直人、熱血!
第四章 第102部 あたりまで読んでおくとわかりやすいと思います。
ぼ……オレの名前は、岸本直人だ。
聖アニエス学院幼稚舎、ってところに通ってる。
ぼく……じゃない、オレは、その中でも『桃組』ってクラスに属している。
なんか、良くはわからないけど、お父さんは大当たりだって言ってた。
意味がわかんないから、お母さんに聞いてみたら、同じクラスに榊原穂乃香がいるからだろうって教えてくれた。
だからってわけじゃないけど、その話を聞いてから、なんとなくぼくは穂乃香を見るようになった。
まあ、お母さんも穂乃香とは仲良くしろって言ってたしな。
穂乃香は不思議な奴だった。
どこがとかはよくわかんないんだけど、皆の着替えを手伝ったり、先生の言うことをわかりやすく言ってくれたり、片付けもやり方を教えてくれて手伝ってくれる。
泣いてたやつと話しをしている間に、泣き止ませて笑わせたりもする。
しかも、ふざけたり冗談を言ったりしないんだ。
あと、穂乃香は全然怒らない……うん、いつも笑顔だと思う。
なんか、穂乃香も先生の仲間なんじゃないかって思うこともあるくらいだ。
だから、ぼ……オレは思い切って声を掛けることにした。
だって、気になるだろ、穂乃香は不思議な奴だからな。
「なぁなぁ、穂乃香はどんなテレビ見るの?」
ただ気になったから聞いただけなのに、奈菜が急に怒り出した。
「穂乃香ちゃんでしょ、呼び捨てはやめて」
すると、穂乃香は眉は八の字なのに口は笑顔って変な顔をして奈菜を見てからぼくを見た。
「私は気にしないけど、ちゃんとかさんとかつけないと嫌だなって思う子もいるから、気を付けた方がいいよ、直人君」
そういって、穂乃香は笑った。
なんだか、胸がぽわっとあったかくなる笑い方に、ぼくは素直に頷いていた。
「そうかー、奈菜ちゃん、穂乃香ちゃん、ごめん」
すると、今度はさっきまで怒ってた奈菜まで笑って「うん」と大きく頭を縦に振った。
それにもぼくは胸があったかくなるのを感じて、ちょっと嬉しくて、恥ずかしくなった。
だから、慌てて質問をし直す。
「で、どんなテレビ見るか聞いてもいい?」
吃驚した。
だって、穂乃香はあんまりテレビを見たことがないんだ。
見てるのは「プリティーウィッチ」って女の子が好きな奴くらいだって言うんだ。
でも、それは女の子用のテレビだから、兄ちゃんたちが、見るとバカにするから、ぼくは見てなくて、もう穂乃香と話すのは無理かなって思ったんだ。
そしたら、穂乃香の方から聞いてきたんだ。
「直人君はどんなのが好きなの? お爺様に聞いて見てみようかなぁと思うんだけど」
それで、なんか奈菜が「え?」ってビックリしてから、変な顔でぼくを見た。
何だろうと思ってると、ほっぺを赤くして、奈菜も聞いてきた。
「な、直人君、私も知りたい!」
だから、ぼくは……オレは教えてやったんだ。
オレの大好きな『アーマードファイター』のことを!
で、それからはあんまり話す機会はなかったな。
見るって言ってたけど、アーマードファイターもそんなに面白くなかったのかもしれない。
まあ、穂乃香は女の子だし、仕方がないかなって思ってたら、夏休み明けの初日にいきなり穂乃香にありがとうって言われたんだ。
急に手を握られて、すっごい笑顔を見せられて、可愛いと思わず思ったらすっげぇ体が熱くなって、急に風邪になったかなと思った。
胸がすごいドキドキしてて、アーマードファイターで勉強してなかったら、なんかすごい病気かと思うとこだった。
これは、多分、熱血したんだ。
戦いの最中、強い敵に出会うと、クレナイが胸がドキドキしてきたって言うんだけど、多分それだ。
穂乃香は実はスゲェ強い奴なのかもしれない。
それを、オレは知らずに感じて、クレナイみたいに熱血したんだと思う。
んで、オレがそんなことを考えてる間に、なんかスゲェ勢いで喋った穂乃香は嬉しそうに夏休みの事を言って去っていった。
正直、訳が分からなったけど、なんか思い返したらすげぇ嬉しくて、なんか笑った。
オレは何でこうなったと素直に思った。
オレが呼ばれたのは穂乃香の誕生会で、主役の穂乃香は、何か映画に出てくるお姫様なんかが着てるような凄いドレスを着て皆に囲まれている。
その周りにいるのはクラスの奴等で、皆ドレスやら着物やらを着ているんだけど、大問題があった。
クラスの皆を招待したって、穂乃香は言ってたのに、招待されたのは女ばっかりで、男はオレだけだったんだ。
んで、話す相手もいないで困っていたら、急にクラスの女と話してた穂乃香がオレを呼んだんだ。
皆にいきなりこっちを向かれて、ちょっとびっくりした。
それで、その間に近づいてきた穂乃香はオレを師匠って言って、んで抱き着いてきた。
その瞬間、オレの熱血が爆発した。
オレが気が付いたのは、ベッドの中だった。
熱血が爆発してしまったオレは、そのまま意識を無くしてたらしい。
えと、マナさんとか言う女のお医者さんが言うには、別に病気とかじゃないから大丈夫だって、そう言われて安心したオレは一つの決心をした。
「なんで、ししょう?」
なんか穂乃香の前に立った途端熱血が始まって、体があんまり動かなくなった。
マナ先生は大丈夫って言ってたしと、自分に言いきかせて、ようやく絞り出したのがその質問だった。
で、穂乃香はすらすらと説明してくれて、ようやくオレも理解した。
クレナイに情報を教えてくれる大事な相棒で、先輩のカッケェ人にちなんだ呼び名だったんだ。
そして、オレはその人みたいだと穂乃香に言われた気がして、すげぇ嬉しくなっていた。
すると、なんか、熱血は続いたままだったのに、頭はすっげぇすっきりしてることに気付いた。
だから、オレは『師匠』を真似て穂乃香に言ってみた。
「そういうことだったのか!」
穂乃香はそれに笑って、それから、急にカッコいい表情になった。
「ようやく、気付いたか!」
本物の『師匠』みたいに、師匠のセリフを言った穂乃香は、頬を赤くして笑う。
そんで、二人で笑いあってから、オレは別れの挨拶をした。
これから、穂乃香とクレナイの話が出来そうだと思うだけで、すっげえ楽しくなった。
とりあえず、最初から録画を見直してちゃんと情報収集をしようと思う。
だってオレは、穂乃香にとっての『師匠』だからな。