スキルチェックは数学ではありません。
9本目です。良ければ見てやってください。
※今回はスキルチェックの舞台裏をご紹介。
大型アプデを控えて残業週間に突入している某ゲーム制作会社のとある部署で今日も元気にデバッグ業務に勤しんでいます。
あ、私?私はなんか知らない内にデバッグサブリーダーになってました。里見彩花です。
前にうちの部署にいた女性上司からコウちゃんと呼ばれそうになったのを拒否したら「あやや」と呼ばれるようになりました。
後、なんか知らないけど姐御と呼ばれてるのは知ってるよ。
で、今日は新人くんこと、森本琉貴くんと一緒にスキルチェックする事になった、が、説明しても理解していないのが丸わかりだった。
頭抱えちゃうよ、仕方ないから援軍にたかしーを呼んだ。
「どうしよう、たかしー、森本くんが理解してないみたい」
「なんだとー?数学じゃないよー大丈夫だよー」
と、アレコレ指示出ししたり指示受けしたりしてたたかしーが森本くんのところへやってきた。
「スキルチェック外してください!」
いやーめんどくさいのは分かるんだけど、そのお願いは聞けないのよね‥‥
「いや、このバフを使って新スキル使ったら威力上がるかどうかってだけだから」
若干引き気味のたかしーだけど、それよりも気になるのは‥‥新スキルの説明文である。
「まだ仮が取れてないし、説明ザックリ‥」
「いつも通り直前にならないとスキル名も説明文も載らないと思うから、仕様書確認してー」
ばっさりと言ったたかしーに、隣の島からごめんね!と聞こえてきたけど、もうこのままでも良い気がする。
「古いスキルと新しいスキル組み合わせて使うっていうのも必要な事だから。組み合わせて使った瞬間、蔵ごと落ちて、ホーム画面とこんにちはなんてよくあるの‥‥ほんとに」
「それはそうですけど‥‥」
でもまだまだ、不満気。さわのんにがっつり頼めば良かった系?とか思いつつたかしーを見れば、無の表情。たかしー、その表情は地味に怖いわ。
「大丈夫、数学じゃなくて、単純な算数だから」
「消費税と一緒だよー100円に8%の税率だといくらー?」
私の出した問題に若干ムッとしながら森本くんが答える。
「それくらいは分かりますよー!108円!」
「「はい、それが分かれば大丈夫」」
たかしーと声揃っちゃったけど、まぁ、ほんと、それが分かれば大丈夫。
「じゃ、よろしく」
たかしーは人気者なので、色々な担当から呼ばれまくってるのです。ボス担当とさわのんがあーどこーだやってるし、ゆらちゃんはゆらちゃんで、新マップの最終確認してるし、なんかね、バグ祭りらしいよ、新マップ。昨日から発狂しそうになってたもん。
「まぁ、バフ掛かってなかったらバグだから、すぐに教えて?」
「‥‥‥はい」
「攻撃のバフは簡単だから。防御系のバフは一瞬考えちゃうけど」
一定時間無効とかはいいけど、若干防御上がる系とか、掛ける前と比べなきゃいけないから地味に面倒なんだけどね。
「あっ、はい」
「じゃ、もっかい説明するよ?この棒人形が居る部屋でまず、バフスキルを使う。次にこの新スキルを棒人形に向かって打つ。最初は3%からスタートね?で、最後10%でも問題なかったら終わり。とりあえずここまで終わったら声を掛けてね。メモできた?」
「はい‥‥」
「電卓使って、ね?とりあえずよろしくー」
まだまだ自信なさ気な森本くんですが、これもデバッグの試練です。
私は私で、弱スキルしか打ってこないHP無尽蔵のNPC相手に防御系新スキルとバフ組み合わせて、ひたすら攻撃を受けまくるって言う地味なお仕事をします。地味にストレス溜まるやつ。
あ、いつだったか、負け続けてね。と言われて、うっかり勝ってしまった事があるのを思い出した。
勝ち続ける方が楽なんだけどね、負け続けなきゃいけないのはホントストレス!
今回の語り部
里見彩花:デバッグサブリーダー。今回は新スキルのチェックを担当&森本くんの指導を担当。
表情が無になっていくたかしーは地味に怖いと思ってる人。
その他の人達
森本流貴:デバッグの新人。スキルチェックが苦手と自覚したばかり。アプデが近くなると上司の表情が段々と無になっていくのが怖いが、話しかければ普通に対応してくれるので、そういうもんか‥と納得したらしい。
高階柊:デバッグ責任者。アプデが近くなると色んな人達から引っ張りだこの人気者になる。段々表情が無になっていくので、周囲から怒ってるわけじゃないから大丈夫だよ!度々フォローされる。
無になっていくのは思考回路に全振りしてるせい。