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椿はスミレの道を行く

第十四章までお読みいただいているとわかりやすいと思います。


 私の名前は、竹本椿、カッコカメイ!

 何でカメイかというと、将来アイドルとしてデビューする時に、芸名を付けるからだ。

 なんか、私は椿って名前は嫌いじゃないんだけど、友達皆がアイドルっぽくないって言うから、これは芸名をつけるしかないと思う。

 だって、一番最初のファンである私の友達が言うんだから、ファンを大事にする私としては聞かないわけにはいかないじゃない?

 というわけで、スミレちゃん、あ、スミレちゃんは私のお姉ちゃんね。

 えと、体があんまり強くなくて、病院とお家とを行ったり来たりしている。

 でも、スミレちゃんはすっごく本を読んでいて、すごく頭がいい!

 だから、私の芸名を考えて貰ったら、あっという間に答えが返ってきた。

 私の名前の椿って、木って字と、春っていう字でできてるんだって、それで、木は『こ』って読めるから『はる』と合わせて、『こはる』はどうかなって、考えてくれた。

 すっごく可愛いよね『こはる』!

 私はすぐ気に入って、スミレちゃんにお礼を言ったら、なんかすごく恥ずかしそうにしてた。

 それで、口癖の「自分なんて」ってスミレちゃんは言う。

 自慢のお姉ちゃんなのに、そうやって自分を褒めないところは、スミレちゃんの嫌いなところだ。

 だから、私は考えた。

 私がすっごいアイドルになって、私のお姉ちゃんのスミレちゃんはもっともっとすごいんだぞって!

 みんなに教えればいいんだ!

 私って頭いいかもしれない。


 ああ、そうそう。

 私には可愛い妹もいる。

 名前は奈菜ちゃん、でも、スミレちゃんも、お母さんも、なっちゃんて呼ぶ。

 もちろん私もなっちゃんて呼ぶ。

 おじいちゃんもおばあちゃんも、なっちゃんって呼ぶんだけど、お父さんだけ奈菜って呼ぶ。

 ちょっと変だけど、まあ、お父さんは変わり者だから仕方がないんだ。


 そんななっちゃんは可愛いけど、ちょっと怖がりさんだ。

 いつもお姉ちゃんの私の後について来ていつも私のスカートを掴んでくる。

 だから、私はなっちゃんを守ろうと思ってた。

 スミレちゃんも守らなきゃいけないし、いろいろ大変だけど、スーパーアイドルになる私は、大変だからってあきらめるわけにはいかない。

 ピンチも華麗に乗り越えてこそアイドルなんだ。


 でも、まあ、未来のスーパーアイドルな私にも予想外ってのはある。


 なっちゃんが、三歳になって、私と同じ聖アニエス学院の幼稚舎に通い始めたころから変わり出した。

 私の影に隠れなくなったし、いっぱい話すようになった。

 すぐにそれは、榊原穂乃香ちゃんというクラスの女の子のお陰だってわかった。

 だって、毎日毎日穂乃香ちゃんの話だから!

 あとは、そう、みどりちゃん。

 お母さんのお友達由紀恵さんの子供のみどりちゃんとも、なっちゃんは仲が良くて、同じクラスでよかったって話してたのを覚えてる。

 で、そんななっちゃんは、夏休みにその穂乃香ちゃんとみどりちゃんと、お母さんたちと旅行に行った。

 私も誘って貰ったんだけど、まあ、私はスミレちゃんが入院してたのもあって残ることにしたんだよね。

 でも、それが予想外の結果に繋がっちゃったんだよ。


 なんと、なっちゃんが穂乃香ちゃんと一緒に、プリッチのテレビに出ちゃったんだ。

 さすがに、ビックリした。

 だって、アイドルとかテレビとかに興味なさそうだったのに、いきなりだよ?

 んで、テレビでなっちゃんを見たって子たちに学校で質問されまくるし、超大変だった。

 でもでも、アイドルに質問責めなんて普通じゃない?

 だから、バッチリ答えたよ。

 まあ、あんまり知らないから、私が考えたことを答えたりして、大変だった。


 でもでも、ビックリはそれだけじゃないんだなぁ。

 ステージ、なっちゃんはさ、ステージに立っちゃったんだよ!

 まあ、それはアイドルとしてじゃなくて、プリッチの女優さんとして何だけど、でも、まあ、すごいよね。

 だけどだけど、それだけじゃなかったんだよね。

 なんと、なっちゃんは他のプリッチの子たちと一緒にユニットを組むことになったの!

 そう、アイドルユニットだよ!!

 正直、何でって思った。

 ずるいと思ったし、悔しかったし、すっごい怒りたくなった。

 けど、私はなっちゃんのお姉ちゃんだ。

 私のお姉ちゃんのスミレちゃんは、いつでも、私に笑ってくれる。

 きっと怒りたい時だって、スミレちゃんは優しいから笑ってくれる。

 だって、それがお姉ちゃんだからって言う。

 私もお姉ちゃんだ。

 なっちゃんのお姉ちゃんだ。

 私はお姉ちゃんだから、なっちゃんに優しくしなきゃダメなんだ。

 そう思ったら、それを思い出したら、悔しい気持ちもなっちゃんへ怒りたい気持ちも無くなった。


「私はなっちゃんのお姉ちゃんだ」


 スミレちゃんに教えて貰ったお姉ちゃんとして当たり前の事、それを思い浮かべたら、大事なことを思い出した。

 私の大好きな、アニメに出てくるアイドルの女の子りんごちゃんはいつも、皆を応援してた。

 ライバルの女の子に負けちゃって悔しいって言っても、でも、自分に勝った相手を一生懸命応援してた。

 だから、私は、りんごちゃんみたいに、なっちゃんを応援しようと思った。

 なっちゃんが頑張れるように、私の知ってることを教えてあげなきゃ!

 スミレちゃんみたく、頑張るんだ。

 そう思ったら、すっごく気持ちが良くなった。


「よし、がんばるぞぉ」

「あら、何を頑張るの?」

「なっちゃんが、ステージ頑張れるようにスミレちゃんみたいに応援するんだ!」

 私が頑張る気持ちを伝えたら、お母さんはなぜかギュウッてしてくれた。

「何、お母さん?」

「いや、椿の抱き心地を確かめたくなっただけよ」

「なにそれ、へんなの」

 お母さんはたまに変なことするんだよね。

 まあ、私は嬉しいからいいけどさ。

「あっそーだ、私もスミレちゃんがすごいって宣伝するつもりだけど、なっちゃんにも手伝って貰ったらいいんじゃないかな?」

 私の頭いい考えに、お母さんはなぜか、泣いちゃった。

「なに、どうしたの、お母さん、私変なこと言った?」

「ちょっとうれしかったのよ、椿がいい子で」

「はぁ、お母さんそんなことでイチイチ泣かないでよ。決まってるでしょ、私はスーパーアイドルになって、スミレちゃんの自慢の妹になるんだから、それで、なっちゃんの自慢のお姉ちゃんになるんだから、いい子に決まってるじゃない!」

「そう……ね」

 私が大丈夫だよって気持ちを込めていったのに、お母さんは泣いたまんまで少し悲しくなってきた。

 そうしたら、お母さんはまた私をギュウッてしてきたので、私はお母さんが泣き止めるようにイイコイイコしてあげる。

 スミレちゃんに教わった涙を止めるおまじない。

 早くお母さんにも効くといいなぁ。

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