第2章第16話 言いたい事だけ言いやがって①
ーーーここはどこだ?
光無き暗闇の中、意識だけが揺ら揺らと漂っているのが分かる。
過去一度も感じたことの無い感覚だ。
指先を動かしても、答えが返ってくることは無かった。
温かさと冷たさの渦中、走馬灯が眼前をよぎる。
スカーレットの手を取ってから、
フジと出会ってから、
戦場で腹傷を抱えていたドラウ、
剣を構え私と戦おうとするアッシュ、
そして、太陽が如くの光で私を殺したアンバー。
不思議と懐かしいとは思わない。
私はもう何千年かは生きてきた。
しかし、しかしだ、今が、一番私らしい。
魔王という孤独の玉座を抜け、ただの魔族もどきとして歩く日々。
隣には、半魔族というこれ以上なく特徴的で素直な弟子。
はっ、これ以上を誰が望む?
投げられた賽は次第に緩やかになって往く。
私の人生も、今はアッシュの手助けをしているが、
最後の目的は、アンバーと出会いたった一つの問いの、その答えを聞く事。
まあうかうかと死んではいられんと言う事だ。
これまで何回死んで来たと思っている、今回もこれぐらいお茶の子さいさ…
あれ?ちょいまって?
まずいまずい、ガチで動かんのだけど。
というか魔力が枯れている、魔法が使えなくなっている。
今までは魔法で暗闇を吹き飛ばして復活していたが、出来んようになっている。
なあドラウ、これどういう事?
ーーー(しーん)
まあ、あいつがいくら生まれつきのストーカーだとしても、こんな場所にいるわけないか。
というか、居たら引く。全力で。
うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!
私が諦めると思うなよ!?ほんのこれしきぃー!!!
◇◇◇
無理かもしれません。
ガチで終わったかこれ。
たしか神様で一番偉いのは天空神ペルセウスだったか。
その下に、大地神アトラス、海神リバイアサン、冥府神オルフェウス。
聞こえますでしょうかペルセウス神様?
一つお願いがございます。
あなたの忠実な下僕をぶっ殺したけど、なにとぞ私を助けてくれませんか?
私元魔王ですよ?地上で一番丁寧に靴舐めますんで。
…じゃかあしい!命が一番なんじゃ!
この魔族もどきに恥も誇りもありませぇん!!
しかし、命乞いも案外楽しい。これが未知の事を知る楽しさと言う事ですか。
その時だった。
薄紫に光る三日月の形をした剣が、目の前に浮かび上がった。
全身が、同じように薄紫の魔力光に包まれ、体が動く。
「…これは?」
「儀礼剣ツクヨミ。神代から残る最上級の聖剣だ。ペルセウスはこれを狙って悪さしている。」
ーーーまさか!
「久しぶりだなインディゴ。ふん、死に方が情けなさすぎんだろ。あんな雑魚一人にやられるたあよっぽど鈍ってんだろ、張り合いのない」
「ーーーって、お前かい。
アンバーかと思ったのに。
何でそんなに声が似ている、紛らわしすぎるぞ。
それで、のこのこ何の用だ?アッシュから報せがあったのか、アルス?」
白の魔胴着に身を包んだ、無精ひげに明らか風呂に入ってない悪臭。
天地で最も身だしなみが最悪な男が目の前に立っている。
「けっ、残念ながら違う。そっちも気になるが別題。
いいかよく聞け、精霊都市カローナは、俺一人除いて完全に消滅した。」
「…まあそんな気はしてた。そもそもカイニが襲われているのに何の救援無しも違和感があったが、
カイニカローナ同時攻撃の作戦だったらなら納得だな。
…これからカローナを滅ぼした奴らがカイニに来るってこと?」
「ん。それぐらいは理解してくれなきゃな。
カローナを滅ぼしたのは2人。
ペルセウスの使徒、規制のラヴォティエル。
同じくペルセウスの使徒、友情のシャルエル。
ふざけた強さな野郎どもだがまあ気張れよ。俺は逃げる」
「おい待てっ、ふざけんな!お前も気張れよ!」
「やなこったい!
…あ、最後に!伝え忘れたことがある!お前の運命魔法の力が弱まった理由だが!」
「ーーー!」
「鎖を持つ者ほど鎖に縛られた奴隷だったってことだ!
お前は運命の革新点と気づかぬうちに触れあい、そして生まれ変わろうとしてんだ!以上!」
「はあっ?何だその糞ポエム、もっと具体的に伝えろ!
…っていつの間にか逃げてんじゃねえか!くっそ次会ったら地面に埋めてやる!」




