四十五話 心境の変化
ラデルの過去+四十二話〜四十四話のラデルの視点を書きました。超大雑把に書きました。
「と、言うわけで、今回お前らの奴隷調教役となった○○○だ。しっかりしごいてやるから楽しみにしてろよ?」
私はなぜ、ここにいる…何も悪いことはしてないのに、パパとママに、突如として奴隷に売られてしまった。
周りには、私と同じくらいの子が10人くらい…私と同じ親に捨てられたのかな…?
「奴隷番号1!さっさと動け!」
「………」
「返事ィ!」
私より背が小さい女の子は、返事をしなかったことで鞭で引っ叩かれていた。怖い。誰か…助けて…
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奴隷になって、早一年、当然奴隷に誕生日祝いなど存在しない。
どうやら、男は力仕事などの類いのやつで、女は召使いになるか性奴隷になるかの二択らしい。
もっとも、調教でうまく成果が出せなかった場合は、強制的に性奴隷になるみたいだか。もっとも、それは嫌なのでみんなも必死に手順を覚えようとしている。
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奴隷になって三年が経った。ついに私を買ってくれる人が現れたらしい。
私を買った人は、弱小貴族。人員が足りないみたいなので、奴隷から人員補給をしたらしい。
私は早速、仕事を始めるが…掃除の手順が違うだのここが汚いだのシーツをちゃんとシワなく敷いたはずなのにシワが出来てて汚れているだの、これだから奴隷女は…と散々罵られた。私は知っている。掃除したところをわざと汚したり、チェックする際にわざとコケてシーツを汚したりする行為を貴族の男の妻がとっていた。
やがて男の耳にも伝わり、『これも出来ないのか!』とぶたれていった。当然妻にも杖で叩かれた。
それからしばらくした後、また奴隷に売られた。と言うよりかは調教所に戻されたといえば良いのだろうか。
私には貴族から受けた暴力の後が沢山残っていた。それを見た調教員が『なぁに貴族様に対して無礼を働いてんだよ!』と、調教員も私に暴力を振るうようになった。散々ぶたれ、時にはナイフで肉を深く切られ、やがてそれに対し耐えていた。ある日全身が冷たくなるのを感じた。私は、もう死ぬんだなと思った。もう奴隷による苦痛も終わるんだなと感じた。
私は、意識を手放した。二度と掴まないことを祈って。
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目が覚めたら、そこは知らない天井。
私は死んだのか?いや、感触はまだある。死ねなかったのか…
と、しばらくぼーっとしていたら、声がかけられた。
私は奴隷だったことを思い出し、あの時の貴族の事が脳裏によぎり、少し声を出してしまった。
嗚呼、また私は暴力を振るわれるのか…と思ったら、私より年上っぽい女がこういった。
『あのー、君の体を見て気付く事はないかい?』と。
ここで私は気付く。全身の傷が全部閉じている。痣も切り傷もない…私は思った。ボロボロな私を治療してまた売りつけるのか、と。私は聞いてみた。
すると、私を助けたかったとの回答が返ってきた。
…この言葉に騙されて、まんまと買われていった奴隷は何人かいる。私は警戒するのをやめなかった。
ところが、その女は突然耳と尻尾を生やした。見た感じ、猫と狐のクォーターか?見た事がない。猫の獣人、狐の獣人なら見たことはあるが。
私は気になって聞いてみたが、後で話すと言っていた。私は内心ホッとした。貴族に質問しただけで殺された奴隷の話を聞いていたからだ。
そして女はこう言った。腹は空いてないかと。この言葉は貴族の奴隷になった時は聞かなかった言葉だ。私は慌てて空いてないと答えるが、体が反応してしまった。まずい、殺される。そう思った。
しかし、女は『君の分のご飯作ったけど、食べるかい?』と言った。私は驚いた。奴隷の自分の為に主人がわざわざ飯を作ってくれるなんて。
私は主人の手を汚すまいと断ったが、色々話した後、『私の名はユキヒア。同じ獣人だから助けた』と言った。
私は変な人だなと思い、軽く返事した。
その後、主人が飯を食べろと言ったので食べた。どうせ毒でも入っているのかなと思った。しかし、うまい。あそこの飯とは比較にならない程うまい。
知らぬ間に私は涙を流していたようだ。そして、主人からの慰めの言葉。どうでもいいと思っていた心に、この人の温もりとその言葉が突き刺さり、私の感情の堤防はドバドバと流れて崩れた。それと同時に、心が少し満たされたような気もした。
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また知らぬ間に寝てしまったようだ。起きたと同時にご主人が来た。私は主人の前で恥ずべき行動を取ったことを謝罪した。
しかし主人はそれを気にすることなく、なんと自分の服で私の涙を拭いてくれたのだ。
その後に名前を聞かれた。私はラデルと答えた。実はこの名前、親から付けられた本名ではなく、奴隷調教員に付けられた名前だ。私を売った両親より、散々しごいてくれた奴が付けた名前がいいかなと思い付けた。正直、親のことを思い出したくない。
それからご飯をまた主人はくれた。パンに野菜と肉を挟んだご飯。久々にまともなご飯が食べれて満足していた。
どうやら主人が寝るらしい。少なからず、私は夜の営みの方法を覚えている。実際にやられたから…うっ、思い出したくない…
主人に営みを提案すると、吹き出し咳き込んでいた。どうやら主人の年齢は13らしいが、年下だけど教えてあげると言ったらまた吹き出していた。どうやら主人にはその気がないらしい。
そうと分かれば私は寝る。基本的な奴隷の順序を思い出しつつ…
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私はどうやら、主人より遅く起きたみたいだ。起きたてって言うのに、私は意識をバッチリ目覚めるほどに怖かった。
しかし、後で聞くと言った。機嫌はどうやらいいみたいだ。
主人が料理をまた作ったみたい。らぁめんという料理で、主人がいた故郷でよく食べられていた料理らしい。私はそれをフォークで食べると、すぐに新食感に舌鼓しつつ、完食した。私の率直な感想を主人に伝えた。そうしたら主人がまた吹き出した。あれ?なんで?
…
そして、ご飯を食べ終わった私。主人がギルドに行くと言うのでついて行ったのだが、主人の背中をいつのまにか占領してたみたいです。てへ。
それからなんやかんやあり、宿屋に帰った後は惣菜等で腹を満たした。
おやすみ。
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翌日、主人が私を奴隷から買い戻すと言われた。買い戻すが、どうしたい?って聞かれたので、「もちろん付いていきます!」と言った。心なしか、主人様の顔が少しにやけているような気がした。
ユキヒアさん。こんな私を助けてくれて、ありがとう。たった2日で、人を信頼することができた。
私は心から、そう思うのだった。
え?番外にすれば良かっただろって?考えてたけど、やめたんよ。てか、非雨視点じゃない回がこれが初めてかもしれない。(茶番を除く)