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私の安寧

私の安寧

 鍵を開けて、扉を開く。右手側のスイッチを押すと、廊下の電気がついて奥の部屋の闇を際立たせる。その陰の中に人型のシルエットを認めて、思わずため息が漏れた。

 今日も一日、無事に終わった。

「ただいまー」

靴を脱ぎ、廊下を進む。手探りで明かりをつけると、ほのかな明かりが変わらない日常を映し出す。

一人暮らしするのが精々な六畳のワンルーム。家具はベッドが一つ、畳まれたテーブルが壁際に一台、クッションが二つ。ダイニングキッチンがあって、そこには最低限の調理器と二人分の食器が小さな棚に収まっている。

そして、部屋の中央に置かれた椅子に、男の子が一人。背もたれに上半身を預け、少しあいた口からは静かな寝息が漏れている。今朝から特に変わった様子はない。

「……ただいま」

 かなり伸びてきた前髪が目にかかっている。それをそっとどけて、静かな寝顔を見つめる。

 私たちくらいの仲でも、人の顔をこんな近距離で見る機会はなかなかない。けど、ここ最近は毎日のようにこうして彼の顔を見つめることができる。それが、堪らなく嬉しい。私たちのおかれている状況が決して明るくないのはわかっているけど、それでも。

 ずっと、こうしていられればいいのに。

「……一日同じ姿勢で疲れたでしょ。ベッドに移ろっか」

 彼は、かれこれ九時間はここに座っているはずだ。姿勢を変えてあげないと、体に負担がかかってしまう。ベッドに運ぶ為に、椅子から抱え上げる。私の力が足りなくて半ば引きずる格好になってしまうけど、椅子とベッドの距離はさほどない。そっとベッドに横たえてあげた。

 寒くないよう、布団を掛けたところで。

「…………ん」

 彼の瞼が、ゆっくりと持ち上がった。


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