五十七話 影の騒動
予約投稿その15
ツリス視点
非雨が完全に寝付いた直後に、ツリスは1時間ほど仮眠を取り起き上がる。
「んー、やっぱお腹減るよなぁ…なんかつまもうかな…」
ツリスはお腹が空いたらしく、冷蔵庫の中身を漁る。
「んんー、この前焼いた焼き鳥が残ってるなー、それを食べて腹を満たすか。」
ツリスは焼き鳥を取り出し、自身の炎魔法を使い焼き鳥を温め直す。
「この串と肉が焦げないようにする温度調節が難しいんだよねー。」
と言いつつ着々と焼き鳥を焼きたてに見えるようにしたみたいだ。
「んー、完成っと…こう見ると買いすぎたなぁ…100本くらい温めちゃったよ…せや、レサイラも呼んで一緒に食べようかな。」
ツリスは指を鳴らした。するとレサイラがすぐに出てきた。
「マスター、お呼びでしょうか。」
「レサイラぁ…作り過ぎたから一緒に食べてぇ…」
「分かりました。」
レサイラは言う事を聞いてくれて助かってる。レサイラのお陰で非雨達と遊べているといっても過言では無い。今度、レサイラを連れて食事でも行こうかな…?
あ!何も仕事してないと思った人、残念でしたー。私は非雨達とかまっている間以外はずっと仕事しているのだよ。基本的な書類処理、他の神とのお食事、たまに別世界から来る人間の保護とか…色々してるんだよねー。てことで仕事してないと思ったそこの君、後で屋上…
あれ?私誰に向かって喋ってるんだろ?ま、いいや。
しばらく食べ進めて残り70本くらいになった時にペルさんがまた遊びに来た。
「仕事捌き終わったから暇でしゃーないんだ。なんかしよ。」
「私の世界の天津君みたいな事しおって…ま、今焼き鳥を作り過ぎて大変だから一緒に食べよ?」
「おお、いいじゃないか!丁度酒を持ってきたところなんだ。非雨が起きるまで飲もうじゃないか!」
「お、いいねぇ。」
「ペルセポネ様、ご無沙汰しております。」
「ん、えーと、レサイラだっけ?お前酒は飲めるか?」
「はい、まぁまぁ強い方だと思います。」
「それは楽しみだな。」
「ではお酌を…」
「有り難い。」
「ありがとー。」
レサイラからからお酌をしてもらい、私はペルさんが持ってきた酒を飲む。
「んー、美味い…って辛っ!ちょっ…ほんと…ゴホッゴホッ…」
「ツリス、お前酒弱くなったか?」
「なってないはず…てかこの酒度数なんぼよ?」
「75度。」
「たっか!ってレサイラは!?」
「あー、らだらいりゃうふれひ…ヒクッ」
完全に酔っ払ってるー…
「レサイラは酔っ払ったか。弱いなぁ…」
「あんたが強過ぎるからでしょ…私もこれを飲んで潰れなかったから良かったんだけどさ…」
ペルさんは度数の高い酒をグビグビ行きながら焼き鳥をハフハフ言いつつ食べている。
「そう言えばツリスってどんだけ度数の高い酒を飲んだら潰れるんだ?」
「んー、85度かな?他の神とお食事に行ってる時にその酒を出されて飲んでみたら一瞬で潰れたらしい…」
「私は97度くらいか…?ま、ツリスのとこでいうスピリタスみたいなもんを飲むと多分潰れる。」
「あれほぼアルコールじゃん…味あんの?」
「その97度の酒は意外にも深みがあって美味しいんだよ。味わった直後にぶっ倒れてしまったがな。はっはっは。」
そんな酒でも美味しいのかと少し飲んでみようかと思ったが。やめた。
そしてペルさんが来たおかげで焼き鳥は10本まで減ったが。流石に味に飽きてきた。
「飽きてきた…」
「そだな。」
「味変する?」
「そだな。」
いくら酒に強いペルさんでも75度の酒をグイグイ行ってはまたグイグイ行くので、流石に少し酔いが回ってきたのか口数が少なくなってきた。
私達は酒に酔っても潰れなければ一瞬だけ『アルコール無効』を掛け、酔いを飛ばしてから解除してまた飲み始めるというコンボが出来る。
と言ってもペルさんは潰れる寸前まで『アルコール無効』を掛けないため、間に合わず潰れてしまうということが多々あるのだ…が、他の酒好きな神もそうなる事があるらしい。
私は残りの焼き鳥10本を持って、味変として元々かかっていた醤油ダレを飛ばし(タレが染み込んでいたのは諦める)、塩ダレをかける。一本味見してみたがしょっぱさがいいアクセントを出しており、まだ30本くらいは連続して食えそうだと思った。
私の部屋に戻り、床に酒に潰れて寝ているレサイラをベッドに寝かして、アルコール無効を掛けてから私の部屋に戻った。これでレサイラは起きた際に二日酔いに悩まされることはないだろう。
そして味変した焼き鳥はすぐに無くなり、ペルさんはここに泊まっていくと言った。まぁ仕事全部捌いてきたって言ってたし、大丈夫だろうと思いペルさんを寝かせる。微妙に酔いが回ったペルさんはアルコール無効の存在を多分忘れており、ベッドに突っ伏すなりいきなり寝てしまった。リバースとかするんじゃないぞ…
私はアルコール無効を自身に掛け、時刻を確認する。時刻は深夜2時か。今日は非雨にやりたかった事があるので仕事を数日しなくてもいいくらいに捌いていこうと思う。さて、頑張りますか。
※ここからは非雨視点へと切り替わります。
「ん、はよー。」
ツリスからおはようの言葉をかけられたので。
「おはよー」
と返した。これが家庭内、姉妹間での普通の対応だと私は思う。
時計を見ると針は8時を指している。
「ん、今日は非雨にやりたい事があるんだよね。」
おふ、起きてから早速ですか…
「今日は非雨に魔力増強の訓練をしてもらうよ。9時から始めるからね。」
まりょくぞうきょう?それってどういう事なのかな?
「ん、魔法を魔力が切れる寸前まで撃ちまくって、休憩とかで回復するじゃんか。回復している最中に魔力が増強されていって魔力の最大値が上がって強くなるってやつよ。」
つまり、撃ちまくって休憩してを繰り返したら魔力が増えるって事?
「ご名答!んじゃ飯を用意するからそれ食べて9時になったらやるよー。」
魔力増強ねぇ。ま、自身が強くなるってことはいいことだね。うん。
そして10分くらいしたら○き○で出てきそうな朝食が出てきた。それを食べた。以上!
…30分後…
「じゃー、魔法を撃ってね…っと、1発で魔力が0になる魔法はだめだよー。」
「了解ッ!」
私はとりあえず風魔法と氷魔法を使い、風で氷を舞わせる感じにした。
これを応用出来ないかなと思っていたら、ツリスから提案が来た。
「これからは私を狙って撃ってみてよ。そうしたらもっと強くなるはずだからさ。」
「え、でもツリスがやばくね?」
「私を舐めないでくださりますー?これでも私は神なんだよ?非雨の姉は神様なんだよ?そんな程度で死ぬなんて名が廃るからね!まったく。」
なんか、すいません。
ということで、氷魔法をツリスに向かって撃ってみる。もちろん躱されたので、連続して撃ってみる。
それでも躱された。が、気合いが入った。
「うおお燃えてきたぁぁ!絶対に当ててやるぅ!」
「その意気だよ非雨!頑張れ!」
ツリスに向かって魔法を撃ち続け、魔力が切れたら10分休憩してまた撃つ。
一番撃った魔法は氷魔法。もちろん他の属性の魔法も撃つのを忘れてない。
そして2時間も経った後、私の体に異変が起きた。
「ん?非雨、ちょっと青いキラキラが出てない?」
「え?」
「うおっ!非雨の髪の毛が青白くなったぁ!」
「鏡ちょうだい、どうなってんの?」
ツリスが鏡を出したので自身の姿を見てみると、黒い髪が青白くなり、自身から青いキラキラが出ているではないか。
「どぉなってんのぉ…私髪の色変えてないよ?」
「突然変異…?いやオーラが出てるけど…分かんないなあ…調べてみるよ。いやぁ長い間生きてきたけどこのような例は無いからなぁ…」
「これ戻んの?」
「さぁ?」
「ええー…」
本当に戻んのか…?1日経てば治るってやつだと良いんだけどね…
訓練は中止になったので、ツリスの部屋に戻る。そこにレサイラさんがお出迎えしてくれた。
「…!?何奴!?」
「待って待って待って非雨だから!槍向けないで怖いから!」
「レサイラ、非雨だから、向けないであげて。」
「合点承知。」
「はぁ〜怖かった〜」
いきなり槍向けられたら怖がるでしょ…
「ご飯食べる?」
「そうする…」
私達はご飯が作り終わるまで待つ…
魔力は魔力+MPの表記を略したものです。




