第2章第4話 純白よ、わが手を引け①
ぱからっ。ぱからっ。
馬の吐息を下に、カイニへ走る。
茹だるような暑さだが、馬上は風が心地よい。
メリッサは馬の扱いがうまく、色々と教えてもらった。
「これでねえ、両方の腿で強く挟めば加速するんだよ~。」
「へえ…。」
カイニへの道筋にも詳しく、護衛をする代わりに案内してもらう形になった。
「あと60kmぐらいかな?これぐらいの速さだったら2日ぐらいで着くよ。」
「わかった。今日はこのあたりで休息を取ろう。べオ、この先の偵察に行ってくるから今日の野営の準備をしといてくれ。」
「はい。お願いしますね、師匠。」
馬を木につないで、隠れるようにしながら森の中を進んだ。
鬱蒼とした森は生命の息吹で溢れかえっており、そこかしこから鳴き声が響いている。
精霊でもいるのだろうか、空気中が魔力で充満していた。
「こういう場所では何かしら不思議な事があるんだよな。エルフの古代遺跡が眠ってたり、蒼穹艦の残骸があったり…、つまり魔力を食べることで生きる種類の魔物も住み着く、と言う事だが。
…ん?血の匂い?」
微かに鉄分の匂いがする。
この先だろうか、木陰に隠れ眼を細める。
木々の間から白い建物が顔を覗かせている。今の時代のものではない。
ここにこんなものが眠っていたとはな、周辺の空気中の魔力濃度が高い原因もこれだろう。
扉の中へと赤い雫が点々と伸びている。
この出血量では長くはないだろうな。
罠を警戒しながら、建物に向かって歩き出す。
その純白に穢れは無く、まるで神の宮殿の様だ。
「詩人でもあるまいし、何かに例えるのは柄ではないんだがな。
しかし、それほどに美しい…。もっと早くに見つけていたら別荘にでもしていただろうか?
ふふっ、懐かしいな。第4連隊長もこんな建築を好んでいた。
あの時病に倒れなければ、意固地に治療を拒まなければ、此処に、共にいたやもしれんのにな…。」
…ええい、今はこんなことを考えてる場合じゃないだろ!
ーーーあれ?こんなに進んでいたか?
気が付けば、周囲は白に覆われていた。
足元に落ちていた血も消えている。ーーーそうか、この城は迷宮か。
あの血も馬鹿を誘い出すための餌という訳か。
「…しくじった。とにかく早く連絡を…、ーーーはあ、そうたやすく脱出できるわけがないか」
ゴゴゴ…。部屋の扉が開き、ゴーレムが入ってきた。
全身が鉄で覆われており、魔法除けの結界術が貼られているのか、薄青に発光している。
「魔法使い殺しか、面倒だな。さあ、かかってこい。」




