七十一話 やらかしは続く(前編)
今回はツリス主体で書いてみました。
非雨さんの大きなイメージ崩壊回かもね…
「ん…くはぁー…」
私は度数の低い酒をチビチビ飲みながら仕事の書類を捌いている。
現在時刻は深夜の2時、私の力を使って時間の流れを遅くすることだって可能なのだが、維持するのが面倒なのでやめておく。
「非雨がね…寝るのが遅いんよね…」
今日、やらかしてしまってから、非雨になでなでしてもらって、その後ケーキを食べたのだが、今後非雨の体を壊す事をあんまりしない事を伝えたのだが、またやらかしそうで怖い。
「ほんと、ペルさんには感謝しないとなぁ…」
神になりたての頃、支え支えられたこそ、今の仲が有るのだろうか。実際、自分達が作った世界にも自分達の発展した技術を譲ったり貰ったりしている。
「仕事終わったら、私の奢りでペルさんの好物の酒を渡そうかな…ふふっ…」
ペルさんは多分、好きな酒を買い貯めてそうだが、備蓄が増えるのは良いことだろう。親切心は素直に受け取っておけってもんよ。
「やー、呼んだか?」
「うわっ!ビックリした!ペルさんか!どうしたの?」
「なんかツリスに呼ばれた気がしてね。仕事も終わったし遊びに来た。」
「昔の事を思い出してねー。近いうちにペルさんの好きな酒を私の奢りで買おうかなって。」
「お、そりゃありがたい。それにしても、昔の事か。ツリスの事をオスゴーと呼んでいた時期が懐かしいな、今となっちゃ妹の付けたあだ名が今の呼んでいる名前になってるもんなぁ。」
「ペルさんはあんまり変わってないような気もするけどねー。」
「「はっはっは!」」
「さて、仕事の調子はどうだい?長引くようならば手伝うが。」
「もーちょいだから大丈夫だよん。てか、さっさと終わらせて一緒に昔の事を話したい。」
「おー、そうか。じゃ邪魔にならない所で酒を飲んでるわ。」
「はいよー。」
「後暇になったら非雨達を見に行ってて良いか?」
「…寝てるから起こさないでよ。」
「はいよー。」
さて、さっさと終わらせますか。
6時間後…
「お、もうこんな時間か、そろそろ帰るわ。また明日来るかもだけど。」
「分かったー。私も非雨達が起きる頃だから準備しないとね。じゃあねー。」
ペルさんを見送り私は一緒に飲んだアルコールを飛ばす。非雨からは言われないが、ラデルちゃんに『何か酒臭いですね…』と、言われてから気にするようになったのだ。
ん、非雨が起きたっぽい。確か非雨は甘めのコーヒーが好きだったけなと思いつつコーヒーを注ぐ。
「おはよー非雨。よく眠れた?」
「よく眠れたよー、姉ちゃん。」
「そっかー、コーヒー用意しといたから飲みな…ん…?」
お、姉ちゃん?いや、この前一晩だけ言われ続けた時があったが、気が変わったか?
「…?
どうしたのさ。」
「いつもはツリスって呼ぶのに今日は姉ちゃんって呼ぶのって、気が変わったの?非雨。嬉しいけど。」
「おかしいなぁ、ツリス姉ちゃんはわたしの姉ちゃんでしょ!もう、ちゃんとしてよ。」
…は?いつもの非雨じゃない。おかしい、精神を操る魔法や、記憶改変もしてない…いや、待て…もしかしたら…
私は非雨の心を覗いてみる…
「…おぅ…ストッパーかけ忘れた…あああ!やらかさないって決めたのにぃぃぃ!」
非雨の心が完全に女の子となってしまったのだ。男だった記憶が消し飛んでいる。やらかさないって決めたのに、今日もやらかしてしまった。
一応、戻すことは可能なのだが…完全に記憶を取り戻すのは1日かかる。つまり何処か抜けてる非雨と1日生活しなきゃいけないって事だ。
「んく…んく…あぁー、コーヒー美味しかったよ!ありがとう姉ちゃん!」
コップを台所のシンクの所に置いた非雨は、そのまま私の所に飛び込んできた。
…どうやら、完全に女の子になった非雨は、私に物凄く懐いているらしい。
「お姉ちゃん…好きぃ…」
…子猫みたいに甘えてくれる非雨も良いのだが、やはり何処かがおかしいし、いつもの非雨じゃないと思う。この前みたいな『ツリスー』が良いなぁ…
いや、今胸からお腹にかけて抱きついているこの妹にそう言えと言えば従ってくれるだろうが…1日、ずっと姉ちゃんと言われるのも悪くないと思う。
地味に下の子達に『姉ちゃん!』と呼ばれている非雨がちょっぴり羨ましかったのだ。
「姉ちゃん達ー、おはよー…眠い…」
「あ…」
よりにもよって非雨が元男だと話していないラデルちゃんが起きてしまった。
「ん、姉ちゃん、オスゴー姉ちゃんに抱きついてるけど、どうしたのさ…」
やっぱり、そうなるよね…
「ラデルちゃんも参加する?姉ちゃんが優しいからつい抱きついちゃってね…ふふふ…」
「…じゃ、オスゴー姉ちゃん、わたしと一緒に寝よ?姉ちゃんと一緒にね…」
「お、おう…」
これをシスコンと言うのだろうか、それは分からないが、役得かどうかは分からない非雨達と一緒に寝る事となったのだ。
「てか非雨、眠くないでしょ、さっきコーヒー飲んだから。」
「うん、だからラデルちゃんを可愛がった後に姉ちゃんと甘えるんだ。」
こんな非雨でも、ラデルちゃんをちゃんと可愛がってあげようと思ってくれる事にはありがたい。近々、姉妹同士の関係の悪さの事が人間界のニュースで流れていたが、私達は、そう言うことについては何も問題無しだろう。
寝床について、一緒に寝ようと思ったら、非雨がラデルちゃんを優しくナデナデしているではないか。
「ふぇぇ…気持ちいい…」
ラデルちゃんの幸福な声が聞こえるほど、気持ちよくなってるのだろう。
ひとしきりナデナデが終わった後、櫛を取り出し尻尾の毛づくろいを始めた。
「zzz…♪」
すぐにラデルちゃんは寝付いたのだが、その表情は幸せに満ちていた。毛づくろいをやめてから、尻尾はぶんぶんと振られている。
今度、ラデルちゃんに自分から毛づくろいしに行こう。やはり、元奴隷って事を忘れつつあるみたいだけど、それを完全に忘れさせて、幸せになって欲しいのだ。
「さぁーて、お姉ちゃん、次は、わたしの番だよ?尻尾も耳も出すから、好きに触ってもいいよ?」
非雨の目にハートが浮かび上がってそうな、まるで私に甘えないと死んでしまうって感じの非雨だった。どんなシスコンだよと思いつつ、世話が焼けるなぁと思い、まずはナデナデをする。
「やっぱり姉ちゃんに撫でてもらうと、幸せに包まれるよ…もう、ずっと撫でて欲しいくらいに。」
…執着しすぎでは?ずっと撫でて欲しいって、まぁやってあげたいけど時間がね…でも、そう言ってしまうと非雨が悲しむのでやめておく。
「気持ちいいね〜…とろけちゃいそうだよ…」
そう言い、ラデルちゃんみたいに尻尾をぶんぶんと振っている。これ、どこかで見たことあるなぁ…
ま、自分も大人になった非雨に甘えてナデナデしてもらうと、とても心地よいから、それと同じものなのかな、と思う。
「…このままお姉ちゃんを抱いていい?」
「え?」
何いつてるのか分からず、ずっとナデナデしていると、非雨が立ち上がり、私を押し倒した。
「ひゃっ!びっくりしたぁ、どうしたのさ。」
「少しの間、私が安心するまで抱き枕になってくれない…かな?」
何故か顔を赤らめて言う非雨。特にこの先何も予定がないので了承したら
「それでこそ、わたしの大好きな姉ちゃんだよっ。」
と、顔を擦り付けながら言われた。くすぐったいことこの上ないが、懐かれてると思えば気は楽だ。
…
1時間が経過した後、安心しきったのか非雨は眠りについた。私はとりあえず、無理やりどかす事も出来ないので、転移でワープした後、この先、どうするか考えるのであった。
こう言った妹が欲しい。
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