第2章第6話 カイニ 今
その後、私は駆けつけてきたメリッサに助けてもらった。
べオの雷が落ちてきたが、今はフジの事で頭がいっぱいだった。
「カイニには行くな」
あれはどういう意味なのだろう、あいつでさえ手を焼くような事が起きているんだろうか?
そうだとしたのなら、私は放ってはおけない。師であり、信頼のおける部下であり、背中を預ける戦友であるフジが困っているというのなら、何を差し置いても私は助けに行くだろう。
「なあべオ。お前、友達が遠くで困っているかもしれないって知ったらどうする?」
「助けに行きます。何を差し置いてでも」
「よし、さすがだ」
「うわっ、今料理しているんです、頭を撫でないでください!」
・・・・・
「てな訳で、私はおバカにも迷宮に捕らえられ、師匠兼部下兼戦友にカイニに行くなと言われましたので、行くことにしました。いいですか?」
「何ですかいきなり改まって。僕は師匠のいくところならどこでもお供しますよ」
「アタシも異議な~し。目的地変わってないならなんだっていいよ。とっとと行きましょうや、ぶへへ」
「じゃ、早朝出発ってことでいいな?おかわり」
「はい!」
「へ~い。べオ君、あたしもおかわり」
早朝の風を浴びながら、馬鞍に飛び乗る。
メチェブリーコス(わたし命名)もぶるると鼻を鳴らし、機嫌がよさそうだ。
そこの木で作った軽弓を背に収め、腰に矢筒を巻く。
「よし!行くぞ!」
って、おいおい。
カイニに続く道を、数多くの兵士が巡回しているじゃないか。
剣を構え、近づく者は全て叩き切るとするかのような殺気を放っている。
「師匠、どうします?このままではカイニまで行けないですけど」
「仕方あるまい。地中から潜入しよう。メリッサ、土魔法は使えるな?」
「当然。魔術師舐めんといてよね~」
地面に飛び降り、メチェブリーコスら3体の馬を野に放つ。
お尻を叩き、全力で駆けさせた。
「これで、しばらくは囮になってくれるだろう。今のうちに地面から入るぞ」
「短時間で何kmも掘れとか無茶をおっしゃるねぇ。アタシじゃなかったら不可能だったよ」
「流石です!メリッサさん!」
「うへへ~、お姉さんもっと張り切っちゃうよー!」
「隊長、掃討完了しました」
カイニ。そこかしこが血に染まり、優れた技を持つ鍛冶師、鑑定士、若い労働力たちだけが縄で縛られ捕らえられていた。ドワーフ、ノーム、エルフ。優れた技術を持ち太古より魔法と生きてきた彼らを屈服したのは新時代の技術だった。
「よく聞けぇ!このドワーフはおろかにも脱走を企てた!よって、此処に斬首の刑に処す!」
カイニの中心広場で処刑が始まろうとしている。
何回と繰り返したせいでかっては白かった石畳も赤茶色に染まっており、また一人がその染みになろうとしていた。
「ふん、蛮人めが。お前らの剣などで、ドワーフの岩の肌に傷一つ付けられるものか!やってみろ、鉄神の裁きがお前らを押し潰すであろう!」
「ふん、好きなだけ喋るがいいさ。そのやかましい口からは、血だけが流れるのだからな!」
処刑人によって刀が振り下ろされる。
ドワーフはにやりと笑い、縄を引きちぎった。
「『鉄岩の加護』!ふはは、その銀の剣が折れるさまを特等席で眺めるとするか!」
サクッ
そんな軽い音を残してドワーフの首が石畳の上に墜ちた。
何百層と首の皮膚上に積まれた魔法岩を難なく切り裂き、鳥が飛ぶかのような優雅な手つきで鞘に戻る。
「これが反逆者の末路である!しかと目に焼き付けたな!アステリオス、そこのゴミを食べてしまえ」
処刑人の背後から巨大な角を生やした巨人が歩いてくる。
「あ…ああ…ひいいいい!嫌だぁーーー!」
oooooooooooooooooooooooooooooooooo!!!
枯葉を千切るように、残りの脱走者を纏めて口に放り込んだ。
ゴリゴリと骨が噛み砕かれる音が響き、アステリオスは唾を吐き出す。
落ちた場所には、何百年とドワーフと生きた誇り。
バラバラに砕かれ原形を留めていない金槌が転がっていた。




