表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王転生~勇者を求めて、魔王は旅をする~  作者: 壱田一
第1章 黄金繁栄帝国/エルドラド
16/53

第1章第7話 神は、人は、魔王は、勇者は、何を思う?

アッシュの前にレドールは跪く。


「父上、ただいま戻りました。」


「うむ、クレマンの事は聞いたぞ。

…残念だったな。彼は優秀な騎士だった。」


「はい。私も深く思います。

ですが…それに勝るとも劣らないものが

一つ手に入りました。」


そう言って、レドールは腕章で包んだものを取り出した。


それは蠢く赤黒い肉塊だった。


「何だ?それは。」


「…おそらく血の神オルトロスの一部ではないかと。

異形化した蛭に入っておりました。

おそらくこれで操られていたのでしょうか。

これを精査すれば、一歩黒幕へと近づけるかと。」


「…よくやった。

何か1つ褒美を遣わそう。

何がいい?」


「…であれば、

あの兵士の処遇を私が決めてよろしいでしょうか?」


「50年前の人間か…。

分かった。良きに計らえ。」


「有難く。」


そうしてレドールは部屋を出る。


大広間を歩くと、あちらこちらに飾り付けがなされている。


気付けば、建国祭まで1週間だ。


レドールは病棟のドアを開ける。


「やあべオ君!元気かい?」


ベッドには包帯でぐるぐる巻きにされて

寝かされたべオがいた。


魔術医師がレドールに駆け寄る。


「べオ様に異常はありません。

ですが…魔力が常に溢れているのです!

原因が分からないので、ひとまず耐魔力用の包帯で押さえていますが…。」


「なら大丈夫。

多分魔法に関係しているのだろうね。

先生に頼むよ。」


「おお、ゴッフェ殿ですか!

『賢者』であれば確かに…。」


レドールは、べオを巻いていた包帯を破り、

立たせる。


「べオ君…釣りに行こう!」


「…何で?」


そして現在に戻る。


「うもががが!!」


兵士は暴れるが、糸を解くことはできない。


「…同情することもできるけど、

べオ君を刺したのは許してないから。」


「だからって、なぜ釣りの餌に…?」


「何故って…来たっ!」


気付けば兵士の姿がない。


釣り糸の先は水の中だ。


「…うわあああああ!

あの人がくっ、食われた!?」


ビンっと釣り竿が張り、

引っ張られ始める。


「ッ大物だな!

安心してくれ、この魚に牙はない!」


「そこじゃないよ!」


レドールの足が地面に沈み始める。


糸はだんだんと水の中へと引っ張られ始めた。


「僕も手伝う!」


そう言ってべオはレドールの腰をつかみ、

全力で陸の方へと引っ張る。


「「うおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」


思いっきり糸がしなり、

その魚が姿を現した。


5mはあるだろうか。


見た目としてはアンコウに近い。


陸にあげられ、びちびちと

暴れた後動かなくなった。


「あの兵士さんは…。」


レドールはつかつかと歩み寄り

腹をナイフで捌く。


そこには、胃の中にぎゅうぎゅうに押し込まれた兵士がいた。


「新しい…快感…でした…。」


「そうか。」


そう言ってレドールは1枚の紙をを兵士に渡した。


「これは…?」


「エルドラドの最新版の住民票だ。

戦はもう終わった。

後は家族のもとへ帰るがいい。」


「なんと…もう、家族とは会えないとばかり…ありがとうございますっ!」


涙を流しながら、兵士は町の方へと走っていった。


「…よし。

これで終わりだ。

さあ、あとは全力で釣りをしよう!

べオ君!…」


レドールが振り向くと、べオは消えていた。


「…あれ?」


       ・


べオは影の中にいた。

ドラウに抱えられながら移動している。


「すみません。

急ぎの用でしてな

インディゴ様がお呼びです。」


そう言うとドラウはさらに加速した。


影の世界はとにかく暗かった。


明かりはなく、黒々とした

光景が広がっている。


その中をドラウは、泳ぐようにして移動していた。


「む、あそこが出口です。」


ドラウが指さした方を見ると、

明かりが見える。


「…げほっごほっ…。」


地上に出たべオは咳き込む。


影の世界の空気は地上の何倍も薄いからだ。


「べオ、お疲れさん…ってどうした!?その目は?!」


インディゴが駆け寄る。


「…これは…。」


べオは今までの経緯を話した。


「…ほおん、そんなのがいるとはな。

多分その蛭もスカーレットらの仕業だろう。

それで、こっちには…。」


インディゴもべオを呼んだ用を話す。


「という訳でな、もう時間がない。

ドラウに頼っても三日はかかる。

だからさっさと行かなければならんのだ。」


がじり、とべオの尻を噛む者がいる。


「いたっ!」


それは狼だった。

まだ子供だが、銀の毛並みが美しい。


「お前…シュバルツの使いか?」


首を撫でながらインディゴは聞く。


「師匠…狼は喋れないはずじゃ。」


「その先入感、磔に値する。」


狼は喋った。

それも渋い声で。


「ぐふふ、べオよ

魔王はルール無用だぞ。

ちょっとエルドラドに馴染みすぎたか?」


「えええ…そうなんですか?」


「ああ、我らの主が貴様らを呼んでいる。」


狼は遠吠えをする。


すると、2匹の黒い巨大な狼が現れた。


「彼らに乗るといい。

二日で着けるだろう。」


そう言うと銀の狼はドラウに話しかけた。


「影の魔族よ、我をエルドラドへと連れていけ。」


「インディゴ様の許可がいる。」


「いいぞ、運んでやれ。」


「では行きましょう!狼様…。」


「ゼファーだ。

ゼファーと呼べ。」


「ゼファー様。」


「よろしい。」


その言葉を残して、

二人(一人と一匹)は影に潜っていった。


「じゃあ私らも行くか。」


インディゴは軽やかに黒狼に跨る。


「振り落とされたりはしませんでしょうか…。」


べオも何とか、毛をつかんで乗りあがった。


その言葉が聞こえたのか、

黒狼はべオに尻尾をべちべち、と当てる


「わかった、わかったから!

頼るよ!信頼するよ!」


べオは黒狼の頭を撫でる。


黒狼は満足そうに喉を鳴らした。


「では、行くぞ!」


その言葉を皮切りに、二匹の黒狼は雷のような速度で駆けだす。


二人とも喋る余裕もなく、

しがみついてるだけで精いっぱいであった。


その日の夜。


2匹の黒狼は、捕まえた獲物を裂いている。


インディゴとべオは何も言わずスープを作っていた。


インディゴは暗い顔で何かを考えている。


静かな空気の中、インディゴがよそったスープを

べオは受け取った。


かじかんだ手に、スープの温かさが染みわたる。


「なあ…べオよ。」


食事もぼちぼちに、インディゴは話す。


「お前に力を与えたものが何か、

ずっと考えていたのだが…

…おそらく神だろう。」


「え…神様?

オルトロスのような…?」


「ある意味そうだが、おそらく違う。

…べオ、お前が見たのは西の炎神だ。

覚えているか?私の回復魔法の詠唱を。」


「…『偉大なる南の女神よ。

どうか其の水瓶をもって

生けるもの全てを包み給え。

ヒーリング・ランク1…』…!南の女神!」


「そうだ。私の時代は四大女神式が主流だった。

だが、神の争いに敗れたんだろう。

その残骸がお前に力を与えたんだと思う…。」


「…では良い知らせではないのですか?

なぜそこまで暗い顔を…。」


「…べオよ、お前は勇者と魔王になる条件を知っているか?」


「いえ…知りませんが…。」


「…神は死ぬ。だが権能までは死なない。

神が死に、その権能は次の宿り先を探す。

…つまり、神の能力を宿した人間か魔族が、

勇者と魔王になるのだ。」


「じゃあ、僕はどっちになるんですか?」


「べオよ、お前は混血だ。

どうなるかなど誰にも分からん。

…だが基本的に、

勇者だろうと魔王だろうと

皆、後悔しながら死んでゆく。

…だから私とアンバーは特別なのだ。」


「…それは何でですか?」


「…私の能力は運命魔法ではない。

あれは副次的なものだ。

本当の能力は…『輪廻転生』。

死んで生まれて、それを繰り返し続ける。

そして、アンバーは『不滅』。

永遠に死ぬことはないし、老いることもない。

…私は数万、アンバーは数千年以上は生きているのだ。」


「な…。」


「マクフィーンは、欲を媒介に精霊を従える。

シュバルツは、能力の代わりに両目を失った。

…スカーレットはオルトロスに能力を貰ったのだろうな。

オルトロスは地獄の悪魔でもある。

神よりも悪魔に近い存在として、力を振りまいているのだろう。

…地獄は天国よりも、人に近いからな。」


「…それなら、僕はどんな能力になるんでしょう?」


「さあな…話はここまでだ。

もう寝よう、明日は早いぞ。」


そう言ってインディゴは毛布に潜りこむ。


「…おやすみなさい。」


「ああ、おやすみ。」


べオも、もやもやとしたものを抱えて毛布に潜る。


(…僕は何になってしまうんだろう…。)


そんなことを思いながら、ゆっくりと眠りに落ちていった。


翌日。


今日も黒狼に乗って走る。


しだいに、二匹が目指している場所が見えてきた。


塔の残骸だ。


広大な草原にポツンとあるそれは、どこか寂しそうに見えた。


「「!」」


突然、二匹は止まる。


べオは、つんのめって前へと投げ出された。


「おっと、大丈夫か?」


べオの前に手が出される。


「はい、ありがとうございます…。」


手を取ってべオは立ち上がる。


目の前にいたのは、両目をえぐりだされた男だった。


全身に粗末な鎧を着ており、狼の皮のマントを羽織っている。


「よう!久しぶりだなシュバルツ!」


「ああ、久しいなインディゴ。

声は幼くなったが、中身は変わらないと”見える”。」


「ジョークか?」


「少しな。」


「ははははっ!私は好きだぞ!」


周りに狼が集まってくる。


「では、ようこそ。

我が家へ。インディゴ、べオよ。」


…インディゴたちは塔の中へと入っていく。

それを遠くから見つめる姿があった。


「…いたわ。

インディゴ…よくも平気でいられるわね、盗人め…!」


そう呟き、草原の中に消える。

少女の目は、憎しみで満ちていた。



















































評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ