第2章第20話 決戦当日②
ガキィン、ザン!
「ぐあっ!」
「護衛を抜けた!べオ、先に行け!」
フジの黒雷が、ハンニバル護衛軍を纏めて吹き飛ばし、大きな穴が開く。
そこをべオは杖を片手に突き進む。
もはや混沌としたこの場所で援護射撃は意味をなさない。
求められているのは射手ではなく魔弾。死をいとわぬどす黒い殺意。
「…来たか」
ハンニバルは大剣を抜き放ち、べオを迎えた。
黄金の結界が足元に広がり周囲の風景が閉ざされる。
「…決闘魔法陣!」
べオが足を止めた一瞬、首元に大剣が振り下ろされる。
右耳に熱いものを感じた瞬間、べオは全身を大きく回し地面に転がった。
続けて何度も振り下ろされる大剣を避けて避けて避ける。キリがない。一旦距離を置こうとべオは後ろに跳んだ。
「つまらんな。その程度の力で我を殺せるとでも思ったのか?」
「はい、あなたなら僕一人で十分だと!」
「…ふっ、ならば証明してみろ!言葉ではらちが明かんからな!」
ーーー集中しろ。僕の中に巡る魔力、あの日オルトロスが残した魔力を、纏う。
黒い霧がべオの周囲に現れ、彼にまとわりついていく。
「…小僧、貴様は何者なのだ!?」
・・・決まっている。僕は、インディゴ師匠の一番弟子、べオだ!
◇
「カイニ攻防戦も黎明を超えました。
はてさて、この世界はどの方向へと転がって往くのでしょうかな?それはこの盤上遊戯の様に容易いものなのでしょうか。ほら、こうやって持ち上げて動かすだけで…王手。私の勝ちです。」
カイニ玉座。
無人の大聖堂には奇妙に嘲笑を含んだ声だけが反響する。彼が話しながらに、パチパチと駒を置いては楽しむ様子も耳越しにわかる。
奇妙なメイクを施した白髪の男の前には、玉座がただ佇むばかり。
誰もいない。ーーー否、それらは常にそこにいた。
声にならぬ声がただ風となって男の髪を揺らした。
歴代のカイニ王たちの怨念は、塵の吹き溜まりとしてでしか意味を成しておらず、ただただじっとりとした視線のみが語りかけてくる。
悲しみが、無念が、怒りが、やるせなさは、誰にも届くことは無い。
愉快そうに声低く笑う。男はただただその嘆きを楽しんでいる。
男の一人遊びのつまみとしてしか、存在意義が存在しない。
パチンッ!
「…あーあ、また消えちゃった。そんなに僕の邪魔をして楽しいんですかぁ?」
「…さすがに目に余った。ペルセウス様から頂戴した使命に手を付ける様子もなく、残留思念を弄ぶだけのことに時間を弄するとは。見損なったぞ、友情のシャルエル」
「いつものことでしょう?それを言うならあなたは厳しすぎるんだ。ユーモア無くして世界は成り立たない、働きと休息は常にトントンがちょうどいいのよ?ねえ、規制のラヴォティエル」




