第1章第21話 インディゴ・グレートブレイン
エルドラド上空、何よりも天に近いその場所では激しい光を伴う魔法の応酬が続いていた。
蝶の様に舞う麗光があれば、炎のように押し寄せる怒雷が弾ける。
その物騒さを抜きにすれば建国祭締めの大花火としては完璧であった。
「光魔法、『西風断裂』!」
「うわあああっ!オルトロス、右ぃっ!」
「ゴオオン!」
「へえ、こいつこんな鳴き声だったんか。」
「お姉ちゃんちょっと動かないで!落ちるわよ!」
「う~ん…運命魔法…。」
べオがオルトロスにインディゴら3人を乗せ、それをヴァサーゴは撃ち落とそうとする。
実際には激しい魔法の応酬なんてことは無く、ヴァサーゴの外れ玉が最後の輝きを放っているだけであった。
「チッ、ちょこまかと動きおって…撃ち落としてくれるわぁ!
重力魔法『反重力黒球・連弾』!
炎魔法『獄炎地獄相』!
光魔法『女神の慈雨』!
魔法っーーー『 』ッ!!」
黒い球体が空間に現れ、雲も光も全て飲み込む。
全てを飲み込んだ中心地点から禍々しい炎がうねりながら出現する。
そして宇宙を知らぬ者からすれば神のおわす場所、すなわち天から無慈悲な光を纏う針が雨のように降り注ぎ、そしてその全てを、次元を無視した不可視の一撃が薙ぎ払った。
(あれはさっきも見たぞ。唐突に見えない一撃を薙ぎ払う魔法…まともにくらったら死ぬな。
詠唱が無いってのも気になる。ってなると、魔法じゃないんだろうか。
例えるならば剣の達人の一撃。詠唱など必要としない実力から繰り出されるただの動作。
魔法って言ってはいるけどゴッフェの癖か?いやブラフって線もあるが
あのクレイジーピーポーバラードなんとかがそんなことをするとは思えんしな
…こういう場合は過去の敵から思い出すのが定石…)
「師匠、あの一撃が来ます!どうやって躱せば…って寝てる!?」
「あほ!寝とらんわ!ちょっと昔の敵から学んでいるだけだ!すまんがしばらく回避に専念してくれ!」
「…分かりました!出来るだけ早くお願いします!」
「私がサポートするわ!攻撃が来たら合図するから!」
「お願いします、…えっと。」
「スカーレット!あんたの師匠の妹!」
「えっ!?」
「インディゴがちっちゃくなってるだけだから!来た!右!」
「ゴオオン!」
(…大丈夫かなぁ?いや、私は私の事に集中…よし、開けた。)
インディゴの精神の中には一面真っ白な空間が広がっている。
そこではインディゴのかって戦ってきた敵、仲間が勢ぞろいしていた。
それはインディゴ本人の能力、記憶したものを寸分の狂いなく再現する、いわば脳内バトルシミュレーターである。
「あの一撃に似た能力の奴は…まずはお前だ。」
インディゴの前に一人の女が現れた。
「虚空の勇者カリス。お前の必殺の刃、今一度見せてみろ」
カリスは音も無くインディゴに近づき、刃を光らせ詠唱を開始した。
「虚無を超え、空白に至る…『虚空顕現』!」
意思の無い斬撃が空中から現れ、インディゴの首を切り裂こうとする。
が、インディゴは苦も無くその一撃を切り払いカリスを一刀に両断した。
「違う、次。」
夜を描いたようなマントを羽織った魔族が現れた。
「大陸喰いの魔王アタージェ。かかってこい。」
アタージェは魔導書を開き呪文を唱える。
「唱えよ、満ちよ、冒涜せよ。地を這う我らは永劫の罪人なり!『浸食の蠟海、此処に』!」
アタージェの周りから白濁とした波が生まれ、インディゴに向かって押し寄せる。
インディゴは地を蹴って飛び上がり、アタージェの首に刃を突き刺した。
「違う。…ん~なんか違うんだよな。なんていうか、こう…物理的じゃないっていうか…違う世界からやってきてるような…あ。そういう事か。」
「…師匠まだでしょうかっ!?耐えるのも限界でもうっ!」
ヴァサーゴは■■■■魔法『 』を連続で放つ。
透明な一撃は空を割り 上空は静寂に包まれた。
「ふん、これで終わりだ、くそっ大幅に時間を取られた。魔法陣の完成を急がねば…。」
「残念だったな!その魔法はもう通用しないぞ!」
「!、馬鹿なっ!?」
ヴァサーゴの遥か真上、太陽と重なる場所にインディゴたちはいた。
そしてそのままヴァサーゴめがけて急降下を開始する。
インディゴはオルトロスを蹴って真下に飛び出し、その勢いのまま、魔力で造った剣でヴァサーゴを切り裂いた。
「がっ…!」
「まったく、手間かけさせてくれおって!たかだか111年しか生きてない若造が私に勝てると思うなよ!」
好き勝手ルビふるのめっちゃ楽しい




