茶番四十六話 屋台を楽しむ
おは〜という声が耳元から聞こえてくる。今日は夏休み初日、全学生が願った日だ。
夏休みだからどうするもなく、今日は課題をさっさと終わらせて、残りの夏休みを楽しもう!という計画を非雨と立てている。
そういうことなので〜?
「ツリスさんっ!召喚!」
「はいはい、君らは学生だから、そういう気持ちはわかるよ。さっさと終わらせちゃいな?」
「ありがとーツリスさん!」
自室で机を展開して宿題を始める。数学、国語、英語を解いていく。今回、テストで一番点が悪かった国語を先に取り組んでいこう。
ん〜…古文がむずい…えうなしは確かに役立たないだったかな…?国語の先生が、『私は高校時代、古文は嫌いでした、ですが、大学に入って古文の面白さを知り、卒業論文で古文を書くまでになったんですよ、今はつまらないですが、いずれ面白くなりますよ。』と言っていた。
これは面白い面白い詐欺なのか、ホントなのか、夏休み明けも国語は古文が続くので、観察してみることにしよう。
古文が終わったら地力が試される感じの読み書き。そんで次が文書読み取り問題。国語の中では、ここが運に左右される問題だと思う。
全部終わったので、いざ答えを開き丸付け…よし、今回の読み取り問題は運がよかった。選択問題は外したが、筆記は全部当たった。
ちなみに俺の目の前で同じことをやっている非雨は、古文で3問間違えた程度で、他の単元は正答率およそ90%…末恐ろしいよ、この子。
国語が終わったので、次は英語…文法さえ覚えていればなんとかなると俺は思っているため、分からない単語は英語の教科書から意味を引っ張ってくればうまくいく。そのおかげで7割点数を取ることができた。美味しい。
数学も同じ、公式を覚えて当てはめれば大丈夫。英語よりかは気は楽だが、凡ミスが怖い。凡ミスでテストの点数を15点くらい落としているため、見直しはきちんとする。よし、答えを見て合わせよう。
その調子でやっていったら、4時間位で終わった。答えを見ずに4時間で3教科を終わらせるのは、なかなかいいペースなのではないだろうか。
よぉぅし今日はこの課題だけで終わり。明日は教科書に付属についている学習ノートをやろう。本音を言うと、集中力が切れて来たから、ギブアップなわけだけど。
よし、ごろん寝しよう。どうせなら、ツリスさんに膝枕してほしいところだが…そんなわがまま言えないので我慢する。
そんでもって一服ついでに生のゼロコーラを飲みつつ…背伸びをして、布団に飛び込む。これが夏休みの至福よ…!
「よーし、私もこれで終わり!雪餅、一緒にだらけよー!」
「終わったのー?じゃあだらけるのならこっち来て〜。」
非雨も終わったのでこっちに来るよう指示する。後からわかることだが、俺とほぼ同じ時間に終わったはずなのに、文字の綺麗さが俺とは段違いなのだ。
それでいてまだ非雨は『まだまだ文字はキレイにできるよ!私の文字より、雪餅のほうがきれいじゃん。』と返してくるのだ。
これはうちのクラスの、硬筆の大会で2位を取ったけど、まだまだ下手だって言ってくる人となんら変わらないじゃないか。あんさん、十分綺麗じゃねぇかと山ほど言いたくなってくる。
なんて言ってやろうかな、と思っていると、非雨が俺の膝に頭を乗せてきた。熱くないのかお主と問いたいが、ツリスさん特製エアコンがあるから大丈夫だった。
「ねぇ、雪餅〜。」
「どうしたのさ、非雨?」
「今度さー。二人だけで祭りに行かない?」
「別にいいけど…またなんで俺だけ?」
「気分だよ、き・ぶ・ん。乙女心を分かってほしいよね、もう。」
非雨さんや、あなたも元はと言えば俺と同じなりだったよね。それがどうして…人は変わるっていうから、それなんだろうけど……二人で行きたい…かー…ソフランちゃんを置いて、なんで俺だけ?
頭を使っていると、涼しいながらも眠気が襲ってきやがったので、身を任せて昼寝をすることにした。夏休みだから、いいよね。
……
現在時刻は午後三時。うむ。見事に昼ごはんを食べ過ごしました。寝過ぎだよ。ちくしょう。仕方がないので、冷凍保存してある稲荷さんを解凍して食べることにした。今の俺なら3つで十分かな〜と、チンボタンを押して考える。
人肌くらいに暖かくなればいいので、すぐに引き上げる。アッツアツの稲荷さんなんて罰ゲームなんてもんじゃない。口の中やけどしちゃうよ。
稲荷さんを頬張って、テレビを見る。今日は蒸し暑い天気だが、雨は振らないと天気予報のアナウンサーが言っていた…もしかして、祭りのやつは当日決行じゃない…?
「ゆきー。今日晴れるみたいだから、今日祭りに行こーよー!」
やっぱりー!別にいいんだけどさ!楽しいから!
OKと返しておいて、去年着たであろう浴衣を押入れの中からガサゴソして探し始める。んー…なかなか見つからぬ…。……よし、見つかった。ちゃんと俺と非雨の分もある。ツリスさんがかけてくれたドライ系魔法…?のおかげで、浴衣にもカビが生えず助かった。
「非雨ー!俺に浴衣を着付けるの、手伝ってー!」
「あーいっあいっ。できれば一人でやってほしいんだけどね?私も髪飾りを探してたんだからさ…?」
「しゃーないじゃん…女物の浴衣って、女装しない限り着ないし…んな一つ一つ着る方法とか覚えてないよ…」
とこぼしつつ、帯を巻いてもらったり、浴衣を着付けてもらう。相変わらず動きにくいが、まぁ…かわいいで揃えたほうが映えるよね。()
さて、(ほぼ非雨のおかげで)浴衣が着れたので、非雨の髪飾りを探す。いずこにあるんだ、どこにあるー。
「ねぇ非雨、探していたのってこれかい?」
「あっ!それそれー!どこにあったのー?」
「私の収納庫にあったわ。1年前に非雨が『これ預かっておいて〜。』って言ってたのを思い出してね。」
「ありぇ?そんなこと言ったっけ私…?1年前のことだから覚えてないや…私おばーちゃんだから。」
「非雨でおばあちゃんっていうのなら、俺はもうよぼよぼ爺さんだよ…?」
まだまだみんな若いのよね。ツリスさんからみたら。あの人一体何歳?わかんねぇや。
「まぁまぁ、みんな若いっていいことじゃないの。平和って大事よ?」
「んなおばあちゃんみたいなことを言って…年齢だけ言えばもうおばあちゃん超えて輪廻転生しそうなほどに歳を取ってるよね、ツリスさん。」
「輪廻転生ってなんじゃい。種族の違いじゃ種族。」
と言い合っている合間にも、非雨が髪飾りをつけて準備は万端になった。最寄りの祭り会場へレッツラゴー。
……
「やっぱり屋台が多いよねー。目移りしちゃうよ。」
「非雨は何を食べるん?」
「まず、たこ焼きを食べるでしょ?そんで、から揚げ串と焼鳥のももを食べて、ライトのコップのナタデココジュースを飲もうかなって。それからそれからー…」
「んー、俺の脳が追いつかなくなるからこれで十分だよ。聞いた俺が悪かった。」
話を切って、俺にあった屋台があるか探してみる。それと、ソフランちゃんにあったお土産を買っておくために、またキョロキョロしなきゃいけない。候補としては、やっぱり喜びそうなチョコバナナ、かき氷、フリフリポテトとかかな。
かき氷はこの暑さなら絶っっっ対溶けるのはみんなが承知してるから、冷やしながら運ぶとしよう。なんなら非雨が冷やしてくれるはず…多分。
「んー…このから揚げの味、やっぱりうまいね〜。家で再現してもこの旨さは出ると思うけど、外で食べるからこそうまいんだよね〜。」
「あ、それはわかる。いざ自分でそれらを作ったりしてもその旨さが出にくいときがあるよね〜…」
「んま、今雪餅がかき氷を持ってるけど、かっこんで頭を傷めないようにね?言わないとやりかねないし。」
「そんなわけ…あるから言ってくれるんだよね、あざっす。気をつける。」
そうして、結構早めに来てたのだが、空が暗くなっていくのに比例して、人通りも多くなってくる。一大イベントだからみんなも楽しみたいのだろう。おきーらくにゆっくり行こうじゃないか。
とぼんやりから揚げ串のから揚げを頬張ってたら、非雨からつつかれて…
「ねぇ、雪餅…!あれ見える…?」
「あふぇは…ふぁいひんははりの………んむ、焼きかき氷か。」
「あれ食べたいけど…数量限定だから、早く行こ…!」
と、非雨にしては珍しいせっかちな様子で引っ張られ…
「ちょ…!まだから揚げ串が残って…!」
「落としたら後で私が奢ったげるから、早くいくよっ!」
「んぐー!」
無事………なのかどうか謎だが、焼きかき氷を買うことができた。ついでに非雨のおごりで、俺の分の焼きかき氷を買ってもらった…非雨にはない、練乳いちごトッピングで。いぇい。
香ばしさとともに、甘い練乳とお冷なかき氷がマッチして、今までのかき氷では味わえない新感覚を味わえる。もう一回食べたいと思える味だ。
「コレうまいね〜…でも、もう一回食べたら、俺のお腹が下してしまうから…うーん…」
「美味しいのは分かるけど、体調を崩して美味しいものが食べれなくなったら本末転倒だからね。」
んで、またから揚げ串。今度はねぎ塩を衣にまとったから揚げを頼んでみる…んで、斜め右後ろの屋台がジュース関連の屋台なので、準備をしてもらっているうちに…今回は果物サイダーを頼む。
「はい、おまちどう。」
「ありがとございますっ。」
「ねぇ、それ何味なのー?」
辺りを見ていた非雨が戻ってきた。
「ねぎ塩味だって。1個食べる?」
「食べる!ぱくっ」
非雨が1個まるごと食べた。さっき作りたてのを刺してもらったことを俺は見ていたので、非雨がすごく熱そうな顔をしている。
「〜〜ーー!!!んぶっふ……!」
「それ揚げたてだよって言う前にハムるからさ…落ち着いてジュースで流し込みな?」
「ーーー…大丈夫。私の治癒魔法で口の火傷を治したから……すいません、この子と同じのをもう一個ください…」
非雨は俺と同じ味を頼んで、フーフーしながら食べると思われる。火傷しても治せるのはいいとは思うけどね。
「はむ……んん…うまい…!醤油味とは違った塩味と、ネギの旨さが…こりゃまた絶品だね〜…これ、10本くらい買っていこうかな。」
「それいいと思う。ソフランちゃんにお土産として買っていこう。」
「んだね。すいませーん!これと同じのを10本くださーい!」
10本は時間がかかるので、作り終わるまでの間、他にソフランちゃんやツリスさんへのお土産を買っていく2人達。最後のねぎ塩から揚げ串をもらい、帰っていく2人。祭りのことやいつもの日常で、2人の時間を楽しんだのであった。
作者は夏休みを満喫してます()




