茶番四十九話 遅いけど美味いから良し
皆さんどうもおはこんばんにちわ。
9月なのにまだまだ暑くて俺は溶けそうだぜ。
少しずつ髪の毛の紫の色素が戻ってきているから、ツリスさんの力が抜けてきているのを感じている。
さて、今日はツリスさんが家に来ている。俺はチョー暇なので暇つぶしになるかなと思いじっと見つめている。
「なんだい雪餅、私をジロジロ見て…なにがあったの?」
「あのねー、今ものすんごく暇だからさ、ツリスさんのしっぽの毛先の数を数えてたんだよね。」
「雪餅よ、私のしっぽの毛先を数えるなんてマイナーすぎない?」
「だって暇なんだもーん。」
とごろごろしながら、ツリスさんの目線だけは外さすやっていた。
「あ〜ーーーー…目回ったぁ〜…」
「そりゃあぐるぐるしていたらね。ほら、近うよれ、目回しを治してあげるから。」
「ほへ〜い…。」
ツリスさんの膝枕を受け、頭に感じる目眩みたいなのを治してもらって、また活動を再開できた。
「ん〜、今日はバーベキューにする?ちょうど涼しくなってきたし。」
「バーベキュー?あ〜、いいね〜。非雨に相談してみようかな。あ…」
そうだった。非雨はソフランちゃんと散歩をしている。非雨は、『適度な運動は健康にいいからやるわ〜。雪餅もいく?』と誘い、断られたので、ソフランちゃんを連れて行ったのだ。
「いうて非雨もいないしなぁ…どうすっかね…今から業務用スーパーに行って焼き鳥とか買ってくる?」
「いや、そのための私でしょう。私が見守るから、うまいヤツを狩りに行かない?」
「は?それってファンタジー的な、あれ?」
「うんうん。あれ。私も手伝うからさ。非雨の言う運動に付き合ったって感じでさ。」
あ〜…こうなってしまったか…それなら、非雨の散歩に付き合ったほうがよかったんかな〜…決まったことはしゃあないし…やるか。
あまり使ってなかった糸射出装置を押し入れから取り出して…と。
「ツリスさーん。一回動作確認のため、一回これでやってきていいー?」
「ええよー。早く戻ってきてね〜。」
よし。
糸射出装置を両手にはめて、外に出る。近くの森で飛び回ることにして、目標は何にしようかな〜…よし、昔糸射出装置で傷を付けた、あの木にしよう。
久々に感じる、これを使うと感じられる風の音。この風が微妙に冷たくて…耳が凍る!つめちゃいよぉ…。
さまざまな木を傷つけ飛び回り、アップから15分。俺ら人間が二度寝するときの許容範囲内の時間で終わらせた。これは個人差もあるが、俺は二度寝をするのなら15分以内に起きるようにしている。
そんな話はおいておいて、ツリスさんのもとに戻る。
「やーっと戻ってきた〜…暇だったんだよー?」
「おにーちゃん!おかえりー!」
俺が動作チェックをしている合間に非雨たちが帰ってきたようだ。
「今日バーベキューする事は、非雨とソフランちゃんに言っておいたからね〜。」
「おけおけ、雪餅、うまいお肉を取ってきてね〜?」
「がんばってね!!」
「よし、ソフランちゃんに鼓舞されたから、頑張れる気が起きた。めっちゃうまいもの取ってきてやるからなっ!」
後ろで『え?私は?ねぇゆきもちっ!!』と小声が聞こえた気がしたがスルーをして、ツリスさんに案内してもらうことにする。レッツラゴーゴーだ。
「さ、付いたよ。」
「うわぁ…まるで漫画とかに出てくる森みたいだ…地平線の彼方まで森、森、森だね…」
「雪餅には、ここで猛獣を狩ってもらいます。ただ首に糸をかけて引っ張るだけの簡単な作業でしょ?」
「簡単に言うけどさ、気配を察知されたらどうするの?ワイ一般人だから対処できへんで?」
「狩られる前に狩るんだよー。私が見守るから頑張ってね〜?」
「うもう!わかったよ!!頑張るよ!!」
というわけで、あまり気は乗らないけど、俺は緑が生い茂る森へとダイブしていくのである。
「ふぇえぇぇ…やっぱり動画とかで見た森とだいたい一緒だぁ…スマホとか持ってきてたら、写真を撮って加工すればいいんだけど…今はそういう時間じゃないし、俺らのお腹に入ってもらう獣を探さなきゃなぁ…」
でも初心者が探しても、なかなか獣は見つからない。美味そうな植物もあるけど、毒があったらソフランちゃんや非雨に面目もつかないし、放置だ。
そんな中で緑の景色を楽しみながら、やっと小柄の猪並の獣を見つけた。それと同時に気づかれた。やばめ。
なので瞬時に木と木の間に糸をかけ、突進してきた猪を狩るという手法にした。
「これで安定…かな?」
結果は知ってのとおり、突進してきた猪がみんな真っ二つになった。綺麗に切断されているので、まるで聖騎士の斬撃を食らった木のように、綺麗な断面図だ。
そしてその血の匂いが引き金となり……
「お、おおお…?なんか急に集まってきた…?」
オークとか、さっきの猪とか、なんかもう色々なやつが集まってきた。さらには…
「ひぇえ!?む、虫がいる!!?」
そうです。なぜか虫が集まってきました。それも俺が無理な系のやつ。即刻排除しなければあかんのです。
「もうっ!!こいつらとか勝手に切れてろっ!!虫消えろォー!!!」
と叫びながら徐々に肉を集めていったのであった。
…
「あ〜…つかれた…ここ最近ずっと疲れたとしか言ってない気がする…。」
「お疲れ様。さ、雪餅の気力が一段落ついたら肉を解体してやるけど…今更バシバシコイツらぶった斬ってるからグロ系は大丈夫だよね?」
「この獣らに俺がギャーギャー騒いでた奴らが来なければ塩梅は大丈夫だと思う…はず。」
「オッケー。じゃあ今日私達が食べる肉と一緒に、私のフリースペースに転移するから、捕まってて?」
「血なまぐさいけど大丈夫?」
「うん、後で私と一緒にお風呂に入ろうね?」
お主それが目的だったんじゃないか…?と俺は訝しみながらも、ツリスさんと一緒に転移する。
後にツリスさんから、『血生臭いままあの子らに会うのもどうかと思うよ?』とも言われた。まぁそうなのだが、なんか嵌められた気分。
転移先で、ツリスさんと一緒に解体を行った。獣の血抜きも頑張りながら解体を行った。俺はリソースはあまり無い方なので、必死になって捌いていたら解体方法を忘れ、また聞きに行く感じになってしまった。まず初心者にバリバリ獣の解体を行うのはどうかと思うが…素人な割にはうまくいった印象だ。
最後の仕上げとしてツリスさんが上司の如くブロック肉を整えて、コールドフリーズの処理をして、バラ肉や肩ロース、リブロースやもも肉を手に入れた。
これで約1年分のお肉を手に入れたが、今日は贅沢としてこのお肉を食べるのであって、食べきれなかった分のお肉は、ツリスさんが作った異世界の孤児院に全部寄付するから、お腹いっぱい食べなさいよと言われた。
言わんとすることはわかる気がする。もしこれが美味過ぎたら、現実世界のお肉を受け付けなくなってしまうかもしれないからね。要するに豪華焼肉食べ放題セットを、俺とツリスさんのおごりで食べるよなイメージだ。
「さ、片付け終わったらお風呂に入ってバーベキューをするよ。」
「お、おっけー。」
「バーベキューの場所はどこがいい?」
「え?じゃあ〜…山奥の開けた平原で。もちろん山火事対策はしっかりとしなきゃだけど…」
「勿論。じゃそこね、オッケー。」
場所は決まったので、さっき使った空間を掃除する。水を出して血を洗い流し、魔法で消臭しておく。
バーベキューと言えばやっぱり海…なのだが、名物といえば美少女の水着。男の俺としては目に収めておきたいが…俺もこんな可愛い女の子の身体だから、恥ずかしくて水着は着れぬのだ…。後肌面積が多いから、やけどが怖い。この2点で俺は山奥の開けた草原を選んだのだ。
「よーし終わった。」
「ほいじゃ、行くよ〜?」
「わかった〜。」
まずはお風呂屋に行き、汗や血生臭さを洗い流す。いつも通り美少女の身体で、ホントにこの身体であの獣らをバッシバシぶった切ってたんだなと改めて思う。
お風呂から上がり、ツリスさんの髪の毛やしっぽの手入れに悶々としつつ綺麗になった。
…だけど、バーベキューしたら炭や煙の匂いが移るから、みんなで2次会お風呂ぱーりぃをしそうだなぁ…と思う。
「これが…しぜん!!なしょなるっ!!」
「調整中に森に行ったんじゃないの?」
「いや、これこそ人間が求めた自然よッ!!空気がうめえったらありゃしないっ!」
「確かにくーきがきれいっ。おにーちゃの言うとおりだよっ!」
さて、余韻に浸るのもここまでにして、俺は網の準備や炭に空気を送るためうちわで扇ぐ。熱くなったらそのうちわで扇ぐのもまた良きだと思う。
煙が立ち済のいい匂いがしたら網をぶち込んで、半分はそのまま直火焼き、半分は鉄板の上で野菜を焼くというスタイルに落ち着いた。
そんならば、俺は網を準備したご褒美として試食を〜っとー…
ジュ〜…と肉の焼けるいい音がする。適度についた油も滴り落ち、その光景がさらに食欲を増進させる。とっても美味しそうだ。
しかし結局、つまみ食いの場面を見られてしまったので、俺が肉を焼く係になってしまった。焼きながらなんとか食べているが、これ、焼く人って案外食べる時間はないんだね…。
肉をぽいぽいっと自分の更に乗せ、生肉を網の上に乗せて、焼き上がるまで旨いタレで食べる。焼くのは大変だが最高だぜ。
そうして、少し遅めのバーベキューは幕を開けたのである。
片付け大変だったぜ☆ by雪餅
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