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魔王転生~勇者を求めて、魔王は旅をする~  作者: 壱田一
第1章 黄金繁栄帝国/エルドラド
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第1章第13話 火花散る

インディゴは茶を啜っていた。


桜模様の障子が左右に並び立つ。

目の前では桜墨の影が優美に座っている。


インディゴの隣には、着物に着替えた妖酔の影が正座しており

仮面越しにも、恐怖が見て取れた。


「…さて。」


桜墨の影が口を開く。


「妖酔の影よ、ガーベラとの契約中に何があったか…聞かせてもらおう。」


「は、はい…。」


妖酔の影は深く頭を下げながら、ぽつぽつと語りだした。


長かったので要約すると、

オルトロスによる契約の上塗り、

洗脳、

ガーベラに楯突く反乱勢力の排除、

洗脳を根性で破って脱出。


という流れらしい。


てか、洗脳って自力で破れる物では無いはずだが…。


「はい、そこは訓練で鍛えましたので。」


「ええ…怖…。」


私に襲い掛かった理由は、

洗脳が完全に解けてなかったから、

使命と命令が混ざって頭がぐちゃぐちゃになったらしい。


「…像踵と無毛は何処に?」


「…未だ洗脳が解けておらず

おそらく…私を探しているものと思われます。」


桜墨の影は立ち上がり、

妖酔の影の肩に手を置いた。


「よくやった。此度の任務、ここにて終わりだ。

ゆっくりと心を休めるがいい。」


「…はい。」


妖酔の影は感じ入っている様だ。


「…インディゴよ。

俺たちの目的は同じだと思わぬか?」


「ああそうだな。私の目的は、

オルトロスの召喚に伴う地獄の顕現の阻止、

そして、スカーレットの洗脳からの開放だ」


「俺の目的は、面子を汚された対価を支払わせる。

俺たちを敵に回してただで済むと思う勿れ、だ。

ガーベラに地獄を見せてやろうとな。

来い!

風鳴の影!

光陰の影!」


暗闇から2人の人間が飛び出る。


一人は浅葱色の着物を纏っており、

小振りな日本刀を腰に下げている。

栗色の髪を編んで肩に垂らし、腕甲に紅葉の模様を刻んでいた。


一人は灰色と黒の髪であり、

細く引き締まった身体からは、凄みが滲みでている。

武器は何も持っておらず、黒い布で全身を縛っていた。


「我が懐刀たちよ…地獄を見せる準備はいいか?」


「「…何時でも。」」


「よろしい、ではインディゴよ。

暗殺組合の情報網で、

過去に死んだ魔王、勇者たちが蘇ったとの報が入っている。

俺たち『暗殺の屋』は像踵、無毛の開放のため、

北東にあるガーベラの別荘を強襲するつもりだ。

お前は、アッシュにこの事を伝えに行ってくれ」


「…勝算はあるのか?」


「当たり前だ。

俺たちの誇りに勝るものなど断じて無い。」


(…誇りか。

思い返してみれば、

自分自身についてあまり考えたことも無かったな)


刹那、インディゴは郷愁に耽る。


彼女の故郷は、雪原との境界線にある守護壁街だった。


数百キロを超える長さの壁が常に存在しており、

それに常に息苦しさを感じていた。


その町は珍しいことに、魔族差別がほとんど無かった。


城壁を超えた先には、魔物が狡猾に潜んでいる。


常に死線と隣り合わせだと、差別をする余裕もなかったのだろう。


魔族だろうと、人だろうと、ドワーフだろうと、

晩に成れば、酒屋で酒を酌み交わす声が街中に響いていた。


だがそれも破られた。


その日は珍しく吹雪が止まっている日だった。

突然空から光が射した。


その光は、触れたものを消滅させた。

家が、人が、塔が、壁がすべて消えていく。


立ちこむ灰の中、それは降臨して来ていた。

女、魔族のような角を生やしているが、体は人間だ。


全身に銀の鎖が巻き付いており、溶けて動き続ける翼がたなびいていた。

顔は仮面に覆われていて、鳥のようにも、人のようにも見えた。


インディゴは路地に隠れていた。

スカーレットはその奥で怯えて泣いていた。


安全を確かめるため、インディゴは少し顔を出した。

そうして、彼女は”見られた”。


全身に銀色の、車輪の形の魔力紋が浮かび上がる。

頭が蒸発するように痛んだ。


そうして彼女の体は変質し、『魔王インディゴ』へ為った。


子供だった体は大人になった。

髪は、見た者を魅了するような銀色に代わり、

声は、何かが覗いているような不思議な響きがした。


…こうして彼女は雪原の魔物、魔族を率いて人と争いを起こした。


まるで何かに操られるように。


(…まあ、その力もほとんど失ってしまったがな…)


思えば何故だろう?

本来であれば、最盛期で目覚めるはず。

今のように脆弱ではなく、一喜一憂など忘れた姿で。

ごっそりと魔力が消えている。


…まるで同じ力を持つ何かが目覚めたような…。


「…まあいい。…それで。」


声はそこで止まる。


目の前に、魔族の男が立っていた。


長槍を肩に担ぎ、欠伸をした。


「ふうん、あんたがインディゴかい?

…まあいいや、とりあえず死んでくれ。」


首に槍が振るわれる。


「ーーーぬうん!」


サーベルで弾く。


「…舐めるな!ウルス、『最速の魔王』ウルスよ!」


「…へえ、知ってくれるのかい。

さすがだな、魔王インディゴ。」


「なるほど、お前がガーベラの尖兵か。」


インディゴとウルスの間に、桜墨の影が割って入る。


「…誰だか知らねえが、お前は殺す対象じゃないな、さっさと行け。」


ウルスはうっとおしそうに手を振る。


「残念ながら、俺にとってはお前は殺すべき男なのだ。…来い!」


桜墨の影はばさりと袖を振る。


桜墨の影の前に、5人の影たちが立った。


嘴掌の影、マーフィス、妖酔の影、風鳴の影、光陰の影である。


「インディゴよ、先に行け!

ガーベラの侵攻が始まったと!

アッシュに伝えよ!」


インディゴは出口に向かって走る。


2つ、光がインディゴを襲った。


ギイン!と音がして、嘴掌の影と妖酔の影が受け止める。


像踵の影と、無毛の影だった。


だが二人とも、目が充血しており、

食いしばった口からは血が滴っている。


首には黒く鈍く蠢く触手が埋め込んであった。


「…なるほどな。

それで操っているのか…。

風鳴、光陰!ウルスを足止めせよ!

妖酔と嘴掌の影、マーフィスが2人の洗脳を解く!」


「…へえ、2人程度で俺を止められるとでも?」


「…ふっ、舐めるなよ。

あの二人の速さは、お前にも届きうるぞ。」


「…なら、やってみせろ!」


そう叫んでウルスは姿を消す。


ヒュオッと風が裂かれる音がした。

上を向いた光陰の影が、槍の一撃を受け止める。


「…!」


横から風鳴の影が、刀の一撃を放つ。


「秘儀…春華三閃!」


放たれた三本の刃がウルスの胴体に食い込む。


だが、その傷跡はみるみるうちに癒えていった。


「いい速さだが火力が足らんな!

それでは俺は殺せないぞ!」


その戦いを見つめる鴉がいた。


鴉の目を通して、アッシュの前に跪いている男がゆっくりと言葉を紡いだ。


「…暗殺の屋は『最速の魔王』ウルスと交戦開始。

『絶対防御の勇者』ガインは軍15万を連れて、西から進軍を始めています。

南では今、ブリュンヒルデが到着したところです。

北は…何の影も見えません。

おそらく雪原越えが頓挫したのでしょう。

魔族は少しづつ観光客に混ざってきています。

まもなくインディゴがこちらに向かってくるでしょう。」


「…うむ、よくやった。

引き続き頼むぞ。

12騎士団第第4席『鴉の残影』シュラよ。」


男は何も言わず、大広間から出ていった。


(シュラは8体の鴉を操っている。

使う体力と魔力は想像を絶するだろう。

だが一日は持つ。

シュラの忠義は一番高い。

ほかの12騎士団も少しづつ帰ってきている。

…やって来い、ガーベラ!

このエルドラド、ちょっとやそっとでは崩れぬぞ!)


…建国祭まで残り10時間。
























































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