所持金を半分失う、でしたっけ。
うん。現金はおばあさんのお店でほぼ使い切りましたし、ステータス低下についてもこれが終わったらログアウトする予定なので問題ありませんね。
というわけでちょっと挑戦してみましょうか。
『おっ、挑む? 挑んじゃう?』
『初めてのボス戦に躊躇無く挑むアリーシアちゃん。そこに痺れる憧れるゥ!』
『頑張れ~』
『ちゃんと屍は俺たちが拾ってやるからな!』
そんな応援してるのか煽ってるのか分からないコメントを受けつつ、私はゲートを越えてボスエリアへと足を踏み入れたのでした。




