表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

第二話

「好きです。付き合ってくれませんか?」

そんなことを告げられたのはいつのことだったか…

突然の非現実でよく覚えていない。

どうしてこうなったのか。

それすらも分からない。

たしか放課後だった気がする。

ある少女に体育館裏に来るように言われてついて行ったらこうなった。

本当にどうしてこうなったのか。

自他と共に認めるダメ男。

別に愛想がいいわけでもなく、要領もいいわけでもなく、顔もごく平均。

なのになんで告白されたのか…

本当によく分からない。

人生は何があるのか分からないというが的を射ていると思う。

そのときはなんてはぐらかしたっけ?

確か…「時間をください。」だっけ。

よく覚えてない。

本当に覚えていない。

そしたら彼女は歌いだした。

何の唄かは知らない。

でもすごい心が穏やかになったのは覚えている。

一曲歌い終わった後にもう一回こちらを見て「どうですか?」って言ってきた。

「いい歌声だ。」

「そうじゃなくて、お付き合いしていただけませんか?」

「…もう一曲、歌ってくれない?」

アンコールをリクエストすると彼女は別の唄を歌いだした。

この歌も何なのかは知らない。

自然と涙がこぼれてきた。

なんでかは分からない。

でも理由付けるなら音楽の力に魅了されたんだと思う。

気が付いていたら彼女を抱きしめていた。

「ありがとう。」

そっと耳元で囁く。

彼女の方でもそっと腕を回す。

「…もう一曲歌いますか?」

「…俺のそばで歌ってくれない?」

彼女の質問に俺は答える。

あれから何年たっただろうか。

お互いの大学生活を楽しんでいる。

「久しぶり。」

「おう、久しぶり。」

「また、歌う?」

「うん。お願い。」

そういうと彼女は歌い始める。

のびのびとした声で、どこまでも広く広がっていき、心に初恋を芽生えさせる唄を。

俺はかつての俺とは違う。

彼女の唄に添わせるように低音で歌い始める。

彼女はそれに気づいて笑顔で歌い続ける。

快晴の下、俺たちは歌い続ける。

何処までものびやかに。

何人かはこちらを怪訝そうに見る。

それでも俺たちは歌い続けた。

…あれから何年経っただろうか。

彼女は病院のベッドに力なく横たわっていた。

「ねぇ…」

彼女は俺に呼びかける。

「なんだ。」

「愛してるわ…××××…」

そういうと彼女は弱々しく歌い始める。

俺に初めて聞かせてくれたあの歌を。

俺はあの時とは違う。

ゆっくりと彼女に添うように低音で歌い始める。

彼女は弱々しくも輝くような笑みで歌い続ける。

気高くも弱々しい歌声と、醜くも力強い歌が病室を揺らす。

歌い終えたとき、彼女は顔に微笑みを浮かべて固まっていた。

……あれから何年たっていただろうか。

もう彼女はおらず、俺が病院のベッドの上で力なく横たわっていた。

「もう少しで会えるかな…○○。」

そういうと俺は弱々しく歌い始める。

ただ一つ、醜くも弱々しい歌が病室に響き渡る。

その時、俺の歌声に添わせるように気高く強い歌声が聞こえた。

「あぁ…そこにいたのか。」

俺は天井を見上げながらつぶやく。

「全く、今頃気づいたの?」

彼女は笑いながら俺の唇にそっと唇を合わせた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ