第3章 2泊3日の修学旅行(3日目)
修学旅行最終日の10時。ボーリングの決勝戦で大変盛り上がっている。
「ドラン、あたしたちのチームが優勝したら、夕食代おごってや」
ブルーンは緑のボーリングの球を持っている。
「あぁええよ」
ドランは両手を腰にあてた。
決勝戦が始まった!
最初にソーマが球を転がした。
8点獲得。良い出だしだ。
次、22組のパッションが、情熱の赤い球を使った。
ストライクだ。まだ2点差だから大丈夫と思っていた。
しかし、だんだん点数が10点……15点……と離れていく。
今までに一度もこんなに点数が離れた経験がない。
だから、3チームは相当悔しいのだ。
「次、あたしにやらして」
ブルーンは3チームに聞こえるように言いながらボールを転がすと、結果は7点だった。
……点数がヤバイ。
ブルーンは拳を握りしめて「ちょっとお、コバルト、やってよー」と私を押し出して「はいはい……」と私は苦笑いしながら球を転がした。
8点だった。私としたことが……
「ああーもう嫌!委員長やって!」
私はエナメルに向かって叫んだ。
仕方がないなと思っているのか、嫌そうに転がす。
頼んで良かったのかな?と私は不安に思った。
さあどうだ!?
……おっ、キター!ストライク!
3チームはテンションが上がり、出番が来るたびに、ストライクの連続が続いた。
反対に15チームは5点など、成績が落ちていた。これなら勝てそうだ。
いよいよ、最後の1球となった。
投手はアンガレッジだ。
「イケーッ、副委員長!」
27組のみんなは気合満点で応援した。
青い球は手から素早く離れた。
カーブが本当に上手に曲がっている。
よって、今回もストライクで3チームは92点で終了した。
15チームは8点で、合計88点で終わった。
「さて、決勝戦が終了しました。優勝は、3チームです!」
エナメルが喜びながら発表した。
パーンと、3チーム以外のチーム全員がクラッカーの糸を引き、キラキラ光る紙吹雪が空気中に飛び交う。
そして、3チームには金色のボーリング型のメダルを獲得した。
「これで、1年の修学旅行を終わりまーす!」
エナメルはバンザイした。
最後に盛大な拍手で、修学旅行の幕を閉じた。
「ドラン、今日の夕食代おごってや」
マラナが喜んで言った。
「畜生、めっちゃ悔しい!」
ドランは地面を見つめる。
「でも、あと少しやったやんな」
スキーバが腕を組んだ。
「じゃあ、18時にパープルミオンに集合ね」リートの目が輝いた横で「パープルミオンって何?」と私は首をかしげた。
「パスタ屋よ。ドリンクバーがあって、とっても美味しいの」
リートはますます興奮した。
「賛成!」
ドラン以外の1年の演劇部員はジャンプした。
「高いのんは無しだぞ!」
ドランは私たちを軽くにらんだ。
18時、1年の演劇部員がパープルミオンに集まった。
メニューを見ると、パスタがゾロゾロと並んでいるようにたくさんある。
見るからには美味しそうだが、値段が高校生にしては高い。
私が狙っているカルボナーラは700円もする。
さらに、ドリンクバーも頼みたいから、合わせて800円になる。とんでもない。
「んー、高いなあ。なあ、リート、なぜここを選んだ?」
マラナはメニュー表をめくっていく。
「ここは人気がある店よ。よく見てごらん、お客さんがいっぱいいるでしょ」
リートは机にひじをついた。
「うん……確かに」
ケイトは辺りを見渡した。
ブルーンが顔を上げて、
「みんな、カルボナーラとドリンクバーを頼むで」
と声を上げた。
いいよーと私たちは返事をした。
10分後、カルボナーラがテーブルの上に8皿並んだ。
量が多くて、麺はコシがある。これなら700円でも価値があると思う。
食べる前に私は料金表を見た。8人もいるから、6400円かかっている。
これをドランが現金で払うなんて勇気があるなと思った。
「美味しい!さすがリート」
キャリンはパスタをスルスルと口の中に入る。
「でしょ。ここに何回も来たことがあるからね、友達と」
リートはちょっとニヤっとした。
「すげぇなあ、お前。俺は初めて来たで」
スキーバがソーダを飲む。
「高いだけのことはあるなあ」
ドランはフォークをいじる。
「またここに来たいなあ」
私はワクワクした。
「お母さんに勧めようかな」
ブルーンはもう食べ終わってしまい、満足している。
「あぁ、お腹いっぱい」
私たちは完食し、席を立った。
ここから、ドランが会計をするので、どのような表情をするのかが楽しみだ。
レジの人は料金表に載っているバーコードを機械で読み取り、小さめのモニターに6400円の文字が現れた。
ドランは急に真っ青な顔をした。そんな金ねぇし!と思っているに違いない。
ドラン以外の1年の演劇部員はクスクス笑ってしまった。
マラナが笑い始めて、あとの6人は笑いにつられてしまったのだ。
ドランは財布のカード入れから青いクレジットカードを取り出した。
店員がそれを受け取り、カードをスキャンさせると、緑のレシートが出てきた。
私たちはまだ高1なのにクレジットカードを持っていることに驚いた。
ドランはますます真っ青になった。
私たちは笑うのを止め、様子をうかがった。
彼は、とうとう冷や汗をかいてしまった。
どういうことなのか?クレジットカードを出したって、そんな表情なんて普通はしない。
私はとうとう気になってしまい、
「ちょっと、どうしたん?真っ青な顔をして……」
と顔をのぞき込んだ。
「このことは、誰にも言うなよ」
「えっ?」
ドランの周りに1年の演劇部員が集まった。
「これは、俺のお父さんのクレジットカードなんだ……」
「……」
私たちは続きの言葉が出なかった。
「……そんなん言うんだったら、最初から調子に乗って夕食代おごったるなんて言わなかったら、そんなことは起こらなかったのよ!」
沈黙の中、責任感のあるマラナが言葉を発した。
「お前が先に言ったんだろ!」
ドランは半泣きだ。
「でもさあ、そこで、NO!って言えば良かったでしょうが!」
マラナが声を張った。
私はこのケンカにイライラして、
「もうわかったから、ケンカはこれ以上しないで!」
と言った。
「……ゴメン、ドラン、あたしが悪かった」
「……」
謝るマラナの言葉を耳にしたドランはうつむいた。
「早く言えば、責任を持てよって言いたかったんだよ」スキーバがドランの背中をたたくと「ちょーお前、痛いなあ。でも、これから気をつけるわ」と彼は機嫌を取り戻した。
ケイトは「お父さんに怒られても知らんで」と笑った。
最終的には8人とも爆笑した。
ドランの機嫌が戻って良かった!