第2章第7話 泉
「いだあっ!」
地面を掘りながら進んでいると、上から何かが落ちて私の頭に当たった。
ううううううううぐああ…‼
「わ、すっごい綺麗な宝石…。何でこんなお宝が地面の中にあったんだろ?」
そ、そりゃあ…ドワーフが彫った特上品じゃないか!魔王戦争では何百億の値が付いた代物…、本来であればドワーフたちが王城の奥に封印しているべきだというが。
土に塗れ、微かに血も……やはり、カイニで何かが起こっているとみるべきだろうな
そう言いながら、べオのポケットに宝石を突っ込んだ。
「だったらなおさら急がないとね!…あっ、べオ君、そこがいい~」
「こっ、ここですか?」
「そこ~~~ああ~~ん!」
メリッサは土魔法で地面に穴をあけ続け、べオは自分の魔力をメリッサに流すことで魔力切れを防いでいる。言い方は何とかならんのか?
「うわ、この先は石でぎっしりだ。もう地中はこれ以上進めなさそう」
そうか、だったら仕方がないな。地上に出てしまおう。
「僕が最初に出ます。2人は警戒を。」
「よし、べオ防御魔法を掛けるぞ、3秒後に飛び出せ。」
1…2…3!
べオはナイフを構え、地上に開けた穴から飛び出す。
私とメリッサもそこから続くように、両手を前に構え、左右を確認する。
周囲は森で、2つの巨大な山に挟まれていれる地形だ。
鬱蒼とした盆地で、身を隠すには好都合だろう。
ここを拠点にしながら、カイニに起きたことを探る。
「師匠、この先に小道が続いています。
淡い魔力の残滓を感じますが、追いますか?」
「迷宮だったら怖いが…まあ、放置していてもいい事が無い。
3人で追おう。」
小道はなだらかに続いており、草木が頭上で繋がって、洞窟状態になっている。
魔力の残滓は大きくなっており、同時に小さな血の香りが漂い始める。
「…この匂いって、あの宝石に付いていたのと同じ…?」
小道が開け、青い光が視界に満ちた。
ーーーまずい!「べオ!目を塞げ!」
そこにあったのは魔法の泉。
迷宮内にもときたま現れる、癒しの場所である。
だが、今回は別だ。
泉の周りには大量の精霊がいた。
泉をのぞき込むようにして何十匹と群がっている。
「精霊は魔力の塊だ。その土地によって強さも性質も変わる。
魅惑精型、それがあいつらの名。
男を誘惑し、その全てを奪う恐ろしい奴らだ。私とメリッサは女故無事だが、べオ。
お前は目を瞑ったまま、小道に戻れ。早く!」
「は、はいーーーいや、…あれはっ!」ダッ!
「べオ!?なぜ泉の方へ駆け出す!」
目を瞑りながら、群がるサキュバスを押しのけ、べオは泉の中に手を突っ込んだ。
卵を守る母鳥の様に、べオは、それを腕に抱える。
雲のような純白の髪、あどけなさを残した幼い顔立ち、赤く染まった青のドレス。
人よりも大きく硬い耳からして、ドワーフの少女…?いや、あの額にある宝石はーーー
「ドワーフ族の王女…だと…?」




