一番星
デートの帰り道
赤く染まった西の空
カラスが二、三羽、電線にとまっていて
夕日が沈みつつある
あ、一番星
君は嬉しそうに指をさした
秋風に街路樹の木の葉が揺れる
優しい沈黙がふたりを包み込む
たった一粒の砂に全世界の全ての歴史が凝集したような
そんな圧縮された気持ちの真ん中に君がいる
君が示したあの星と
僕らが暮らすこの星を
君と僕とに喩えれば
君は大げさだよと笑う
そうかもしれない
別れ際の信号待ち
ふたりはもう一度空を見上げる
そこにまだ星があることを確認するために
そしてあの星をふたりの心に刻み込むために