第2章第11話 束の間の休憩①
「はっ!ここはどこだ!?」
べオが目を覚ますと、そこは石造りの部屋の中だった。
ただし独房のような陰惨なものではなく、
温かい毛布、様々な言語の本が置かれた本棚、
近くの机には飲み物に何やらカラフルな石がいくつも積み重ねられている。
「いったい…僕は何を…?」
思い出そうと頭に手を当てたが、返ってくるのは無機質な頭痛のみである。
コンコン。
ドアがノックされる。
「シツレイシマ…、…ア!目ガ覚メタノデスネ!良カッタ…」
入ってきたのは、王女らしく豪華な服装に身を包んだエシュタリエだ。
水と、何やら重苦しい色をした石を盆に乗せている。
目が覚めたべオを見て、嬉しそうに駆け寄ってきた。
「戻ッテキタ時ハ吃驚シマシタ…、
ドワーフノ若武者ト、頭カラ血ヲ流シテ気絶シテイタノデ…」
「そうでしたか…。すみませんついカッとなってしまって…
そうだ、師匠は!?インディゴ様は何処に!?」
「インディゴ様ナラ、イマ医師ニ見セテイマス。
ドワーフ族ノ歴史ノ中デモ随一ノ者デスノデ、安心シテクダサイ」
「そうか…よかった」
べオは肩の力が抜けたように、脱力のままベッドに倒れこんだ。
掌を押し当てた頬はひどく冷たかった。
エシュタリエは、べオの隣に座った。
「コレカラデスガ…ヒトマズハ私タチノ隠れ家デ、シバラク休憩シマセンカ?
コノ洞窟ハ結界デ覆ッテイルノデ処刑人タチニハ決シテ暴カレマセン。
職人タチガ駐在シテイルノデ、武器の手入レヲスルコトモデキマスヨ」
「武器…そうだ!僕たちは武器を探してカイニに来たんです。
なにか、武器を作ってくれる場所はありませんか?」
「武器デスカ、私タチドワーフハ火ト鋼ト共ニ生クル種族。
オ望ミトアラバ誰デモ作ルコト自体ハデキマス。
ーーーア」
「どうかしましたか?」
「一人、武器造リニカケテハ他ノ追随ヲ許サヌ、マサニ天才と呼ブニフサワシイ人物ガイマス。
シカシ…ヒドイ気性難ナノデス…」
「構いません!誰であれ今は力が、誰も傷付かないような力が、欲しいんです!」
「…ワカリマシタ。彼ニ話ヲ通シテオキマス。今日ハコノアタリデ、マタ明日ニ」
「はい!ありがとうございます!」
「イエ。感謝ヲ言イタイノハ私ノ方デス。
貴方ガ救イ出シテクレナケレバ、アノママ夢魔ニ全テヲ吸ワレテ死ンデイタデショウ。
敵対者ノ正体モ分カラナイヨウナ状況デスガ、
モシモ…コノ全テガハッピーエンドニ終ワッタノナラバ、
ドワーフノ国ハ全力ヲモッテ味方ニナリマショウ」
そう言い残してエシュタリエは出て行った。
べオは少々熱すぎるお茶を喉に流し込み、
べッドに飛び込んで天井を見上げる。
くすんだ色には何も見いだせなかった。
盆に置かれた石をかじってみる。
それはほのかに甘かった。




