第2章第14話 順次
洞窟の入口周辺、大勢のドワーフたちが押しかけていた。
それぞれが槌やら斧やらの武器を持ち、今か今かと戦いを望む熱気で滾っている。
ぎゅうぎゅう詰めに押されながら、べオは何とか入り口までたどり着いた。
入り口にいたのは傷だらけのダークエルフだった。
白髪を後ろに結っており、左目には眼帯。
褐色の肌に尖った耳、師匠によればここ数百年間まで架空の種族と思われていたらしい。
「アタラキアに本拠点を置く『エルファイン商会』代表兼『轍の氏族』の長を務めるシグンムルと申す。
我々は敵ではない。カイニに荷物を届けに来たのだが途中で襲撃に会い、救援を求めにここに来た。
その証拠に、後ろの馬車には怪我人しかいない。いずれも卑劣なる処刑人の手によってだ。
助けていただけるならば、我らはあなた方の助けになる事を約束しよう」
「いや、その前に聞きたいことがある。」
ドワーフ側から一際屈強な男が歩み出た。
長く垂れた髭に大小様々な宝石を飾っている。
丸出しの腹部には大量の傷が刻まれており、歴戦の戦士だと直感させた。
「ドワーフ族戦士団長ヴァラヴァルディンである。
この洞窟は隠匿の魔術で隠蔽されているはず。汝らはどうやってここに辿り着いた?」
「その前に私から尋ねたいことがある」
ガリバルディの前にフジが立つ。
「紫電だ…」「あの女まだいたのか!魔族など追い出してしまえ!」「その言い草は何だ?我らの救世主であろうが!」
フジの登場で入り口の混雑は混乱を孕み始めた。
「お前が遭遇した処刑人は何色だ?赤か青か、はたまた金か?」
しかし、フジの一言でぴたりと静まる。
処刑人の色?いったいどういう事だろう
「…我らが出会ったのは、円盾に炎槍を振りかざす赤服の男だ。貴方が言う赤に該当すると思われる」
「…そうか。ヴァラヴァルディン殿よ、彼らは潔白だ。『紫電』のフジが責任を持つ故、洞窟で安らげさせてやってくれ」
「ああ…それは構わんが、処刑人の色とは?彼らは異国からやってきた侵略者ではないのか?」
「そんなものではドワーフ族を族滅の危機に追い込めるはずがないだろう。ここからの話は内密にしたい、べオついてきなさい」
べオは遅れまいとフジの後ろを歩く。
フジが歩くたび人混みが分かれ道が姿を現す。
群衆の顔に見えるは敬意か恐れか、声の一つも聞こえない。
先ほどの事を見るにフジはドワーフ族に大きな影響を与えられるほどの人物。
一体何をしたのか、自分がいかに何も知らぬか。べオは無力感に歯ぎしりした。
「ここなら相応しいだろう」
ヴァラヴァルディンが案内した先は地下に続く螺旋階段を深く下った場所だった。
等間隔に設置された灯火の光を吸って天井の宝石が煌めいている。
大きな机と大量の椅子からして会議室か何かだろうか。
「…まあちょうどいいか。それでは私が知る全てを教えよう。
カイニを襲った災厄、処刑人と名乗る者共のその正体について」




