茶番二十四話 花火大会へ行こう
実話を練り練り。(?)
ーーー事の発端は、紅葉からの提案ーーー
珍しく紅葉が俺の家に遊びに来たのだ。そして次に祐介がやってくる。
祐介は最初、紅葉を見て『誰?』と口にした…まぁ、そりゃそうだが。
だが、性転換して男子の姿になると
『ん?あっ、紅葉!?えっ!?あの子が!?』
と驚いていた。
これは俺も初耳なのだが、俺が知らないゲームで意気投合し、そのまま友達になってそのゲームの情報交換をしてるとの事。
そして2人で遊ぶ事も多々ある。この姿で遊ぶ姿を見れば、コスプレ女子にイケメン男子が付き合っている光景にしか見えないだろう。
「んでさー、近々花火大会があるんだけどさ、それ、3人で一緒に行こうと思ってるんだよ。どう?一緒に行く?」
「あー…俺はどっちでもいいや…あー、うーん…やっぱり行こうかな…?」
「行こう。この連休何にも予定なくてさ…八合をボッコボコにしてやろうかな…と思っていたけど…」
「こ、怖ぁ…祐介ってそんな奴だったんだ…」
「おいィィ!?この前話したじゃねぇか!女の子に強制的に性行為に及んだって事!こちとら知り合いがそんな犯罪行為一歩手前…いやそんな犯罪を起こしている知り合いがムカついてムカついて仕方ないの!だからボコし「わかったわかった!冗談だから!悪かったよそんな反応してさ!」
「へぇー…君達ってそんな関係なんだぁー…へぇー…」
「「どんな関係なんだよ!!」」
とツッコミを入れる2人。真面目に付き合ってるようにしか見えない…まぁ、絶対にそんな事は無いのだが。アニメの見過ぎだろって言われても何も言えない。
「んで、何日?」
「んー、情報屋によると、3日後の午後7時…○○市〇〇公園で打ち上げ…」
余分な情報まで言うね…まぁ場所は○○公園か…
「なぁ、その情報屋って誰なんだ?」
「主にネットで繋がっている友人だねー…まぁ、俺達が住んでいる地区に居るんだけど、その人から主に情報を貰ってるね。あ、実際に会った事あるけど、マジでイケメンやで。」
「マジか。」
「いやー、ネットやゲームは便利だよ。様々な情報が入ってくるもんでね。そのゲームから知り合ったネッ友が居るからそっから各国の情報が入る入る…面白い事この上ないよ。」
…この時点で、紅葉との雑学知識比べ合いっこには勝てないと思った…まぁ、元々勝てないのだが。
と、紅葉との情報を一通り受けた後、3人で遊んだのだが…俺からの遊びに付き合ってもらう事にした。
内容は漢字の読みを当てあいっこ…まぁ、成績優秀な祐介と、情報提供屋の紅葉に勝てるわけ無いと思ったが…まぁやるだけやろう。
「ではー…ドン!」
俺が出したのは、『蓙』。
俺は主にクイズ番組をよく見るのだが、その漢字を最後の問題に出して、制限時間ギリギリで解かれた問題だったが…」
「こざ、やね。」
「ござ、で合ってる?」
見事2人同時正解。
祐介は『簡単簡単。』と言い、紅葉は『勘でやったけど、当たってた。』と言った。
次は祐介の番…
出題漢字は『金鍍金』。
全く分からない…
「すまねぇ、俺も分からねぇ…雪餅は分かるか?」
「分からん…何これ、きんわたかね?」
「アホか…正解は『きんめっき』だよ。」
「あっ…そう言えば、ネットアニメで鍍金って付いたアニメ思い出した!あぁー…くっそが…」
次は今現在悔しがっている紅葉が出題する。
「えー、『鴎』わかるかな?」
「んー…分からない…だけど、『おうがい』って打ったら予約変換に『「鴎」外』って出るけど…なんだ…?」
「んー…思い出せん…どっかで見た事があるんだけど…」
鴎外から連想できるもの…うーん、うーん…
「ヒント、鳥だよ。」
「あぁーわかった!かもめ!」
「正解。」
「あっ、かもめか!くそぅ…俺より学力低い雪餅に先に正解されるなんて…不覚。無念。」
「それどう言う意味!?ねぇ!?
…ハァ…まぁいいや。そのヒントの鳥って言う奴が無かったらわかんなかった。」
「いや、なんで鳥って言うヒントで当てたの…謎でしょ…もっとあるでしょ?鴉とか鶯とか…」
「実際に書いてみると全然違うけどね…」
と、漢字出し合いっこは、非雨が差し入れで持ってきてくれたクッキーで幕を閉じたのだった。
…
3日後…
性転換も解け、12時に最寄りの駅集合となった花火大会。
起床は9時。この2日間、非雨から強制的に飲まされる事はなかった性別転換薬なのだが、今日くらい男の姿で花火大会に行ってみたいものだ。
胸についていた2つの大きい質量を恋しく思ってしまう俺は末期だな、と思っている。だが仕方ないんだ。3度もその薬飲まされて4週間、ずっと女の子の姿で尚且つ大きくて丸っこい質量が2つある状態で慣れない方がおかしいと思ってしまう。
1回目は、自分の不注意で飲んでしまったのだがね…それが非雨のやばぁいスイッチを入れてしまったのだろう。
あの姿は俺好みなのだが…地味に暮らしが大変で大変で…月並みの感想しか言えないが、重心が前に行くせいで少しばかり日常生活に支障が出ていたのだ…まぁ、それも4度も性転換していたら慣れたのだが…人間って凄いんだなと思った瞬間である。
そんな状態にしてしまった張本人、非雨は花火大会に行く準備を終わらせ今か今かと楽しみにしていた。ソフランちゃんも行くのだが、ちっこいリュックに懸命に背負い歩くその姿は、誰もが愛おしく愛くるしい、誰もが萌えるだろう。
「非雨、今日くらいは性転換せずに楽しませてくれよ…?」
「おっ?フリなの?しちゃっていいの?」
「バカっ!そんな訳ないでしょ!?流石に花火大会は普通に行きたいよ!」
「ちぇー…花火にうっとりとする可愛いロリ雪餅を後ろから撮って家宝にしようと思ってたのに…」
そんな事考えていたとは…可愛い見た目しておっそろしい考えをする娘だ…
そして、1時間後。待ち合わせまで後2時間と言うところで非雨がコーラを差し出してきた。一瞬性別転換薬かと構えたが、あれは透明だから違うなと思った。
そしてそのコーラをクイっと一気飲みする。キンキンに冷えたコーラを一気飲み出来る至高…たまらん。
そしてミントチョコアイスを差し出してきた。綺麗に盛り付けられたアイス。まるでどこぞの高いけど美味しい全国アイスチェーン店を彷彿とさせる盛り付け方だった。
スプーンで持ち上げ、透明で小さな氷が本当に細かく散りばめられているアイス。綺麗だなと思いつつ食べ、舌で溶かし、飲み込む。
「ん” っ!?ふぎゃっ!?」
突如視界が真っ白くなった後、気がついたらフローリングの床に接吻しようとしようとするほど近づいていた。慌てて床に壁ドン…まさに床ドンをやった。
「いたぁ…って、またかぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
はい、皆さんお分かりの通り、性転換…5度目の性転換です☆馴染んだ胸の2つの質量が戻ってめでたしめでたし…
ってなるかアホォオォォォォ!!!
そしてなぜ地面に接吻しかけたのかと言うと、椅子に座り、前屈みでアイスを食べたが、性転換して背が小さくなってバランスが取れなくなったからこうなったと思われる…そんな馬鹿なと思う人…表に出ろ…急に背がちっさくなってバランスが取れる訳ねぇんだよ…しかもアイスを食べた後だしさ…
「ひーーーーーーあーーーーーーーー?」
「アハハ…そんな可愛い顔して、そんな睨まないでよ…ハイ、私が悪かったです。大変申し訳ございませんでした…」
非雨から反省の言葉を貰えたので良しとしよう。あんまり怒っても何にもならないからだ。
ちなみに犯行の手口は、あらかじめアイスを型に入れて、冷蔵庫で冷やした性別転換薬を刷毛で塗った…との事。
そんな事やった事無いのだが、あのアイスの氷結具合を見るに成功したのだろう。恐ろしい。
「はぁ、過ぎた事は仕方ない…服を着替え直すか…」
今の姿はだぼだぼの服を着た小さい女の子だ。そのくせ胸は大きいのだが…
なので、前から作っておいた女の子用の服を着る。
まぁ、結果として、男の視点から見たら超絶可愛いとなったので、良しとしよう。髪は…結んでと…こんな感じでいいかな?母親のやっていたものを見よう見まねでやったのだが…多分うまく仕上がってるだろう。
非雨からも、『それ可愛い!抱かせろー!こんな可愛い子、母性がくすぐられる!」
と好評。まぁ、非雨の視点はそんなにあてにはしてないのだがね…
そして約束の12時…最寄りの駅にみんなが集合した。紅葉はいつもの姿で、祐介は着物を着ている。長身イケメンが着物を着ると、なんとも言えないオーラが出ている。素直にカッコいいと思ってしまった。
「祐介!その着物いいよ!映える!めっちゃ映える!」
あまりにもイケメンなので写真に収めておこうと思った。多分この先この姿を見る事は無いと思ったからだ。
「お、おい道端でそんなパシャパシャ撮られたら恥ずかしいっての…ていうか、後で消しておけよ?」
「うん!玄関前に可愛い額縁に入れて家宝にするよ!」
「よし決めたお前をぶっ殺そう。」
「冗談!マジで冗談だって!」
だが、素直にカッコいい。何というか、男とは思えない色気というか…いや、それは流石に買いかぶり過ぎか。だけどカッコいいのだ。
「あのー。2人でお笑い劇場してないで、さっさと電車に乗らない?」
「私達は先に言ってるze。」
と紅葉と非雨とソフランちゃんが先に行こうとする。慌てて列車の発車時刻を見ると『後2分前』と出ていたので、急いで改札を通り電車に乗った雪餅と祐介でした。
そして改めて紅葉の格好…まぁ、張り切って着物を着てきた祐介とは違い、普段着なのだが…普段被らない帽子を被っている。
「ん?俺の顔に何か付いてる?」
「いや、紅葉が帽子かぶってるの珍しいなって。」
「非雨さんに『被ったら絶対可愛いよ!』って押されて被ったんだよね…」
と紅葉は言い非雨の方に視線を向けると、ニカッとしながらグッドサインを向けていた。釣られて非雨の膝に座っているソフランちゃんもグッドサインをする。
「だってさ、今日暑いじゃん?こんな可愛いまたはカッコいい子達が熱中症でぶっ倒れている姿なんて見たく無いからねー…それに、紅葉く…うっうん、紅葉さんは帽子を被った方が可愛いかな?と思って被せてみたらドンピシャだよ!可愛いよ!」
「可愛いって言ってくれるのはありがたいんだが…この姿でも中身は男なんだよなぁ…祐介、どう思う?」
「何で俺に振るんだよ!?えーと、まぁ、帽子被った紅葉も可愛いと思うぞ…」
と、非雨の好みがまた更に広がった件を除けば、普通に話していた。
そして終点。列車から降り、人生で多分15回くらい来ているであろう都心駅に足を踏み入れる。
そして午後1時から午後3時までの2時間、特に何もなくただひたすら5人で都心駅をぶらりぶらりとしたところで、そろそろ地下鉄を乗り継いで○○公園に着いた。
そしてレジャーシートを広げて座る。バテたのは俺だけで、みんなはまだ元気だ。
「よ、よくそんな歩けるね…2時間くらいずっと歩き回ってよく疲れないね君達…」
「サッカー部ですから。いっつも走り込みしてるしな。」
「こんな身だけど一応野球部ですから。引きこもり舐めんな。」
「私獣人ですから。ただのコスプレ女子とは違うからね?」
「わたしはお姉ちゃんの背中に揺られてたから特に疲れて無いや…」
と、4人にバッサリ斬られた。
非雨の発言は地味にヤバめな発言だったけど、多分この会話を聞いている人は、コスプレ女子が役になりきってるだけ、と思ってるであろう。
そして現在時刻は午後の4時半。花火が打ち上がる時刻は7時…まだ時間に余裕がある。
「祭りのジュースは高いからさ、コンビニで買いに行かない?ちょっと遠めだけど。」
「疲れてんのにまだ動くんかいな…」
「何なら今度は雪餅背負う?ちょっとソフランちゃんには我慢してもらう事にあるけど…」
「うん、大丈夫だよ。お兄ちゃん、ずっと歩いててお疲れ様。」
「な、なんか情けない…大丈夫、そんなちっさいロリっ娘に非雨の背中を譲られるほど俺はまだまだ疲れてない…」
「その割には肩で息してるけど大丈夫?」
「コーラの力よ、我に力を与えたまえ…笑」
「神頼みじゃねぇか!」
「呼んだ?」
「「ツリスさん!!??」」
と、何処からかツリスさんに似たような声がしたが、誰もいない。
「今ツリスさん居なかった?」
「声だけ聞こえたね…幻聴?」
「ツリスって、あのツリス?」
「そそ、非雨の姉で神の人。」
「ふーん…この世界では居ないんだよね?」
「居ないはず…多分。今度権力使って確かめ…いや、この権力もツリスから授かったやつだからね…俺、何にも規約に反して無いんだけどな…」
「「規約って何それ初耳なんだけど。」」
と非雨と祐介が食いついてきた。
実際、今俺が使える権力は、『発動しよう!』と思念し、○○しようと思うとその願いが何でも実現するチート能力…しかし代償があり何故かこの姿で権力を使うと怠くなる。連発して使うとこの前みたく全身筋肉痛が生易しいと思えるほどキッツい痛みが襲う。あの時はキツかった…
そしてその力を故意的に邪念…まぁ、人を殺す、犯罪行為、国家叛逆…などなどに役立てるとかのそういう使い方をするとこの身が一瞬にして滅ぶという規約を交わしている。だが、正当防衛、人を守る為に人を殺す、などの行為は許される。ちょっと甘めな判定である。
え?性別転換薬を作って天津や紅葉や巡邏などの人を呼び出してるじゃ無いかって?
物理的や精神的に殺してないからセーフです。それに能力の受け渡しとかも常識を弁えている友人にだけやってるし…多分大丈夫でしょ。
と、一連の規約を説明する。だけど、非雨が来たのは、故意的にでは無く偶然だ。それは分かってもらいたいね。
まぁ、最近出番の無いラデルちゃんは故意的に呼び出したんだけどね…ハハ…
「そいやさ、俺の中学1年の頃に困った事があったんだけど、話していいか?」
「なんでソフランちゃんが紅葉の膝の上で寝てんだよ…話していいけど…」
「何故か知らないけど懐かれたんだよ…まぁ、端的に言うと、中1の頃、3回告白された。」
「ハァ!?中1の頃はまだまだ俺たちが平和な時だったけど…えっと、一応紅葉って男だよね?」
「そうだよ男だよ!今は性別変えるのが面倒臭くてこの前で居るんだけどね…それに暗い中でも日中のように見えるからね…っと話がずれた。
なんかね、何故か知らんが俺の見た目が女の子っぽく見えたから告白されたんだよ…」
「この頃から既に紅葉は男の娘の道を歩んでいたのか…」
「歩んでねぇよ…」
「いちち…ほっへたちゅれれなひで…(ほっぺたつねらないで…)」
つねられるのが地味に痛い…
「えー、コホン。それに、当たり前だけど告白は全て断ったからな…更にさ、その頃、親しくしていたネット友達と一緒に遊ぼうってなって遊んだんよ。」
「ふむふむ。」
「帰りの列車に乗るときに、おばさんが『あらあら、付き合ってるの?若いねぇ。』と言ったんだよ…ちなみにそのネッ友は何処にでもいる普通の男子中学生だったんだよ。そしてこの前俺が告白を受けた事を思い出して、そのおばさんには俺が女の子に見えたって事だったんだよ。」
「うん。」
「もうね、そのおばさん潰したかったわ…地味に女の子って言われんのやだなんだよ…」
「でも今は性別も女の子でしょ?なんでそう言われるのが嫌なのに性別を男に戻さないの?」
「この身体の方が便利なんだよ…夜目も効くし身体能力も上がるし、いい事づくめだからさ…」
「その身体を活用してくれて、作った俺は嬉しいよ。」
「やめろ…俺が恥ずかしいから…俺が変態みたいじゃねえか…」
と紅葉は顔を赤らめる。
そして俺は背後から来る人物に気づかなかった。
「へへへー…だぁーれだ!」
「非雨でしょ…」
「あったり!そして、雪餅が好きな肉巻きおにぎり棒を買ってきたよ!」
「お、サンキュサンキュー。」
実はこれ、割り箸にお米を付けて、更に豚肉を巻きつけてタレに付けた後、鉄板で焼くという手順を踏んだ食べ物なのだが、すっごく美味しい。
個人的に、美味しさの鍵を握るのはタレと鉄板で焼く事だと思う。鉄板焼きの美味しさの魔力はすざまじいね。
「雪餅ー、あーん。」
「ん?」
パクっ…
「んっ…ちょっと熱い…だけど、美味しいね。最高。」
非雨からあーんをされた。これを男の頃にやって欲しかったな…としみじみ思いながら肉巻きおにぎり棒を食べる。
「そう言えば、祐介は?」
「あ、あいつね、1人でコンビニ行って腹を満たしてから花火を見るって言ってたな。」
「あいつ呼びって、君達そんなに仲良いんか。」
「しーっ…内緒。これ、あいつには内緒ね?」
「別にあいつ呼びを知ったってどうこう言う奴では無いと思うぞ祐介は…」
と、ちょっと今の紅葉を見てみる。
赤みがかった髪色に黒色の眼。スマホをいじっているが、膝にいるソフランちゃんを起こさないようにしている。
そしてソフランちゃんの緑色の髪色がよりアンバランス的な、だけど腹違いの姉妹を彷彿とさせる何かがある。
「ん、なんだよ。」
「あー、いや、ソフランちゃんを膝に寝かした今の姿の紅葉が、腹違いの姉妹っぽく見えて可愛いなぁと思ってさ。」
「おいおい…それじゃまるで俺がロリコンみてぇじゃねぇか…雪餅じゃねぇんだし…」
「んー…帽子を被った赤みがかった髪を持つ女の子と我が可愛い妹を組み合わせると、こうも破壊力が増大するとは…紅葉さん、今の姿で写真撮っていい?」
「あー、良いっすよ。だけどネットに上げることは勘弁してくれ…」
「りょーかい!」
と正面からパシャり、真上からパシャりと非雨がハイテンションな中、祐介が帰ってきた。
「よぉ。ほれ、これは俺のおごりだ。飲め飲め。」
と言われて投げ渡されたのは追加のジュース。こんな暑い中水分を取らなきゃいけないから、祐介の心遣いには感謝だ。
そして祐介が帰ってきて何も起きずに2時間経過…もうそろそろ花火が打ち上がりそうで周りがざわざわしている。
「おーい、もうそろそろ花火が打ち上がるから、ベストポジションに移動すっぞー。」
と先頭を仕切るのは紅葉。
「では私はこのちっさいロリッ娘2人を迷子にさせないようにするよー。じゃ、ソフランちゃん、雪餅ちゃん、手を繋ごうね?」
「なんでちゃん付けすんだよ!家の中では兎も角、祐介達の前でちゃん付けはしないで!恥ずかしいから!」
「となると俺は最後尾か…まぁ、雪餅やソフランを見逃さないようにするよ。こんな人混みの中目立つ格好してるからすぐに見つかると思うけどね…」
と、俺達は移動する。
そして紅葉が言うベストポジションに移動した後、花火が打ち上がるアナウンスが流れる。
《これより!第38回目!○○市花火大会を行います!花火打ち上げまで、さぁーん!にぃー!いぃーち!どぉぉぉぉん!》
張り切っているアナウンスの掛け声にか合わせて花火が打ち上がる。記念すべき1発目は、すっごく綺麗な花火だった。
そしてその打ち上げを皮切りにどんどんと花火が打ち上がり、周りにいる人のカメラのシャッター音が鳴る。
「綺麗…」
「綺麗やねぇ…おっ、あれは豚さんか?」
「すごい!わっ!今度はいちごだ!」
と綺麗な花火に心を奪われること1時間。楽しい時間はこうも早く過ぎていく。
《これにて、第38回○○市花火大会を終了といたします!皆さん、帰路につく際は車に十分注意して下さい!》
と注意喚起のアナウンスが流れるろ
そして俺達も帰ろうかとなった所でハプニングが起きる。
「地下鉄は今大変混雑しておりますので、しばらくお待ちください!」
「家が近い人はそのまま帰った方が早いかもです!」
「…おぅ…面倒な事になったな…」
「まぁ…そうだな…どうする?待つか?」
「いや、こっから都心駅に歩いて行った方が早い。だから歩こう。」
「んで、その移動時間は何分かかるんだよ?」
「えー、ナビによると40分!」
「めんどっ!?まぁ、仕方ないか…」
「雪餅ー、あんたしんどいっしょ?私が抱っこして走れば家まで一瞬だけど…」
「あー、大丈夫。ソフランちゃんを抱いてやって。俺は帰ったらぐっすり寝るから…」
「あいさっさー。」
となり、40分間歩き続けて、やっと都心駅に着いた。
「あ”あ”あ”疲れだぁぁぁぁ…」
「お疲れさん…さて、列車に乗るか…」
こんだけ歩いても非雨&祐介ペアはまだまだピンピンしている。紅葉は若干顔に疲れが浮き出てきた。
そして列車に乗り込む。疲れてない祐介が立ち、紅葉、俺、非雨、ソフランちゃんが席に座る。
「花火は綺麗だったけど、まさか地下鉄が混雑してるとはね…」
「そりゃあんだけ人居ればそうなるでしょ…雪餅も見ただろ?開始30分前のあの光景。公園がレジャーシートと人でいっぱいだっただろ?」
「そうだけどさぁ…それにしても疲れた…今日は帰ったらすぐ寝よ…」
「ちょっと待って、雪餅、ちゃんとお風呂入ってね?風呂はちゃんと私が洗うからさ。」
「へーい…」
と祐介と話していた。紅葉が話に入ってこないので見てみたら肘をついて寝ていた。1分もしたらすぐ起きたが。
「いやぁ、紅葉の寝顔ってレアじゃね?
「いや全然レアじゃねぇよ…修学旅行の同じホテルのメンバーは飽きる程俺の寝顔を見てるだろうに…」
「いや違う班のメンバーだったからこそ今の寝顔はレアだったわけで…あー、写真に収めておくべきだった。」
「ねぇ非雨さんと祐介。雪餅は俺の寝顔取ってない?」
「撮ってないな。」
「撮ってないですよー?」
「あぁ良かった。」
と、紅葉が安堵した所で降りる駅に着いた。4人(5人)は改札を通り、紅葉、祐介と別れる。
「じゃ、私たちも帰りますか。」
「そだね。」
「花火綺麗だったね!ふあぁ…眠たい…」
「ソフランちゃん!?十分寝たんじゃないの!?」
「んー…眠いんだよね…なんでだろ?」
と3人で会話しつつ家への帰路に着く。そして帰宅。
家に着いた後、すぐに非雨が風呂を沸かしてくれたのでさっさと体を洗って湯船に入り、そして上がって着替えた後にすぐに寝た俺だった。
次回は少し遅れます。
8月31日に投稿します。