八十六話 ツリスさんの一日(後半)
すいません、少し遅れてしまいました。
昼ご飯も食べ終わり、ロリア達が用事で抜けると言う事で、また2人になってしまった。
何がいい暇つぶし法は無いかと考えていると、そう言えば今日非雨に与える勉強の冊子とか作らないといけない事を思い出した。
えーっと、今週はーっと。
次は魔法について…だが、これは結構な時間がかかる。だが地道にコツコツと教えていこう。
今日は先週の人間の身体の仕組みの復習点と、後は少し魔法に関して話す事にしよう。
ラデルちゃんはどうしているかと観ると、テレビゲームをやっている。今回のゲームは…魚を釣る、シンプルで尚且つ奥深いゲームだ…と説明書に書いてあった。
ラデルちゃんは静かに待って、コントローラーが震えたら沢山振って、そして『釣り上げました!○○○魚!○○○cm!』と文字が描かれたら、ガッツポーズをして喜んでいた。
なにしろその釣り上げた魚は凄く珍しく、そしてサイズがデカイため。その迫力と喜びでいっぱいいっぱいなのだろう。
そんな可愛い姿を見てまた癒される。
非雨と少し歳が離れた、元奴隷で今は大事な可愛い妹。
この子がもっとちゃんとした教育を受けていれば、今頃ちゃんとした場所でこのような喜び方をしたのだろうか。
だが、それがあったからこそ今の関係になった…と言えるのだろうか。
ラデルちゃんは、妹の中で1番大人しめだ。まぁ、今のようにはしゃぐ時もあるが、基本的にみんなの中で目立って行動することはあまり無い。
…『姉』として出来る事は、あるか。
私は、姉というものをよく知らない…が、人間を観察し、それっぽく振る舞っている。
うーん…優しい姉なら、今頃ラデルちゃんのゲームとかに付き合ったり、悩みとかを解消した方が良いのかな…?
…今日は、ゲームに付き合ってみよう。
「おーい、ラデルちゃーん。」
「ん?なーにー?」
「ラデルちゃんと一緒にゲームしたいと思ったんだけど、一緒にやって良いかな?」
「良いよー?ゲームは1人より2人、2人より3人でやった方が楽しいからね!」
ほっ…よかった。
と、言っても、自分で言うのもなんだが、結構ゲームは美味い方だと思う。
だが、ゲームとかで妹をフルボッコにする…と言うのは、神として、姉として大人気ないと思う。
だから、自分でハンデをかけよう。ラデルちゃんに知られずに。
やるゲームは、パーティゲーム。
双六モードで、1番乗りが優言うゲーム。乱数とかを見極めて、狙った数を出せるが、そんな事はやらないでおこう。
そして、しばらく遊ぶ。とりあえず、ラデルちゃんが1位で、私が2位と言う結果となった。ラデルちゃんは小さくガッツポーズをしていた。
さて、もうそろそろ非雨達が帰ってくる時間だ。
宿題を用意して待っていると、非雨から念話が来た。内容は
『今日、雪菜さんが来たいと言ってるけど、大丈夫?』との事。
この前来た時に心を覗いてみたら、非雨に敵対意識は無く、しっかりとした女の子だった。
来ても良いよー、と伝える。
伝えた後、ラデルちゃんに、
『今日は非雨の友達が来るからねー。』
と伝える。
ラデルちゃんは何も言わずコクリと頷いた。
その仕草がちょっと可愛いと思ってしまった。
「ただいまー!」
「おじゃましまーす。」
非雨達が帰ってきた。非雨の言っていた通り、雪菜と言う女の子が来た。
もちろん、ラデルちゃんに幻覚は掛けている。
その女の子に失礼の無いように飲み物を差し出す。神と言えども礼儀とおもてなしはしっかりとしないといけないからね。
「非雨さんのお姉さん、ありがとうございます。」
「いいのいいの。ゆっくりしていってね。」
お礼を言ってくれる辺り、しっかりとした子だと改めて認識する。たまにこういう事をしても、さも当たり前かのようにする輩が居るから侮れない。
非雨とその女の子は学校から出された宿題をやっており、ラデルちゃんがそれに興味を示している。
「姉ちゃん達、それ何ー?」
「ん、宿題だよ?どうしたの?」
「見た事も無い文字と…えっと、なんかいそうな文字式があるから気になったの。」
なんかい…多分難解の事だろう。今日、本を読んで知った単語だと思う。
知識を蓄えるというのは良い事だと思いつつ、3人を眺める。
「この前来た時に思ったんだけど、非雨さんの妹…?さんの目、青っぽいよね。カラーコンタクトじゃないよね?」
「小さい子にカラコンはないよ…普通に遺伝した代物だよ。」
「だけど非雨さんは青色じゃないよね?
……んーーー…これも遺伝かぁ…」
と、その女の子が小難しい顔をする。
「姉ちゃん、からーこんたくとって何?」
「カラコンはね、目の色をね…えっと、あ、あったあった。この薄い膜を目に付ける事によって目の色を変えるの。」
「い、痛そうだね…」
と、ラデルちゃんがまた一つ学んだ所で、非雨達の宿題が終わったそうだ。
ふと気になった。女の子がラデルちゃんに対する意識。悪い事を考えていたらなんらかの対象をしよう。
と思い、その女の子の心を覗いてみると…
(非雨さんのお姉さん、髪色が白っぽいけど、染めているのかな…?だけど優しいし…あ、でも、ストレスとかで白髪になるって事もあるし、その類いなのかな?)
(妹…さんは目が青色…非雨さんの家庭って、外国人が家系に入ってるのかな?だけど、可愛い。)
(家に帰ったら何をしようかなー?)
特にやましい心を持つ事もなく、私は何故か、仕事とかでストレスを感じていそうと受け止められているそうだ。
ぎ、銀髪なんだけどなぁ…
非雨達はゲームをやるみたいだ。私はただ暇なので見てるだけなのだが、今回のゲームは家庭版音ゲーみたいだ。
ボタンでやるから指が動くって言う人も居れば逆にゲームセンターの方がやりやすいって言うのを非雨から聞いた事がある。人には得意不得意があるからそこは当たり前だと思った。
そして時間は流れ現在時刻は午後6時30分。女の子がそろそろ帰るらしい。
「お邪魔しましたー!非雨さんまた明日学校でねー!」
「はーい!また明日ー!」
そしてその女の子が帰って5分後、ソフランちゃんが人として戻ってきた。オリィちゃんは透明化のままフワフワとしていた。
「ツリスー、今日なんか料理手伝うー?」
「あー、1人でやるから大丈夫だよー。気持ちだけ受け取っておくよ。」
「はーい。」
そして晩ご飯を作り、みんなで食べる。今日はカレーにしてみた。小さい妹達に配慮して、甘口のカレーにする。
ラデルちゃんとオリィちゃんが驚きながら食べていた。『結構スパイシーだねー。』と2人は言っていた。
そして非雨達はお風呂に入りに行った。まぁ、非雨はラデルちゃん達の身体を拭く係だと思う。
さて、この暇な時間を見つけて、他世界の見学と見張りをしよう。『昼の暇な時間でなんでやらなかった。』と思った人、勘のいいガキは嫌いだよ。
さて、結果として、何も起きず、ただ戦乱は起きなかったが、やっぱり多国間でのいがみ合いは起きていた。戦乱はやめてほしいと思った。主に事後処理が面倒だから。
さて、みんながお風呂から上がったので、自分もお風呂に入る。地味に1番の楽しみだ。
みんなに内緒にしている所、それはお風呂の粉を使う事だ。今回は柑橘系の香りの粉を使う。
「あぁ〜…うん。特に大変なこともしてないこの身体に染みるー…」
と、ニート紛いな発言をしながらお風呂に入る。いや、ちゃんと働いていますからね?
そしてお風呂から上がる。服もちゃんと着る。この世界では当たり前の事の行い、リビングに戻る。
ちなみにだが、ペルさんの世界ではお風呂は本当に偉い身分しか入れないらしい。魔王とか、王族とか、そんな感じ。
庶民にも普及させてもいいと思うけどなぁ…と、それを行うのは神ではなく偉い人間次第なのだが。
と、リビングに行くと非雨しか居ない。どうしたのだろうと聞くと下の子達はもう寝ちゃったとの事。
非雨に撫でていい?と聞くと耳と尻尾を反応させて「やってくれるの?」と聞いてきた。勿論やるよと言ったら、ほっぺを赤らめながら私の所に向かってきた。
こう触るとやっぱり肌がすべすべで髪の毛が触り心地がいい。まぁ、私が作った身体なのだがね。
元男とは思えないほどに可愛い仕草をするようになった。目を閉じ、尻尾を振り、にっこりと…うん、凄く可愛い。
やがて非雨は私の膝元で寝た。
可愛い。ずっと見ていたい…そう思う気持ちを抑えつつラデルちゃんが寝ているベッドに乗せる。
現在時刻は午後10時。天界の部屋に向かうと、ペルさんが居た。
「やぁ、ちょっと大掛かりな仕事を終わらせてやっと美味い酒を飲めるようになったから、ツリスを誘いに来たけど…大丈夫?」
「大丈夫大丈夫。てか、1週間以上もかかる仕事だったら、言ってくれれば私が手伝いに行ったのにー…」
「ツリスは非雨達が居るでしょ。私だって多分非雨達が寝静まったと思ってこのタイミングで来たんだから。」
「このタイミングじゃなくとも、7時くらいに来たら良かったのに。その時は晩ご飯を食べてた途中だったから、その時に来たらご飯もご馳走してたよ?」
「ありゃ、そりゃうまいタイミングを逃したものだ。と、そろそろ酒を飲もうじゃないか。」
「あいよー。」
と、私とペルさんの酒を一緒に飲み明かして、1日は終わった。
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