第2章第8話 出会い
《っーーーー、私は、何を…?》
「ああ、目が覚めたか?」
私の周りには、3人の男女。
そのうちの最も幼い娘が、私に器を手渡す。
木の器を伝ったスープの温かさが、冷たい手にじんわりと染みる。
《これは…》
「安心しろ、毒なんて入ってない。積もる話は後でしよう、私たちは君の味方だ。それだけ覚えてくれ。」
見れば、王女としての服も川岸に干されている。少しばかり大きすぎる寝間着は、
不思議と心を落ち着かせてくれた。
スープを一口すする。よく分からない草と硬い肉が入っている。
食べたことがない味なのに、喉が呑込むことを止めない。
「そういえば師匠、この子に僕たちの言葉は通じるんでしょうか?」
「わからんが、まあ、なんとかなるだろ。」
「…アリガトゴザイマシタ。」
私は途切れ途切れの言葉を絞り出す。
3人とも驚いている。どこか可笑しく、頬が緩む。
「ワタクシノ名前、エシュタリエ・ヴァンカーハッド・ランディーン、イイマス。」
「ヴァンカーハッド…『火灯のヴァンカーハッド』の子孫か。」
「師匠、その人は何をした人なんですか?」
「かって、魔力に呑まれた生物の成れの果て、魔人によって太陽が盗まれた事件があった。
ヴァンカーハッドは自分が集めた戦士4人と共に魔人共の住処に潜入し、その親玉を討ち取って、この世に再び光をもたらしたと言われている。その時に使われた剣は砕け散ったが、
そこから生成された宝石の一つが先ほど拾ったものという訳だ。」
「ハイ、ソコノオトコヒト、持ッテイルガ、ドワーフ族3大秘宝ガ1つ『灼怒ノ紅玉』デス。
ワタクシタチノ国ハ、ソレヲ狙ウ悪イ人達に滅ボサレマシタ。生キ残リハ、ワタクシ以外イナイデショウ…。」
「ドワーフ族が滅ぼされた…か、何度も戦った身としては実感のしようがないな。
『黄金喰・デンバーウッド卿』、『翡翠剣のロゴストラゴス』、『紺碧杖の賢者・ウォリアッド』。
あいつらがいるのなら、並大抵の敵に滅ぼされるはずがないが…。」
「ハイ…諸兄ラ大英雄ナラバ、アノ程度ノ剣士ナド、簡単二退ケレルハズデシタ。
デスガ…毒ヲ盛ラレタノデス。ソレモ、
植物程度ノヤワナモノデハナク、戦士ヲ侮辱スル、ナニヨリモ忌マワシキモノ。」
それは…
ザッ
「なるほど、鼠が忍び込んでいたのか」
振り返ると、一人の男が立っていた。
長く伸びたざんばら髪を後ろに纏め、2本の刀を背中に担いでいる。
「ドワーフ族最後の姫君エシュタリエ殿、御命頂戴いたす。」
ダッ!
ガッ
キィィン!
「誰がやらせるか!」
「なるほど、いい剣術の腕だ。だが… 「ダメデス!逃ゲテ!」 …無意味だ」
なっ!?剣が溶けてーーー
ザシュッ!
「師匠ーーー!!!」
舞う血と共に、私の意識は消えた。




