第2章第2話 お前の背に俺も載せてくれないか
朝日が射しこみ目を覚ます。実にいい朝だ。
目覚めてすぐに荷物を纏め、背負い、街道に沿って歩いていく。時には道なき道をただひたすらに、我武者羅に、かき分けて進んでゆく。これもまた旅の醍醐味だ。
べオも自省をしたのか、自分の調子に合わせて後ろを進んでいく。これなら心配する必要も無いだろう。
カイニはカローナからはそう離れてはいない。
地図で見ればカローナの斜め下に位置しており、クシュリアイオスを追うのに大きな時間損失にはならないだろう。
これから何と戦うにしても、やはり良質な武器が必要だ。そういえば、自分がかって使っていた剣、あいつはどこへ行ったんだ?
まあ、どうせ盗賊かなんかに盗まれ、高値で売られ、収集家に買われ、何処かで飾られているのだろうが。
「うわあああああああああああああああ!」
真昼に、木陰で一息つこうとしている時だった。
間の抜けた悲鳴が聞こえてきた。別に助けなくてもいいか。物資の無駄になっちゃあいかん。
「師匠!?いや、何でくつろいでるんですか!?助けに行きましょうよ?!」
「へーい、まったく仕方ないのぉ。」
「…あ~、助けに来てくれたのかな?…ふふ。嬉しいけどちょっと近づかないで?今の私、時限爆弾だからさ?下手したら世界吹っ飛ぶかも…?」
声の主は、岩に身を挟みながら悶えていた。女だ。胴の辺りが青い光に包まれている。
「なるほど、魔法陣で瞬間移動しようとしたら、何かしら間違えてこんなことになったって訳か。見たところ、魔法初心者ではないだろ?助ける義理も無いし、ま、悪いけど自力で何とかしてくれ。」
「師匠、冷たくありません?この人、可哀そうじゃないですか。」
「ふふ…私を憐れんでいる。私、すっごい憐れまれてる…。ときおり私に向けるその視線は、さながらギロチン並みだな…ちょっと気持ちいいかも…」
「…うわ」
べオも引いてるな。さすがにか。
それでも助けてやってる辺りは、私が育てただけはあるな。ふふん!
「師匠、手伝ってください。せーの、それ!」
ずぼっ!
「ああ~///」
べしゃっ!私もべオも反射的に彼女を投げた。
「・・・ふふ、体がカッチカチだぁ。ちょっとカイニに向かおうかな。って思ったんだけどね…、こんな事故になるなんて、今日はとびっきりの厄日だったみたい。
助けてくれてありがとう。お礼ならたっぷりしたいところなんだけど…ごめん、今手持ちが無いから
あとでいいかな?」
そう言って女は立ち上がる。ふむ、思ったより背が高いな。180㎝ぐらいか。パッとしない顔立ちだが、派手なピアスを両耳に着けている。太陽と月。双神ヴィドを模した物か。地味な顔、地味な衣服に似合わない、アンバランスな印象を受ける。
「おい、名前は何というんだ?」
「私はメリッサ。メリッサ・カウティヘーリって者だよ。こう見えてけっこう凄腕の…」
「「「ひゃーーーーはーーーーーー!!」」」
突如、汚い叫び声と共に、斜面から山賊どもがなだれ込んできた。
うえっ、臭いな、まだ近くないとはいえ、悪臭がプンプンしている。
「うふふふ…ここは私に任せてもらおうかな。腕の見せ所さ!」
メリッサが私たちの前に立った。ぶつぶつと詠唱を始めた。
『唄え、歌え、謳い給え。風の流るる先へ、静かに火花踊る方へ。我ら、ここに願う、汝の久遠秘める眠りをーーー。炎魔術ランク2『竜炎』!」
メリッサの背後から轟炎が噴き出し、山賊たちを焦げかすに変えた。
乗り手を失い、パニクッた馬を捕まえておく。これは良い移動力になるぞ。
「…ふふっ、どうかな?やるでしょ?やるでしょ?やるでしょ?」
「はい!すごい技前でした!詠唱も完璧で感動しました!」
「うへへへへぇ~。そこまで真正面から褒められるとすごい嬉しい~。」
「なあ、メリッサ。私たちとカイニまで一緒に行かないか?」
「いいよ。というか、しがみついてでも行くつもりだったからね。」
「ははっ!交渉成立だな。よろしく頼むぞ!」
という訳で、旅の仲間が一人増えた。
旅は道ずれ世は情け、このような予想外の出会いも旅の醍醐味だろう。
さて、カイニまで馬で走りますか!
おいべオ、酔いやすいからって嫌そうな顔するんじゃない。




