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第一話

バーの中には一人の男が座っている。

手に持っているのはウイスキー。

どでかい氷が1つ、茶色の海な中で浮いている。

「なあ、マスター。快楽ってなんだろうな?」

男がポツリとつぶやく。

グラスを拭いていたマスターはその手を止めて男の方を見た。

「そうですね…私の意見でよろしいでしょうか?」

「もちろん、それを聞くために聞いたんだから。」

「では。快楽にもいくつかの種類があります。それは当然知っていますよね?」

「あぁ、確かにそうだな。」

「仏教の中には三大欲求というものがあるそうです。食欲、睡眠欲、性欲の3つです。」

「ふむ、それで?」

「私の思う快楽というのはどれにも属さないものです。」

そこで男はわずかに首を傾げた。

「それはおかしくないか? だって『欲求』と『快楽』っていうのは根本的に違う者だろう?」

「いえ、快楽というものは欲求の派生なんですよ。そうじゃないと因果関係が成り立たなくなってしまうでしょう?」

「あぁ、そういうことか。」

「そういうことです。つまるところ、快楽というのはのは人によって変わってくる。私のお応えするところではありません。」

男は満足そうにウイスキーをあおると再びマスターに問いかけた。

「じゃあ教えてくれ。マスターの思う快楽ってなんだ?」

マスターはしばらく考えたのちこう答えた。

「そうですね…こうやって人と語りながら酒やコーヒーを飲むことでしょうか?」

マスターはそういうと棚から男の飲んでいるものと同じ酒を持ってきて自分のグラスに注いだ。

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