第2章第19話 決行日①
決行日。
ハンニバルの軍は僕たち解放軍の拠点の洞窟から山4つほど離れた場所に陣取っている。
「まず、各地の隠れ家から編成した1万の軍をハンニバル軍に向けて動かす。
軍対軍の距離まで近づき相手が軍を動かさなければならないように嵌める。
だがこれは囮。
本命は我ら精鋭20名。魔力反応で気付かれないぎりぎりまでドラウの転移で運び、ハンニバルと側近6人を電撃石火の暗殺を決行する。これが作戦だ。質問はあるか?」
「ハンニバルの周辺には何名陣取っているのですか?」
「計400名が周辺警護をしている。だが大したことは無い。他には?」
「倒した後どうやって帰るのです?」
「そこで吾輩の出番だ。吾輩の影魔法は目視した距離までなら近づかずとも影に落とせる。これで諸君らを本拠点の洞窟まで一気に運ぶ」
「…よし、良いな?では速やかに出立だ。」
◇
どろろろろろろろろ
軍の行進音が遠くから聞こえてきた。
ごくっ 無意識に生唾を飲み込む。
「緊張しているのか?命の取り合いにはまだ慣れていないようだな」
「…はい、戦は前にもありましたけど、こういう状況は初めてで」
「そうだな、私からコツを教えてやろう。こういう時はシンプルに考えろ。そうしたら何もかもうまくいく」
…僕は、師匠とまた旅をしたい。
そのためなら、何だってやってやる。
◇
軍奥深く。
ドワーフにしては長身の、傷だらけの男が地図を前に立っていた。
「ハンニバル様、軍を移動させる準備が整いました」
「うむ、まもなくあのお方と僧正様との会談がはじまる。
我らの役目は一切の露を拂い切る事である、全軍を前進させよ!」
「全軍前進!カイニに居座るダニ共の一切合切を燃やし尽くせ!」
軍の咆哮を尻目にハンニバルはいつもの癖で髭を撫でつけた。
どこか心が落ち着かないときは常にこうしていた。あの日だってそうだった。
自軍が反乱軍に向けて突撃を始めた。
だが反乱軍はまともに相手せず、攻撃をうまくかわしては横を突きそうな動きを見せ、
ハンニバル軍を一歩下がらせるだけに留めている。
…やけに消極的だ。
部下は相手が委縮しきっていると思い込んで笑っているが、黒雷はそんなたまではないだろう。
…まて、そもそも黒雷は本当にあそこにいるのか?
あれが率いているのなら、今頃は血で血を洗う血戦になっているはず。
「…プルリオ、騎馬50で周辺を警戒せよ」
「はっ」
取り敢えずはもう少し見守り、
相手を完全に見切ってからじっくりとすり潰すとするか。
「…ハンニバル様、プルリオから馬の足跡を発見したとの報告が上がっています。
方角は南西、距離が離れていおりますゆえ、今すぐなにかはありそうには見えませーーー
どちゅっ
部下の一人の顔が眼前で弾けた。
「…チッ、魔法は失敗した!突撃だ!」
ーーー黒雷!
なるほど、最初から我を暗殺することを狙っていたな。
「上等…全員、我らが御方に綽なす逆敵はそこにいるぞ!討てぇ!」




