表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/14

第3章 2泊3日の修学旅行(3日目)

 修学旅行最終日の10時。ボーリングの決勝戦で大変盛り上がっている。


「ドラン、あたしたちのチームが優勝したら、夕食代おごってや」


 ブルーンは緑のボーリングの球を持っている。


「あぁええよ」


 ドランは両手を腰にあてた。



 決勝戦が始まった!


 最初にソーマが球を転がした。


 8点獲得。良い出だしだ。


 次、22組のパッションが、情熱の赤い球を使った。


 ストライクだ。まだ2点差だから大丈夫と思っていた。


 しかし、だんだん点数が10点……15点……と離れていく。


 今までに一度もこんなに点数が離れた経験がない。


 だから、3チームは相当悔しいのだ。


「次、あたしにやらして」


 ブルーンは3チームに聞こえるように言いながらボールを転がすと、結果は7点だった。


 ……点数がヤバイ。


 ブルーンは拳を握りしめて「ちょっとお、コバルト、やってよー」と私を押し出して「はいはい……」と私は苦笑いしながら球を転がした。


 8点だった。私としたことが……


「ああーもう嫌!委員長やって!」


 私はエナメルに向かって叫んだ。


 仕方がないなと思っているのか、嫌そうに転がす。


 頼んで良かったのかな?と私は不安に思った。


 さあどうだ!?


 ……おっ、キター!ストライク!


 3チームはテンションが上がり、出番が来るたびに、ストライクの連続が続いた。


 反対に15チームは5点など、成績が落ちていた。これなら勝てそうだ。



 いよいよ、最後の1球となった。


 投手はアンガレッジだ。


「イケーッ、副委員長!」


 27組のみんなは気合満点で応援した。


 青い球は手から素早く離れた。


 カーブが本当に上手に曲がっている。


 よって、今回もストライクで3チームは92点で終了した。


 15チームは8点で、合計88点で終わった。



「さて、決勝戦が終了しました。優勝は、3チームです!」


 エナメルが喜びながら発表した。


 パーンと、3チーム以外のチーム全員がクラッカーの糸を引き、キラキラ光る紙吹雪が空気中に飛び交う。


 そして、3チームには金色のボーリング型のメダルを獲得した。


「これで、1年の修学旅行を終わりまーす!」


 エナメルはバンザイした。


 最後に盛大な拍手で、修学旅行の幕を閉じた。



「ドラン、今日の夕食代おごってや」


 マラナが喜んで言った。


「畜生、めっちゃ悔しい!」


 ドランは地面を見つめる。


「でも、あと少しやったやんな」


 スキーバが腕を組んだ。


「じゃあ、18時にパープルミオンに集合ね」リートの目が輝いた横で「パープルミオンって何?」と私は首をかしげた。


「パスタ屋よ。ドリンクバーがあって、とっても美味しいの」


 リートはますます興奮した。


「賛成!」


 ドラン以外の1年の演劇部員はジャンプした。


「高いのんは無しだぞ!」


 ドランは私たちを軽くにらんだ。



 18時、1年の演劇部員がパープルミオンに集まった。


 メニューを見ると、パスタがゾロゾロと並んでいるようにたくさんある。


 見るからには美味しそうだが、値段が高校生にしては高い。


 私が狙っているカルボナーラは700円もする。


 さらに、ドリンクバーも頼みたいから、合わせて800円になる。とんでもない。


「んー、高いなあ。なあ、リート、なぜここを選んだ?」


 マラナはメニュー表をめくっていく。


「ここは人気がある店よ。よく見てごらん、お客さんがいっぱいいるでしょ」


 リートは机にひじをついた。


「うん……確かに」


 ケイトは辺りを見渡した。


 ブルーンが顔を上げて、

「みんな、カルボナーラとドリンクバーを頼むで」

 と声を上げた。

 

 いいよーと私たちは返事をした。



 10分後、カルボナーラがテーブルの上に8皿並んだ。


 量が多くて、麺はコシがある。これなら700円でも価値があると思う。


 食べる前に私は料金表を見た。8人もいるから、6400円かかっている。


 これをドランが現金で払うなんて勇気があるなと思った。


「美味しい!さすがリート」


 キャリンはパスタをスルスルと口の中に入る。


「でしょ。ここに何回も来たことがあるからね、友達と」


 リートはちょっとニヤっとした。


「すげぇなあ、お前。俺は初めて来たで」


 スキーバがソーダを飲む。


「高いだけのことはあるなあ」


 ドランはフォークをいじる。


「またここに来たいなあ」


 私はワクワクした。


「お母さんに勧めようかな」


 ブルーンはもう食べ終わってしまい、満足している。



「あぁ、お腹いっぱい」


 私たちは完食し、席を立った。


 ここから、ドランが会計をするので、どのような表情をするのかが楽しみだ。


 レジの人は料金表に載っているバーコードを機械で読み取り、小さめのモニターに6400円の文字が現れた。


 ドランは急に真っ青な顔をした。そんな金ねぇし!と思っているに違いない。


 ドラン以外の1年の演劇部員はクスクス笑ってしまった。


 マラナが笑い始めて、あとの6人は笑いにつられてしまったのだ。


 ドランは財布のカード入れから青いクレジットカードを取り出した。


 店員がそれを受け取り、カードをスキャンさせると、緑のレシートが出てきた。


 私たちはまだ高1なのにクレジットカードを持っていることに驚いた。


 ドランはますます真っ青になった。


 私たちは笑うのを止め、様子をうかがった。


 彼は、とうとう冷や汗をかいてしまった。


 どういうことなのか?クレジットカードを出したって、そんな表情なんて普通はしない。


 私はとうとう気になってしまい、

「ちょっと、どうしたん?真っ青な顔をして……」

 と顔をのぞき込んだ。


「このことは、誰にも言うなよ」


「えっ?」


 ドランの周りに1年の演劇部員が集まった。


「これは、俺のお父さんのクレジットカードなんだ……」


「……」


 私たちは続きの言葉が出なかった。


「……そんなん言うんだったら、最初から調子に乗って夕食代おごったるなんて言わなかったら、そんなことは起こらなかったのよ!」


 沈黙の中、責任感のあるマラナが言葉を発した。


「お前が先に言ったんだろ!」


 ドランは半泣きだ。


「でもさあ、そこで、NO!って言えば良かったでしょうが!」


 マラナが声を張った。


 私はこのケンカにイライラして、

「もうわかったから、ケンカはこれ以上しないで!」

 と言った。


「……ゴメン、ドラン、あたしが悪かった」


「……」


 謝るマラナの言葉を耳にしたドランはうつむいた。


「早く言えば、責任を持てよって言いたかったんだよ」スキーバがドランの背中をたたくと「ちょーお前、痛いなあ。でも、これから気をつけるわ」と彼は機嫌を取り戻した。


 ケイトは「お父さんに怒られても知らんで」と笑った。


 最終的には8人とも爆笑した。


 ドランの機嫌が戻って良かった!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ