プロローグ
私ことサンディアナ王国第一王女のメルト・ウルリア・サンディアナは最近ストレスがたまっていた。
世界の最果てに位置する魔国の魔王軍が、隣国である我が国に侵略を始めたのは3年ほど前のこと。
父のカルバルト国王を始め、兄のサリアルベ王子などは戦闘の最前線で指揮を執っている。
その間、亡くなったお母様の代わりとして国の政治や外交などを私一人で取り仕切ってきた。
最初の頃は前線で戦っている人達の分まで自分が頑張るんだとストレスを感じる間もなく働き続けていた。
ただ、3年の月日が経ち戦争が膠着状態になってくると、忙しさも減ってくると同時に今まで感じてこなかったストレスを感じるようになっていた。
「どうやってこのストレスを解消しようかしら..」
ある日の午後。城の最上階に位置する自室で、紅茶を飲みながらぼんやりとそんなことを考えていた。
初めは気持ちで押さえてきていたが、最近は睡眠不足などの生活に支障をきたしていたため、早急に解決しないといけない課題となっていた。
そんなとき、ふと外を見てみると遠く西の国から伝わったとされる『砲丸投げ』というものをやっている訓練中の兵士を、城の自室から見える魔王城のある方向に見つけた。
「あれは、最近人気の砲丸投げというものですか」
聞くところによるとストレス解消にかなり効果があるらしい。
「物は試し、一度やってみましょうか」
そう思った私は砲丸投げのできる訓練場に行ってみることにした。
訓練場につくと私が見ていた訓練中の兵士がこちらにやって来た。
「ウルリア様、いかがなさいましたか?」
「最近、国の政治やら周辺国家への外交やらでストレスが多くてね…」
普段ならこの国を率いるものとして、そんなことを言ってはいけないがストレスのせいか、そんなことを言っていた。
「だからあなたのやっていた『砲丸投げ』というものを私にもやらせてほしいの」
「失礼ですが、最近持った物の中で一番重たかったものは…?」
最近持った物と聞かれて真っ先に思いついたのは幼いころから習っていたレイピアだった。
「うーん、最近だとレイピアかもしれないわ」
「レイピアですか…でしたらこの重さの砲丸なんてどうでしょう」
そういうとその兵士は少し小さめの砲丸を差し出した。
持ってみるといつも使っているレイピアよりも少し重たいくらいだった。
「そしたらこれを両手で持ってある程度回ってから手を放して投げてみてください」
私はその兵士に言われたように持ってから投げるサークルの中に入った。
1周…2周…と回って、10週ほど回ったとき私は、すべての元凶である魔王軍の本殿『魔王城』目掛けて砲丸から手を離した。
ブオン
という音を立てながら砲丸は遠くへと飛んで行った。
その瞬間、私に溜まっていたストレスが一気に飛んで行ったような気がした。
そして飛んでいった砲丸は───
私の見ている方、魔王城に着弾した