茶番三十九話 ドッカーン!がしたい雪餅くん
あ、あけましておめでとうございます。今年も俺らをよろしくおねげぇします。
さて俺はとある事に興味がある。それらをやってみたいから最近の魔力鍛錬に精が出ている。
心を読めるツリスさんは俺のやりたい事を多分わかっていると思う…が、これまで何も言われてない。
ていうか、びっくりしたのが、この前の俺のクリスマスプレゼント、アクセサリをもらったのだが、つけた当初はね、「あ、俺魔法上手くできそう」って思ってたのよ。
アクセサリを付けながら狐火維持をしてみたら、10分経っても汗が出てこない。おかしいな、と思って外して維持してみたら、8分で汗だくゼーゼーになってしまった…
26日の朝に汗だくでお風呂に入る俺はちょっと虚しくなったが…結論は、魔力効率を良くするアクセサリ…だと思うのだよ。
そうでもないと、なぜ昨日は15分でヘロヘロになったのに10分経ってもヘロヘロにならない…急にレベルアップしたのなら、俺も多分何か感じると思うし…と思った。
と言う事で補助&魔力増加(憶測)のアクセサリと俺は判断した。すっごぉい。
自身を得た俺はとあるゲームの魔法を再現したいな、と思った。手を掲げ、魔力を集中させて、爆裂させる。そういった魔法。ゲームで見たときは迫力が凄かったので、ツリスさん特性の花火みたいな範囲になるかもしれない…が、頑張るとしよう。
と言う事で〜…自主練として瞑想…?をやってみることにしよう。
目を閉じて…自身の魔力を探してみる。よしヒット。これを体内で使ってみよう。あ、非雨たちには、『あ、昼寝するね。』と言った。
10分後…20分後……ふぁ…眠い……
…………
「…ふぁ…!?ね、寝てた…!?い、今…何時…?」
「今は午後の4時だよ?2時間くらい寝てた?」
お、おぉ…まじか…寝てたんだな…
魔力鍛錬どころか、ただの昼寝だねぇ…
うーん…困ったときはツリスさん。おーい、つりすさーん。
「はーいはい?雪はさっきまで昼寝してたけど、何してたのさ?」
「魔力を集中して維持できるよう瞑想っぽいのをやってた…」
「そう?その割には寝ていた気がするけど?」
「い、居眠りしてしまったんだよ…」
…
「ていうか、理由も言わずに、凄く魔力鍛錬を頑張ってるじゃん。何があったのさ?」
「え?わかってるんじゃないの?とっくに心を読んでわかってるもんだと思ってたよ。」
「そういうやつはね、心を読まずに応援するのが保護者ってもんだよ?」
ほ、ほぉ…なるほど…
俺はなぜ頑張るのか事情を説明…した。
「ほーん…ゲームの魔法に惚れて再現したい…と。」
「そうそう。かっこいい声にあんな魔法を放つ姿に惚れちまってたってことよん。」
「…私の魔力をあげるからさ、それでやるっていう手はないのかい?」
「それも考えたけどさ、やっぱり自分の力でやりきりたい…っていう感じ!」
そういう経験を積んでいけば、魔法の腕も上がっていくと思うからね。自信って大事よ。
「うむ、雪餅の心意気はわかった。魔力鍛錬を頑張っていこうか。」
「はーい!」
こうしてすげぇ魔法を放つためにツリスさんと一緒に頑張るために転移して、ツリスさんの部屋に移動した。
「やり方としては、ギリギリまで魔力を使って休息を取るやり方で行くよ?」
「はーいっ。といっても…狐火を維持するやり方と、気配を消す魔法しかできないけど…狐火を維持するだけでいいの?」
「うむ…それでもいいけど、早くやりたいんでしょ?なら雪餅が描いている魔法に近い…あ、そうだ。中級の狐火の維持をやってみよっか。」
「ちゅーいのきつねび?」
そうくるか…なら、俺が今までやってた狐火はなんだったんだ?初級?
「うん、初級だね。でも素の魔力で15分維持できるのはいいことだよ。だけど、中級の狐火だと、1分も持たないと思うんだよね。」
「お、ぉぉ…凄いなぁ…」
「だから、私が雪餅の魔力残量を見ながらするからさ、『やめっ!』って言ったらやめるんだよ?」
「はーいっ。」
ツリスさんに頭を撫でられて、頭の中に何かが流れ込んでくる。今より強い、中級の狐火の仕方が流れ込んでくる。
「どう?出来そう?」
「うん、やってみるよっ。」
イメージを掴むため、手に狐を催し、意識して強い魔力を放つ。すると急激に魔力が持っていかれたとともに、初級の火の色とは違う、青い炎が立ち上がっていた。
「お…おぉぉ…出来たけど…つかれるぅぅ…」
「頑張れ!後10秒くらい!」
まってこれ10秒くらい維持してると結構やばいんですけど…!?頑張れ踏ん張れ俺ぇ…!
「やめっ!」
「ぜぇっ…はぁっ…ぜぇはぁ…つ…つかれる…」
「よく頑張ったね。さぁ、魔力を回復するから、大人しくするんだよ?」
「にゃーいっ…。」
また頭からなにかが流れるとともに、疲労感が無くなる気がする。多分ツリスさんはゆっくり魔力を渡しているから、この前みたいな急成長はしない…と思いたい。
「よし、終わったよ。疲労は抜けたかな?」
「うん、なんとか。んで、あれをたくさん繰り返せばいいんだよね?」
「うんうん。とりあえず。狐火を維持して、魔力を補給して、休憩を〜…そうだね、維持できた秒数✕3を休憩時間と定めようかな。」
「じゃあ今の俺は30秒くらいの休憩時間か〜…ってもう維持しなきゃいけないじゃん。」
すぐに30秒経ったので、休憩はやめて狐火維持に務める。さっきと同じ感覚だが、結果は15秒と、なかなかに良い結果が出せたんじゃないかなと思っている。
「お、5秒伸びたね。私の魔力と雪餅の魔力の結合力が強いのかな?」
「伸びたってことは、そうじゃないかなぁ…?ふぃ…さぁ、頑張るぞ。」
その後、更に繰り返し、21秒、30秒、42秒、46秒と伸びていっている。
「よし、今日の鍛錬は終わり。よく頑張ったね〜。ついに大台の1分到達だよ?」
「まぁツリスさんが魔力を分け与えてくれるからバカスカ打てるだけなんだけどね…?ここまで強化された俺の魔力、全てツリスさんの魔力なんじゃないかなぁ?」
「そうでもない…かな?私の魔力が雪餅の魔力に変換されていって、結局は雪餅の力となっているからね。証拠として、毛づくろいをしなくとも、しっぽの毛がもふもふじゃんっ。」
お、ほんとだ。魔力をたくさん込められたからもふもふなのかな…?
「これで魔力は…まだ足りない…あと少しだね。」
「なんか2日で自分の憧れていた魔法を放てるって…いろんな気持ちになれるね…。」
「私が雪餅の監督をしてるからかな。キャラがどんなにその技を時間をかけて会得したとしても、私達はその技を見て、魔法を構築して、細かいところは調整して……そして再現って所かな…?」
「それ、口では簡単に言うけど、とても難しいことだよね。俺に伝授させるのも加えると、更にだよね。」
「まぁ難しいけど…慣れれば簡単だよ。
その慣れが、俺ら一般人にとってすっげぇ努力なんだなとわかった。
「さ、今日は疲れたでしょう?この前入ったとろける温泉でも入って、疲れを抜いてまた魔力鍛錬に努めよっか。」
「はーいつりすてぃーちゃー。」
ほぼ自分ではできない事だが、成長が実感できて嬉しい。今日は休んで、明日に再現できるように頑張っていこう。
……
転移して、この前通った温泉にまた行くことにした。店主の見た目には相変わらず驚くけど、着替え場に入室していく。
…魔力を使ってはツリスさんの補給があったからか、汗だくだ。しかし、洗ってもいないのに肌がぷにぷにになった…気がする。
ツリスさんのお手製シャワーで髪と身体を洗い、自分でしっぽの手入れをして、入浴。
「雪餅〜?」
「どったのツリスさん。」
「雪のしっぽを触らせてくれよ〜…」
「耐性切ってないし、触っても大丈夫だよ。」
自分のしっぽが水を吸って重いが、ツリスさんに見せる。水を吸ってあまりモフり心地は良くないと思うのだが…
「あ、しっぽ乾かしてからで…いや、敢えてこの状態で触るのもありかな…?」
「そ、そうなの?」
「そっそー。じゃあこの前みたいに私の膝に乗っかって頂戴?」
「いえっさー。」
ツリスさんの柔らかい膝に乗っかって…温泉の中からしっぽが触られる感触がする。
「うむ。やっぱり水に濡れていても雪餅のしっぽはしっぽだね。触り心地が違うよ。」
「そんなに?自分のしっぽだからあまり意識はしてなかったけど…」
「今後とも質のいいしっぽを私に触らせるために手入れを怠らないことだよ〜?」
「はーいっ。まぁしっぽの手入れはそろそろ自分でやらなきゃな…って思ってた頃だし…」
そう思った理由は、非雨に自分で手入れしたもふもふしっぽをモフらせてあげようという心意気だ。
「ふむ。その心意気よし。精進して非雨を喜ばせてあげな?」
「りょーかーいっ。」
そして身体を拭いて着替えて、今回はお腹を冷やさないために昆布と鰹節の黄金出汁をツリスさんにリクエストした。
「またなんて風呂上がりには微妙なものを…」
「お腹冷やしなくないし、お出汁を飲みたいと思っただけだよ〜。」
「わかったよっ。さ、飲みな。」
無地の温かいアルミ缶を渡される。開けてみるとお出汁のいい匂いがする。心なしか醤油の匂いがする。
飲んでみる。はぁぁぁぁ…お出汁美味しい…いくらでもいけてしまうね…
ふぅ…満足…アルミ缶をツリスさんに渡す。こうすることによってムダのない資源利用活用ができるんだとか…
「世間では、マイクロプラスチックが流行っているんだってね?そういうのを出さないために、リサイクルはしっかりとしないといけないんじゃないかな?」
「あ〜…授業でやった気がする。それらをなくすためにどうしたら良いのかとクラスのみんなでトークしたな…」
風呂上がりにマイクロプラスチックの話をするのもどうかと思うけどね…
「雪餅、そろそろ寝ようか。」
「でもまだ眠たくないんだけど…?」
「安心しぃやぁ。地球の神直々の耳かきで、お主を眠りへの道に誘ってやろうっ。」
そりゃ確定で睡眠に入れることだ…耐性を解かないようにしないと地獄を見るなこりゃ…
「私の膝においで?」
「はいは〜いっ。」
頭をツリスさんの膝に乗せる。まるでソファーみたいに柔らかい。すげぇ柔らかい。大事な事なので2回いいました。
「温泉に行ったときにも雪餅はの膝を堪能してたんだよ?」
「そうだけどさぁ…地上と水中ではちがうじゃん…はーやばい…やみつきになりそう…」
「なったらなったで、私が雪餅で色々実験するだけなんだけどね?」
怖い怖い…と、そんなトークを続けていると、俺の狐の耳に耳かき棒が入ってくる。冷たい棒が耳の中をすりすりとやっていく。
「あ゛〜〜……脳がとろけるぅぅ…」
「溶けたら治癒魔法で治療してあげるから…」
比喩表現だよ…!そんだけ気持ちいいんだよ!耳かきにわかの俺には十分すぎる刺激なんだよ!()
「そうかい?なら耳の先端をさわさわ〜っ…」
「あぁ……っ…微妙にくすぐったくて…やばい…」
…
「次は〜…みみのあなふきん〜…ここは汚れがたまりやすいからね〜…私のしっぽで掃除しなきゃ〜」
「しっぽの耳かきは…すき…さいこう…」
…
「最後は奥〜…ここもね、出やすいからね…耳かき棒を入れて、こしこし〜…」
「う〜〜…あたまやわらかくなるぅぅ…」
耐性を付けてもなおこれとは…耐性つけてなかったら暴れてたんじゃないかな我…
「これで両耳とも終わりだよ〜っ。」
「は…はひぃ…ふぅ…」
おわったぁぁ…なんかスッキリしたけどドキドキした…
「さぁ…次は寝る時間だよ…覚悟するんだね…」
「寝れるかなぁ…」
さっきのせいでドキドキして寝れるかどうか不安になってきた…
ツリスさんの胸に自身の頭を吸い寄せされるように抱いていく。
トクトク…と母性を感じるような音が聞こえる。安心する…魔力が落ち着く…
「はぅぅぅ…すりすり…」
なんだか自然と求めてしまう気がする…同族意識…なのかな…俺は、あっという間にそのまま、眠りについてしまった。
………………
おはよ〜。なんだか身体が軽く幸せな気持ちで寝れた気がする。
さて…非雨達は…居ない…そりゃそうか、ツリスさんの部屋で寝てたら居ないよね。
「あ?起きた?おはようおはよう。」
「昨日のアレは…凄かったよ。耳かきを除けば結構良かったかもしれない。」
「あっはは。雪餅の耳かきは楽しかったよ。またやってあげるね。」
今度は俺の耳を人間並の耳の感じ方にしてくだせぇぇ…
「さ、ご飯を食べよっか。効率飯がいいかい?それとも普通のご飯?」
「効率飯ってなんぞ…イメージとしては、まずいものだけど1日分の人間の栄養を補える錠剤…?」
「イメージとしては合っているよ。だけどいろんな味がね、ここ、展開では流行っているんだ。」
「と言うと?」
「極上肉や熟成した魚の刺し身…果物や野菜の味もあるんだ。ここらへんの味調整は、エルフとか肉食系から生まれた神に合わせた味になっているんだ。所謂種族多様性…グローバルってやつだね。」
多様性は大事って、授業でもしっかり習っているし、それをここまで持ってくるということは、天界でも差別があったから…ということから来ているのかな?
「差別…というか、弱い神がこの天界に慣れるための措置だったりするよ。自分でその姿をとっているのはともかく、自分の意志ではないやせ細った神を見なくはないでしょう?」
「ま、まぁそうだね…」
「ということで、効率飯は駆け出しの神も食べるという優秀なご飯というわけだね。」
それらを聞いても…食感も楽しみたいし…そもそもそこまで急いでいるわけでもないしね。白飯最高!
「そっか〜。じゃ〜…これでどうだい?」
「収納庫から持ってきた感じでしょ?」
「正解っ。だが作りたてのご飯だよ?」
そう聞くと、電子レンジでチンしたとは思えないほかほかが感じられる。ひと目でわかるのは、肉の焼き具合。あつあつになるまでチンしたら、パサパサになることが多いからね。
「電子レンジ以外にも温める方法はあることを忘れちゃだめだよ〜?ま、作りたてのほうが美味しいのは認めるけどね。」
「だよねだよねっ。じゃあ…すわってーのー、手を合わせてーの…」
「「いただきますっ!」」
……
〜…すぅぅ…ご馳走様でした〜。
いやぁ美味しかったねぇ。作ってから料理を収納庫にしまったのにも関わらず、作りたてで肉はジューシーで、野菜は柔らかく旨味が詰まっていて、とっても美味しかったね。
「さ、少し休んでから仕上げに入るよ。」
「アイアイさーってぃーちゃーっ。」
………
休憩も終わり魔力鍛錬をして、最終的には中位の狐火を1分半維持できるようになった。
「十分ブッ放せるほどの魔力は溜まったよ。雪餅!偉いっ!すごいぞっ!」
「よっしゃー!俺はただ維持してただけだけどー!()」
「それでも吸収効率も高かったね〜。それらは凄いことなんだよ〜?」
「そう…?魔力体だからすぐ吸うもんだと思ってたけど…」
とにかく、ゲームの技を自分で放つのはとても楽しみだ…!
「じゃあ、雪餅が余計な魔力を使わないように、私が魔力式を送るから、それを発動してね〜。」
「ういっす。」
ツリスさんが頭をわしゃわしゃと撫でると、技をどのように、どのくらい魔力を込めればいいのかわかるようになってきた。
今度は俺の番。自分の魔力を魔法に込めて、天高く片手を上げ、出来た炎の玉をフリスビーの要領で投げる。とんでもない脱力感が出てきたが魔法を見届けるために地に足付けて立つ。
最初は小さな爆発が起き、更にそれを取り囲むように大きな爆発が8発連続で起きる。文字に起こすとなんとも地味なもんだが、実際に見るのじゃ大違い。大迫力で、これこそ男の求めたロマン…ってもんだね。
「かぁぁぁぁ……できたぁぁぁ……」
「おめでとぉぉぉぉ!!!大迫力できれいだったよ!攻撃面は…ちょっと出が遅いけど、殲滅戦なら貴重な攻撃役だよ!」
「ちょちょちょ…俺はそんなのに参加するつもりはなくて…ただ技を再現するために頑張ってたんだからさ…」
「わかってるけど、すごいじゃん!」
ツリスさんが子供のようにはしゃいでいるが、内容はちょっとばかし不穏なことを言っていた。
「あ、殲滅戦と言っても、ゴブリンだのオーガだのそういう群れを一匹残らず消し飛ばすとか、そんなかんじだからね?」
あぁ良かった。なら大丈夫だ。
このあと非雨の元に帰り、非雨に
「今度雪餅の放った魔法を見せてよ!」
と言われ、魔力の回復と共にいつも通りの日常を過ごしていったのさ。ちゃんちゃん。
あけおめ!(遅い)
と言う事で毎月投稿1月編は完了です。次は2月!
雪くんの魔法の元ネタがわかりましたかね…?
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