五十五話 外出
予約投稿その13
誤字報告ありがとうございます。
「んー、自分が夫婦になって、子供がいる夢を見た…と。」
「そーなんだよ…」
私は今性別を固定され、もう女性として生活しなくちゃいけなくなったわけなんだが、これでも元男なので、そういう感じのやつは拒絶感を感じるのだ。
子供を愛でる…それはいいんだ。その前の行程と言うやつが元男という私を引き締める。
「養子とかそういうやつではないの?」
「夢の中では私がその人達の赤ちゃんだったんだよ…そしてそう言った言動とかは見られなかったから多分養子って説はないと思う。」
「ま、所詮夢なんだ。気にするな…と言いたいけど、予知夢って言うやつもあるからねぇ…」
私、このままでは完全に女として生きるべきなのか。元男という記憶をなくし、初めから女だったって思えば楽なのではないかと思う…が、そうしたら周りの人はどうなるのか。ツリスやラデルちゃんはともかく、親とか天津とか派強にどう言えばいいのか。
悩むなぁ…でもこれから女性としての生活に慣れなきゃだしなぁ…
って…あれ?私、一時期完全に女になってたような気がしなくもないが…
…ツリス、ほんと頼むよ…
「わかってるって!とりあえず、買い物行くよ。」
買い物でもすれば少しは気が楽になるかもしれないしね。
「ラデルちゃんをとにかく起こすかー。
…よし、起きた起きた。」
「お姉ちゃん!」
起きるなりラデルちゃんは私に抱きついてきた。
「オズゴー様が『ユキヒアは死んだ』って言ったからほんとに悲しかったんだよぉ…おねぇちゃぁん…うぇぇ…」
「…ツリスや、伝え方どうにかならなかったん?」
「死んだことは事実だしちゃんと生き返るって伝えたんだけどなぁ…」
「…ぐうの音も出ないや…」
と、ラデルちゃんも、いくら生き返るとは言え私が死んだら悲しむよね…ちゃんと甘えさせてあげなきゃね。
「んでラデルちゃんや、買い物行くけど行く?」
「…しばらくお姉ちゃんから離れたくない…」
「更に懐かれてるねぇ。姉妹関係結んでよかったよ。」
「懐かれることは嬉しいんだけどね…ま、おんぶしながら行きますか。」
私はラデルちゃんをおんぶした。
「…あれ?どこに買い物しにいくの?」
…どこに行くんだろ…まさか下界とかじゃないよね?ツリスと一緒だからそれはまずいと思うが…
「下界じゃないって…天界の街に行くよ。色々とビックリするかもね。」
あー、よかったー…ん?天界?
「前私が偵察に行ったとこ?」
「正解ッ!色々店とかあるから食べたり買い物するよー!」
あ、そういう感じなのね。
「では出かけるよー。」
ツリスがそう言ったら視点がフラッシュバックした。
…
…
…
視界が晴れてくるとツリスの部屋ではなく、いかにも、the街中って感じのやつだった。
「んー、お腹空いたからなんか食べに行こっか。」
「え…私お金持ってないけど…」
「姉の私にまっかせなさぁい!っても神って事バレると色々と面倒だからなぁ…」
「それってツリスが全額負担ってこと?」
「あたぼうよ。心配しなくてもいいからさ。今日はじゃんじゃん楽しむよ!」
あ、ありがとうございまーす…ん…大丈夫…かな?
「んじゃ私が若かりし頃よく行ってた場所に食べに行くかー。」
…神の若い頃っていつ頃なの…って色々と考えていたらもう着いた。
「お邪魔しまーす。っともうちょい待った方がいい?」
「おおオスゴー、何年振りだ?50年振りか?とにかく久しぶりだな!」
「ごめんね最近会えなくて…」
「いいよいいよ、神の立場になったもんだし、忙しいんだろ。」
…この人ツリスの知り合い…だよね?多分この店の常連なのかもしれないけど…
「ん、この子達は私の妹だよー。可愛がってあげてねー。」
「あのオスゴーに妹か!いやー、可愛いもんだなこりゃ!よし、ジュースはオッチャンの奢りだ!飲め!」
「あぁ、ありがとうございます。」
差し出されたのは半透明な液体。飲んでみると…うん、りんごだ。りんごジュースだね。
「ツリスってこの店の常連なの?」
「んー、私が神になる前から通い続けてるからなぁ…ざっと11000年くらいかな?」
「…なんか色々と凄いねこの店…」
「はっはー、嬢ちゃんよ、オスゴーちゃんは超がつくほど常連さんだ。神になってもちょくちょく来ては美味しい美味しいって行って帰るから嬉しいってもんよ。」
超がつくほど常連なのねこの店の。
「別にちゃん付けしなくてもいいよ店主さんや。あと肉野菜炒め注文頼むよ。」
「オスゴーこそさん付けしなくてもいいんだぜ?ほい肉野菜炒めだ。」
早い。誠に早い。作り置きなんてもんじゃない。ちゃんと焼いてタレとかもしっかりと絡まっている。凄いねこの店主さん。
「店主さーん、おススメをお願いしまーす!」
「わ…私も…お願いします…」
「んー、おススメ、か…ちょいと待ってろ!」
ラデルちゃんはこの店主さんのテンションについていけないからちょいとボソボソと話している。私はこういうテンションとかの人とかは好きだけどね。
1分くらい待つと作り終わった料理が私達に出された。私は和食定食、ラデルちゃんは洋食のセットだ。
「そこのお嬢ちゃんはオスゴーの世界の『日本』って言う国の人間に似てるもんで、和食が好みかと思って鯖の味噌煮をメインにしたメニューにしてみた。猫耳の嬢ちゃんはなんとなくパンが好きそうな感じだったもんでトーストにハムエッグを乗せたやつにスープ、サラダを組み合わせてみたセットだ。どうだ?」
「めっちゃ大好物です。」
「こ、こういう料理が好きです…」
「よっしゃ好みがヒットしたッ!シャッ!シャッ!」
店主は嬉しそうだ。
「店主ー、おかわりいけるー?」
「おうよ!」
ツリスがおかわりを要求したすぐにまた同じ肉野菜炒めが出てきた。なんだ?『いつもの』って言ってそのメニューがすぐに出るって感じのやつか?
それにしても結構量があるもんで、私は和食定食を食べ終わったらお腹がいっぱいになったが、ラデルちゃんは『おかわり…お願いします…』と恥ずかしがりながら言い、おかわりをもらったらまた食べ進めてた。ラデルちゃんは一回のおかわりで満足したみたいだ。
「会計頼むわ。」
「ん、了解。」
店主がレジに行き、ツリスが会計を済ます。
「ん、いつものお礼。お釣りはいらない。」
「え!?お、おうありがとうよ!また来いよ!」
ちょっと店主さんが戸惑っていたが、すぐに元に戻った。
「お邪魔しましたー。」
「嬢ちゃんまた来いよー!」
最後まで元気の良い店主さんだった。
「店主さん、戸惑ってたけど何したの?」
「秘密ー、次は非雨のための買い物をするよー。」
「え、それってどういう…」
私がこの意味を理解するのにそう長く時間はかからなかった。
《女性服販売店》
「………」
「非雨、頑張れ、ストッパーは掛けておいたからさ。」
「いやだぁぁぁ…」
「うん、非雨、変えの服とか無かったら困るでしょ?特に下着とかさ。」
「うっ…何も言えない…」
だからって元男にんな拷問的なやつをやらせんのかよ…
「私がついてるから。大丈夫だって。」
「へぅぅぅ…」
ちなみにツリスはいつも通り目と髪の長さを変えるという所謂変装をしている。
「てか姉貴のとこで習っておけばよかったなぁ…」
「ん?何?」
「いや、何でもない…」
変態姉貴に習うと何が起こるかはわかんないしな…
んー…店の前にずっと居座ってる訳にもいかないし、入らないと冷やかしって思われるしなぁ…ここは覚悟を決めて入るとするか…
「いらっしゃいませー。」
ついに多分男が入ると通報されるであろう店に入った。大丈夫…だよね?
色々な下着がずらりと並んでいる。あんまりジロジロと見ると変態…いや、見た目は女の子だから大丈夫なはず。
ツリスは『非雨に似合いそうなものを探してくる』って言って別れたが、正直言って、下着だからあんまり派手なやつを選んだってなぁ…と思うんだよね。
…
服とかを選び終わったのでツリスの所に行く…おぉ…カゴの中いっぱいに女性用の服が詰まってるね…
「ん、選び終わったのね。じゃ会計しようか。」
ツリスはそう言い、会計場に行った。
値段をチラ見してみたが、値段がやばかった。10万は超えてた。やばい。うん。
「私の奢りだから非雨は気にすることもないのよ。あ、非雨ばっかじゃ悪いからソフランちゃんやラデルちゃんのやつも買っておいたよー。」
それであんなに値段が高かったんね。下着ねぇ…うーん。
ま、悩んでも仕方ないし、ツリスの買い物にまた揺られるとしますか。
…
…
…
色々と買った後、ツリスの部屋に戻った。
そしてツリスが一言。
「また温泉入りに行こう!」と。
また入りに行くんだ…いやストッパーかかってるから別に良いけどさ…
とは思ったものの、少し不安な非雨だった。