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魔王転生~勇者を求めて、魔王は旅をする~  作者: 壱田一
第1章 黄金繁栄帝国/エルドラド
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第1章第11話 群像劇 ~終末の加速~


首が飛ぶ。


かっては黄金に輝いた廃墟の中心で、

村人たちが首を飛ばされていく。


「ひぃっ!ど、どうかお助けを!!」


「ぎゃははははは!!そらあ!」


悲鳴と笑いが闇夜に響き、

鮮血が、魔法陣にびちゃりと張り付く。


墓地の中心に描かれた魔法陣の周りには

400人を超えるほどの首が転がっていた。


「ねえ、ザザン様ぁ!もういいんじゃないですかぁ!?

俺、腕が疲れちゃいましたよぉ!」


魔法陣の真ん中には白いマントを纏った男がいた。


「だめだ、あと100人。

こんなものではあの方の足の対価には遠く及ばん。」


「…へえ、ジャックの野郎が捕まったってのに

なんで俺たちは追剥じゃなくてこんな雑事をしないといけないんですか?」


「それが指令だからだ。

私の体を犠牲にオルトロス様を呼ぶことができる…。」


そう言って、ザザンは大粒の涙をボロボロと流す。


「…ああ!なんて幸せ!

人生の意義ぞ!命とは捧ぐためにあったのだ!!!」


「でも、もうすぐこいつらの体が腐り始めますよ?

エルドラドの犬どもがやってくるんじゃあ?」


「そうなれば私が全員殺す。

無駄口はやめたまえ。」


「………」


盗賊は釈然としない顔をしながら、

黙々と首を切って並べる。


夜が明けていった。


朝日が射し、血塗れのザザンを照らす。


「…始めよ。う」


そう言ってザザンは、ナイフで自分の顔の皮を剝ぐ。


まるで痛みがないかのように、顔の筋肉まで引きちぎる。


途切れ途切れに、呪文を叫ぶ。


朝日は途切れ、黒い霧が周辺を覆い始めた。


…ゆっくりと、ザザンが変わっていく。


血に塗れた両の手が、黒い肉塊に変化していって、

皮の剥がれた顔から、ゆっくりと多くの目が生えていく。


盗賊たちは、戦々恐々とその変化を見守っていた。


「お”ぐ”!!!あ”う”が”あ”あ”あ”aaaaaaaaaa!!!!!!」


首の骨が変形していき、体全体が歪に反る。


「aaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!」


背中から翼が生えて、足がヤギのような形に歪んでいく。


全身から触手が生え始め、口からは腐臭が漂い始める。


裂けた口は鎖骨まで達し、もはや人の原形はとどめてなかった。


「…これが神様だってのか!?」


盗賊たちは皆口をふさいで、後ずさる。


翼を羽ばたかせ、『オルトロスの足』はどこかへと飛び去って行った。


「…3箇所。あと3箇所で同じことが起こってんのか…?」


…同刻、エルドラド皇国の中枢は混乱に陥っていた。


「何が起きている!?

いきなり4つの城からの連絡が途絶えたのだぞ!」


「いいからまずは、確認の使者を送るべきではないかね!?

詳しいことが分からなければ、対策の立てようがなかろう!」


「強大な魔物だったらどうする!?

情報を持ち帰れなければ無駄な被害になってしまうだろうが!

前代未聞の事態なのだ、ここは慎重に…!」


があん!と激しい音を立て、会議室の扉が開く。


「きゅっ、急報です!」


伝達兵が顔を真っ青にしながら駆け込んだ。


「何だ!言え!」


大臣が叫ぶ。


「北、西、南より反乱軍が決起!

いずれも数十体の異形を引き連れており、

その全てがガーベラ様の旗を掲げています!」


「!?ガーベラ様だと!

あのお方が何故今になって!?」


「各国からの来賓も呼んでいるというのに!

今までの繁栄が泡に帰ってしまう…何をお考えなのですか!?」


「ええい!どうせ栄誉に目が眩んだのだ!

初めから、目の上のたんこぶ!今こそ打ち滅ぼす時だ!」


「だが、あの方は皇子であらせられるぞ!

それに建国祭は明日に迫っている!どうすればいいのだ!?」


混乱が加速する。


「…静まれ。」


アッシュのその一声で、混乱は消えた。


「…問題はない。

建国祭は当初の予定のまま、開く。

西にはシュバルツに対する使いを放っている。

そやつらに任せれば問題はあるまい。

北には、サタナエルがいる。

12騎士団第1席『世界』を持つ男だ。

加えて、12席『大地創生』ユーシェもいる。

この二人であれば、何も心配はいらない。

南だが…。」


「それでしたら大丈夫です。父上。

どうか安心なさってください。」


レドールが前に出る。


「…レドールよ、それはどういう事だ?」


「はっ。私は、12騎士団第10席『光の戦乙女』ブリュンヒルデに依頼をしました。

反乱軍が南より出てきた場合、それの掃討を頼む、と。」


「…なるほど。了承を得たと言う事だな。対価は何だと?」


「…いえ、不要であると。」


「…まあいい。

あとで確認すれば大丈夫だろう。

…そこの伝令兵、もう1つの報せは?」


「…!はい!数日前より魔族が王都に侵入した、との報せが入っております!」


「何だと!ガーベラの僕か!そのような卑劣な手を使うとは…!

エルドラド皇国皇子の誇りは何処に行ったというのだ!」


アッシュは考え込む。


(やれやれ…対処しなきゃいかん事が多い…。

まったく…、インディゴの馬鹿は何処にいるんだ?)


そのころインディゴは…


「…よう、久しぶりだな!」


エルドラド皇国地下街で、妖酔の影と相対していた。


2人の目の前には、地下へと続く扉がある。


「お前も長に会いに行くところか?」


「・・・・・・。」


「黙りこくって如何したんだ!

あんなに吠えてた威勢は消えたのか?」


「・・・・うるさい!」


そう言って妖酔の影はインディゴに飛びかかった。


だが、拳が触れる寸前で声が響く。


「そこまでだ。妖酔の影よ。」


見れば地下の扉から、嘴掌の影とマーフィスが出てきていた。


後ろに長い黒の髪を垂らした絶世の美男子が出てくる。


桜の模様の和服を纏っており、醸し出す雰囲気はさながら精霊の様だ。


「…お前に何があったかは知らん。」


男は切り出す。


妖酔の影は、親におびえる幼子のように震えていた。


「…話してもらうぞ。」


そう言い切って、男はインディゴの方を向く。


「うちの者が失礼をした。

俺は『桜墨の影』、お前たちの言う長だ。」


「そうか、初めまして。

私は魔王インディゴだ。

…お前とガーベラがした契約について話がある。」


「ああ、こんな状況だ。

包み隠さず話そう。

それで連れの方は…。」


「…べオか。あいつは…。」


べオは戦っていた。


王都からそう離れていない草原で、

両手に火を纏っている。


べオの全身はボロボロで、槍でえぐられた場所がいくつもある。

回復魔法を全身に重ね掛けして、無理やり戦っている。


「ん~よくなったぞ!少年!」


べオの前には、旗の付いた槍を持つ甲冑の女騎士が一人。



「改めて自己紹介をしようか!

わたしはたぶん6、70年前に死んだ勇者!マール=ジェリカだ!」


「…だったら何でここにいるんですか?

それも神の味方をして!」


「さあな!ただそうしろ、と言われたからだ!

すでに死んだ身!

誰がそうしたかを知りたければ、私を倒して見せろ!」


べオはインディゴに言った。


ここは任せてください!、と。


どんな強敵が相手でも、譲れないものはある。

芽生えた誇りで、インディゴを王都へと逃がしたのだ。


「…かかってこい!僕があの世に送り返してやる!」


「いいぞ!その目だ!決意に溢れたその瞳で!

私を殺して見せろ!今の勇者よ!」


「…僕が勇者!?」


「ああそうだ!その力、そしてその体は人間だろう?

だったらば、お前はもう立派な勇者だ。」


「・・・・・。」


「…プライベートな問題だったか!すまん!では行くぞ!」


マール=ジェリカは槍を構えて突撃する。


「・・・・・」


刹那、べオは槍を見切る。


拳で槍をつかみ、折る。


「…!」


そのままべオはがら空きの胴に拳を放った。


「…ぐがっ!素晴らしい!」


そう言ってマール=ジェリカは地面に倒れこむ。


マール=ジェリカの体はゆっくりと灰になって、消えようとしていた。


「ふはは!聞きたいことがあれば、さっさと聞き給え!

時間はないぞ!」


「…あなたのほかにも蘇生された人がいるのですか?」


「ああ!4人いるな!

多分私は3番目に強いぞ!

だがこの体が脆すぎるせいで、負けてしまったのだ!」


「…あなたたちを蘇生したのは誰ですか?」


「ガーベラとかいう爺だな!

偉ぶりおって!この手が自由に動くなら殴り倒していたぞ!」


下半身が消える。灰になる速度が加速していった。


「もう終わりか!あと一つぐらいなら答えられるぞ!」


「…あなたから見て僕は何ですか?」


そう言ってべオは角を露にする。


「…!混血か!初めて見た!

普通、魔族と人は交われないはずだが…?

…素晴らしい事だな!

どっちの力も使えるのだろう!

言うならば、もっと魔族の再生力を活かした体の鍛え方を……」


叫ぶようにしゃべる途中で、マール=ジェリカは灰になった。


べオはしばらく考え込んだ後、俯いて歩き出す。


…王都に帰るのだ。

インディゴに報告しなければ…。


だが、べオはそこで異常に気付く。

光が消えた。黒い霧が周囲を包む。


オルトロスだ。べオは警戒をするが、間に合わない。

そして巨大な口が迫ってきた。


飲み込まれる。べオはゆっくりと落ちていく。


自分が消えていく。魂の感覚が朧げになっていく。


業火が見えた。地獄だろうか?

べオは思い出す。オルトロスには地獄の悪魔の側面もあると。

…だが、もう無意味だろう。べオはゆっくりと眠りに落ちていく。


霧が晴れた後には何もなかった。

ただ、日が射している。


建国祭まで、残り19時間。














































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