第1章最終話 雨にも負けず、風にも負けず。
あれから数日が経った。
避難していた国民たちも戻り始め、少しづつ王都も復興しつつある。
このような事態になった理由を、『王都地下を流れる龍脈同士が衝突し爆発したから。』とアッシュは国民らに説明していた。ここの地下に龍脈が流れているなんてまったく聞いたことないが、国民たちが納得していたならいいんじゃないだろうか。
ゴッフェが死んだ件については、『犠牲を減らすために最後まで残って抗ってくれた。金色に染まった空は彼の魔法の痕跡である。彼が居なくば被害は遥かに拡大していただろう。』だと。
張本人が聞いてどう思うかは知らないが、みんな感謝して手のひらを合わせていた。
エルドラド国民の感謝の作法…というよりかは、東から流れてきた民によって伝わった祈りの方法らしい。まあ、50年も平和な時間があったらいろいろ変わるんだろうな。
そして復興作業の途中にガーベラの部下が帰ってきた。
左腕が化膿して死にかけていたが、今は治ってきているようだ。
べオも医療班に加わっているからな。
そしてそのヂュなんたらが言うには、青い肌の大男がガーベラを連れ去ったらしい。
過去に絶滅したウルカディス族、ペルセウスの部下のクシュリアイオスと名乗っていたようだ。
サタナエルに聞こうとしたが、いつの間にか消えていた。
結局、なぜミナフェルの真名が『醜いアヒルの子』だったのかの説明も無くな。
復興、少しは手伝えや。
こんなちっちゃいちっちゃい可憐な少女さえ、瓦礫運びやらなんやらをしてんだぞ。
そういえばマクフィーン、シュバルツ、スカーレットはエルドラドに残って復興を手伝うとのことだ。
エルドラドに愛着が湧いたのだろう。あいつらがいれば復興も近い。いやあ……スカーレットも立派になって…。
暗殺の屋連中も手伝わされていた。
桜墨の影が瓦礫を撤去している姿は実にシュールだったわ。
ドラウは誘拐されたスカーレットを探しに、そしてジャックは戦いの後すぐに投獄された。
あいつがやってきたことを考えればやむなしなのだが…ちょっとかわいそう。
で、レドールが皇帝になった件だが。
まあ、色々経験やらカリスマやらがまだまだ足りないのでしばらくはアッシュが補佐しながらやっていくそうだ。
あの日以来べオとレドールが会うことは無くなったらしい。
べオは悲しそうにしていたが、まあ納得はしているだろう。
会えないからと言って、育んだ友情の全てが消えるわけではないからな。
ほいで本題、アッシュから貰ったアンバーのメッセージはぼろぼろの手紙だった。
書いてあるのは非常にシンプルで、
『天元にて待つ』
はははー!何も分からん!
・・・・私は謎解きをするために、あちこち奔走してたんじゃないんだぞ…。
つまりあれか。
空を飛んで、一番高いところまで来いと言う事だな!
…って、出来るかぁ‼‼
ゴッフェみたいな賢者ならまだしも、運命魔法単体じゃどうにもならないわ‼
とりあえずペレオディナに相談したら、
「では飛行魔法が使える方のところへ行ってみてはいかがでしょうか?たとえば、アッシュ様やアンバー様と共に戦った勇者パーティーの一人、大魔法使いアルス様など。彼の家はガーベラ様を攫った大男の方向とも一致していますし」
って答えてくれた。
いやあ、持つべきは頼りになる仲間だなぁ!
まあ、アンバーに会いに行くついでにガーベラを発見したら助けてやろう。
囚われのお姫様枠が、偏屈老いぼれよろよろ爺とは気が乗らんがな。
さて、もうすぐ私とべオは次の目的地へ出発する。
忘れないように、本にこれまでの出来事を書いておいた。
この本はエルドラドに置いていくことにしよう。
いつか読み返したくなったらまた戻ってくればいい。
私が本当の意味で死ぬことは、決してないのだから。
「師匠まだですかー?早く行きましょうよー。」
「おう、もうちょっとだけ待ってくれ!…最後にサインをかっこよく決めて…よし!封蝋も完璧だ!じゃあ行くか!」
宿のドアを開け、街道に出る。
橋の上でべオが待っていた。
「うしっ行くか…。」
「待ってくれ‼」
「レドール君!?今忙しいはずじゃ?」
「はあはあ、そんなもの…!今、君に会えなかったらこの先きっと、僕はずっと、後悔するさ。…これを渡したかったんだ。」
レドールはべオに何かを手渡した。
「…ペンダント?すごい…綺麗だ…。」
「ああ、僕の母上の形見だ。彼女は僕を生んで亡くなった、そのペンダントだけが僕の知る母親の全てだ。…だから君に渡したかったんだ。僕の最初にして最高の友、べオ、君に。」
「…ありがとう。大切にする。これから先、絶対に。」
う~ん、いい友情だ。だけど、そのプレゼントはちいとばかし重い気がする。
ま、2人が良いならいいんだけどね。
「よし、改めて!次の目的地は精霊都市カローナ、大魔法使いアルスが滞在している魔法の聖地!
そこに行って天元に行くためのヒントを貰い、そして出来ればガーベラとクシュリアイオスの居場所も突き止める!いいな!」
「はい!出発しましょう!」
ーーー意気揚々と進む二人の背をレドールは見送っていた。彼らがどうか無事であるように、と祈りを込めて。
「…おいおい、もう出発したのか。」
「せっかちですね。まっ、彼ららしいと言えばらしいですが。」
「父上、グレース。」
「ふっふ、送りに来たことは秘密で頼むぞ?ジョナサンに怒られるからな。」
「私もですな。ああ見えてペレオディナ君は怒らせるととても怖いですから。」
「ふっ、そうですね。私たちも、これから張り切らなくては!」
黄金に実る小麦が風を受け、そよそよと揺れる。
それはこの国なのだろう。
何が起きようと、めげずに、折れずに立ち続ける。
彼らが止まることは、決して無いのだからーーー
第1章黄金繁栄帝国/エルドラド 完。
始めての執筆、慣れぬことばかりでしたが、無事に1章を終わらせることが出来、安堵感に包まれております。書き切れたのも、ひとえに見ていてくれる読者の皆様のおかげであり、作者としてこの上なく嬉しい限りです。これからも『魔王転生』を、インディゴたちの旅路を、見守っていただければ幸いです!よろしくお願いします!




