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わたくし悪役令嬢ですから  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【本編】

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5

(ヒロインの攻略対象であるフィレオとスローから悪役令嬢の悪事を暴露されるなんて!)


 全くの想定外。さすがに驚きを隠せずにいたら、「それならばもっとすごい現場を目撃した!」と声を上げる者がいる。声を聞いただけで、それが誰であるか分かってしまう。その声の主は、とにかく金持ちのモテ男、公爵家の嫡男のマック・エグバート・マーフィン!


(マック、あなたまで……!)


 わたくしはシナリオに従い、ヒロインであるマクドナルト嬢には嫌がらせをした。しかし攻略対象には何もしていない。


(なぜ揃いも揃って攻略対象の令息一同は、みんなでわたくしの罪を問うの……! そもそもの乙女ゲームでもこんな展開はあり得ないのに!)


 そういくら心の中で嘆いても、何も変わらない。マックは滔々と語り出す。


「学園には専属のパティシエがいる。放課後、図書館で勉強する生徒たちは、休憩でカフェテリアを訪れ、一息つく。アメリカーナ公爵令嬢も取り巻きの令嬢たちとよくそのカフェに足を運んでいたが……。マクドナルト嬢が一人で休憩していた。それを見つけたアメリカーナ公爵令嬢は、マクドナルト嬢がスイーツを食べようとするのを、邪魔したんだ!」


 マックの言葉に「邪魔をした!?」と生徒も教師も同時に何の話だとばかりに声を上げる。その様子を満足そうに見渡し、マックは口を開く。


「マクドナルト嬢は貴族ではない。彼女にとってカフェテリアの専属パティシエが作るスイーツはご馳走みたいなもの。マクドナルト嬢がそのスイーツを大切に食べようとしたその瞬間、彼女の手をアメリカーナ公爵令嬢ははたいたんだ!」


 これには生徒、教師を問わず複数の人たちから「酷い!」の声が起きる。マックは皆の反応に共感するように頷き、続きを語る。


「なけなしのお小遣いを貯め、食べることにしたパティシエのスイーツ。マクドナルト嬢は、どれだけ楽しみにしていたか。手を叩かれ、スイーツは床に転げ落ち、食べることは出来なかった。なんて可哀想なマクドナルト嬢! わたしは密かにこの様子を目撃していたので、こっそりマクドナルト嬢が食べ損ねたスイーツを購入して、匿名で屋敷に届けさせたんだ!」


 さりげなく自分の善行を語るマックに、令嬢たちは「まぁ、さすがマーフィン様!」と称賛の声を挙げる。一方の令息たちは、マックのこれみよがしの態度アピールには辟易している様子だが、スイーツが無惨にも床に落ちたことについては「マクドナルト嬢が可哀想だ」と同情を寄せる。


 一方のわたくしは、心の防御がだだ崩れになりそうになっていた。


(あり得ないですわ! 攻略対象三人から一度に罪をぶちまけられるなんて!)


 推しに断罪されたくないとは思っていた。だからと言って三人の攻略対象から、こうネチネチと嫌がらせを指摘され、じわじわと化けの皮を剥がされるのは……。


(きついですわ! 何よりこれは想定していないこと。SAN値にぐいぐいダメージが来ている。どうしてこんなことに……)


 そこに追い打ちをかける一言を、スローが口にする。


「オリオン王太子殿下! あなたの婚約者は、平民の令嬢を貶めるような最低な令嬢です。王家と公爵家、その婚約は何か有責となる事由がないと覆すことは出来ない。でもその有責は今、明らかになった通り。足りないようであれば、まだまだ語ることができます! 公爵令嬢の悪事を!」


 これを聞いた生徒と教師たちは「まだあるのか?」「そんなにマクドナルト嬢のことをいじめるなんて、むごすぎる」「なんてことだ」と、驚愕、非難、嘆きの声が続々と上がる。しかもこの言葉を受け、さらにマックはこんなことを言い出す。


「マクドナルト嬢はオリオン王太子殿下、あなたのことをお慕いしているのです。だから卑劣な殿下の婚約者から嫌がらせを受けているのに、本人はずっと黙っていました。そんな健気な彼女のこと、殿下はどう思われているのですか?」


 そこでマックがステージ近くにいたヒロインであるマクドナルト嬢の方を振り返る。わたくしのいる場所からではスローやフィレオもいるので、彼女の顔は見えないが……。


 通常の乙女ゲームとは少し異なる展開であるものの、悪役令嬢であるわたくしはバッチリ罪を問われている。ヒロインとしてはこれでわたくしが婚約破棄になり、オリオン王太子とゴールインできるとご満悦なことだろう。


 ヒロインが声をあげることはないが、マックが話を続ける。


「殿下は度々、マクドナルト嬢と密会を重ねられていましたよね? アメリカーナ公爵令嬢より、マクドナルト嬢に殿下も興味を持たれているのではないですか? 何より心優しいマクドナルト嬢こそ、未来の王太子妃に相応しいのでは?」


 駄目押しのようにフィレオが付け加える。


「そしてアメリカーナ公爵令嬢は王太子妃に最も相応しくないご令嬢なのでは? 俺もまだまだ公爵令嬢の悪事を語れますよ、オリオン王太子殿下!」


 その言葉を聞いたオリオン王太子は口元に冷笑を浮かべる。そしてゆったりと口を開く。


「面白い。実に面白い話だね」


 これを聞いたわたくしは覚悟した。

 既にヒロインの攻略対象である令息三人に、ハートをズタボロにされている。その上で、とどめのごとくでこれからオリオン王太子による断罪として、婚約破棄が突きつけられるのだ。


(わたくしのSAN値へのダメージは計り知れないが、シナリオの進行としてはちゃんと進んでいるということ。悪事は無事、暴露された。後は断罪からの婚約破棄があるのみ……)


 今から、最大級の災厄がこの身に降り注ぐ。

 幸せの絶頂からの転落。

 推しでもあるオリオン王太子から、婚約破棄を突き付けられる――。


(もう、堕ちるところまで、堕ちるしかないわ)


 深呼吸をして、わたくしは目を閉じた。


お読みいただきありがとうございます!

ついに婚約破棄……((((;゜Д゜))))

次話はブックマーク登録でお見逃しなく~=3

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