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第3章 2泊3日の修学旅行(前日)

 5月の末。イオナル先生が朝のSHRで、私たちにとってビックリする情報を言う。


 その前に

「おはようございます」

 と頭を下げて挨拶した。


 挨拶をするのはいつものことだ。


 でも、次の言葉が問題……と言うより、異常と言っても良いだろう。


「えっと、今日の連絡は、急で悪いが、明日、修学旅行でポーカーリズムと言うところまで行くことになった」


 ごく普通の顔をしていて、教卓で突っ立っていた。


 呆気にとられて言葉に出なかった。


 先生は何か書かれている紙を教卓の上に置いて、黙って教室を去った。


「ちょー、なんでアイツ、先に言ってくれへんかったん?」


 ナノ・メインが怒鳴って、机をバンとたたいて席を立った。


 まさか、ナノが先生のことを「アイツ」と言うとは……私はそのことが信じられないのだ。


 だから、

「ナノ、それはいくら何でも言いすぎじゃない?」

 と、ナノの顔を見る。


「何でなの?あの人、急に言ってきたんよぉ!こっちの気持ちも考えてよ!」


 ……もういい、これ以上ナノと付き合ってたらキリがない!と私は思った。


 そこで、私が思いついたのが、エナメル委員長に助けを求めること。それ以外は考えられない。


 だって、自分でやろうとしても、私の言うことなんて聞いてくれない。


 でも、委員長だったら40人のリーダーだから、みんなは注目してくれる!


 私はその気持ちを込めて言葉を放った。


「委員長、何とかしてー」


 委員長は前に出てきて、みんな聞いてーと言った。


 みんなは委員長の方を向いた。


「これから、修学旅行の班を決めよう。1班4人ずつな」


 エナメルは大きい声で言った。


 その響きで、ナノはさっきの怒りはどこかに飛ばされた。


 私たちは席を立って、友達のいるところへ向かって、騒ぎ始めた。


「なあ、ブルーン、コバルト、ケイト、一緒のグループになる?」キャリンが3人を指すと「うん、せやな」とブルーンが微笑んだ。


「決まったから委員長に報告しよー。……でも、誰が言うん?」


 ケイトは落ち着いている。


「うち、絶対嫌や。面倒じゃん」


 キャリンが唇を前に突き出して、そっぽを向いた。


「そんなんで面倒がらんでもいいやん。もうわかった、こんな馬鹿な時間をかけたくないから、私が報告する」


 私は呆れながら、委員長に

「えっと、私んとこは、自分と、バイオレット、ジェルン、レーベの4人で」

 と言った。


 委員長は汚い字で、班分けの紙にカリカリ書いた。


 ここまでで、15秒もかからなかった。だから、私の友達のところに戻ってから、

「ほらぁ、キャリン、そんなに時間経ってないやろ?思わない?」

 と目をガッと開けて強調した。


 キャリンは少しうつむいて何も口にしなかった。


「……ゴメン、キャリン、私が悪かった。許して」

 と慌てて言うとキャリンはにっこりし、私はホッとした。



 あれから10分経過。もう、10個の班分けは終ったみたいだ。


「委員長、ポーカーリズムってどこなん?」足を組んでいるジャンクリン・ギンガムが呆然とした顔で言うと「こっから50キロ離れたところにあるらしい」と委員長は15分前に先生が置いてあった紙を見た。


 そう、先生が置いていった紙は何か思ったら、修学旅行について書かれていたのだ。


 私の席は前から5番目だからよくわからないけど、文字はそんなに細かく書かれていないようだ。


 だから先生は、後はお前らでやれよ、と言いたかったのでは?と思った。


「あと、3日間そこで過ごすねんって。ちなみに、ポーカーリズムは建物の名前やで」


 委員長は話を続けた。


 なんやそれ、地名かと思った、という雰囲気が漂った。


「要るもんは、バスタオル、水筒、ハンカチ、ティッシュ、着替えな。服装は自由。と言うことで、明日、気を取り直してENJOYしようぜ!」


 委員会は親指をグッと突き出した。


「イェーイ!」


 クラス中は盛り上がった。


 クラス内のテンションはMAXまで達している。


 たった委員長の、あの一言でハイテンションになるなんて偉大すぎる!さすがムードメーカーだ!



 放課後、演劇部に入部した私たちは、舞台室に向かった。


「こんにちはー」

 とドアを開けながら入室した。


 その声を聞いたキャンベン先輩が私たちのところに駆けつけた。


「こんにちは。劇部に入部してくれたんやね、ありがとー。でも、今日はごめんだけど、明日、修学旅行だから特に活動はないんだ」

 と感じよく言った。


「えっ、先輩も明日、修学旅行なんですか?」


 キャリンは驚いた。


「うん、そうよ。こっちは3泊4日やねんよ」


「どこに行くんですか?」ケイトが尋ねると「あたしんとこは、グレードミスリルという、テニス場に行くねん」とキャンベン先輩は答える。


「そうなんですか!こっちも、めっちゃ楽しみになってきました」


 私は、もうワクワクしている。


 ここで、見知らぬ4人組が私たちの近くに来た。


「やあ、君たち、あたしは14組のマラナ・ネスだ。あたしの隣にいる男子は9組のジュード・スキーバ。で、彼の隣にいるのが、22組のマデュラ・ドラン。そいつの隣にいる女の子は、18組のリート・エトランダって言うんやで」


「ちょーネス、何でオレだけそいつって言われなあかんの?」


 早速ドランに呆れられたマラナだが、へこたれずに

「いいやんかぁ、ちょっとくらい。そんなんでキレてはいけません!」

 と力強く言い張った。


「あっ、忘れてた。君らの名前は?」


 マラナに聞かれ、代表として私が順に名前を言った。


「そうか、ヨロシクな。今日は明日の準備をしないといけないから、あたしたちは帰るわ。それでは、また。バイバイ」


 マラナ、リート、スキーバ、ドランは手を振って部室を去った。


「じゃあ、こっちも。バイバーイ」


 私も手を振って下校した。



 16時半、まだまだ太陽は沈む気配なしだ。


「ただいまー」私はガチャッとドアを開けると「おかえりー、姉ちゃん」と私の妹、ミスティが大きく両手をブンブン振っていた。


「ミスティ、今日はどうしたん?めっちゃ機嫌良いやん」


「明日な、修学旅行やねん。やから、準備せなあ」


 ミスティは、ルンルン気分で2階のミスティの部屋に行ってしまった。


 本当に嬉しそうなので、私はにっこりしてうなずき、それから自分の部屋に行った。



 19時、晩御飯が出来た。


 この日の夕食は、私とミスティの1番大好物なペペロンチーノだ。


「明日どこに行くの?」


「ポリス・ギブスと言うところで、バドミントンをするの。楽しみやぁ」


 ミスティは、もう微笑んでいる。


「バドミントンでトーナメント戦やるん?」


「うん。早く行きたい!」


「そうかぁ。私はポーカーリズムに行くねん」


 私はペペロンチーノを口に入れたまま喋った。


「そこで、姉ちゃんは何するん?」


「さあね、そこまで聞いてへんなぁ」


「ってことは、することを知らんまま行くわけぇ?」


 ミスティは、喜びの顔が、驚きの顔に変わった。


「そうやねんなぁ……あの担任(ジジイ)は不親切やから」


「……」


 ミスティは私のイカツイ表情でビックリしすぎたのか、何を言えば良いのか、わからなくなった。


「と言うことで、ごちそうさま」


 私は手を合わせてリビングから離れ、寝る支度をした。



 21時、私はもう寝ようとしたら、メール着信音が聞こえた。


 何だ何だと思い、布団に寝転がってスマートフォンを左手でいじると、委員長から27組のみんなに一斉送信したメールだった。


『集合時間は朝の六時な。言うの忘れてゴメンな』

 という内容だ。


 ビックリした、焦った、明日、遅刻するんちゃうか、でも、委員長がわざわざメールで伝えてくれたから落ち着いたよ。


 と、グシャグシャの複雑な気持ちで、そのまま眠った。


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