八十五話 ツリスさんの一日(前半)
予想以上にながくなりそうだったので分けました。
「さて、非雨達も寝た事だし、仕事でもしますかぁ」
ツリスはそう言うと、天界の自分の部屋に転移する。
「レサイラぁー、お疲れ様ー、今日はもう休んで良いよー。」
「はい、わかりました。」
仕事をしていたレサイラに声を掛け、交代する。最近は本当に頑張ってもらっている。近々何かしら欲しいものを買っておこう。
さて、まずはー…
近々行われる大規模な会議の為に資料を作っておくとしよう。
えーと、会議内容はなんだっけな…
あ、そそ、あれだあれだ、思い出した。
次はー…魂の管理…
ちゃんと異常なく循環しているかどうか確認してー…足りなくなっていたら魂を生成して、と。
「あ、オスゴー様、お久しぶりです。」
「あ、閻魔か、久しぶりだな、あの時はうちの非雨がお世話になった。ありがとう。」
「こちらこそ…問題のある社員の処分をする為に資料が集まり、見事処分出来たもので優秀な人材達は大喜びです。」
問題のある社員…サタンの事か。
どうしよう、私からも何かしらの処置を下すべきかな…?非雨になんかしようとしたっぽいし。
「少し魂が足りなかったもので補給しておいた。これからも頑張ってくれ。」
「はい、分かりました。」
閻魔も優秀だから非常に助かっている。基本的に閻魔が魂の審判で、私が滅びて無くなった魂の補給と循環させる…って所だ。うん、これを覚えてないと全てやってしまうからなぁ…
さって、後はー…ロリアが簡単に人間を生成出来るように資料をまた作っておくか…この前は『人間』の細胞の作りの資料を作ったから、今度は細かな作業が求められる大事なパーツ作りの資料を作ろう。
まぁ、作り慣れている神にはしっかりと生成する工程が頭に入ってるからね。私もその1人だ。
…………よし。作り終わった。
あー…今渡さなくても良いか。ロリアが来た時に渡しておこう。
さって、現在時刻は午前4時…
非雨が早く起きる可能性があるから、ソファーに座っておこう。
「よっ…と。」
非雨達が寝ている部屋に転移する。気配を消し、寝顔を眺める。
(か…可愛い…)
たまに素っ気ない返しもされるが、すやすやと寝ている妹達とオリィちゃんの寝顔が可愛すぎる。
(ちゃんと、守ってあげないとな…
あの時みたいにやらかなさいようにしよう。)
そう思ってリビングに転移する。
え?普通にドア開けて行けば良かっただろって?非雨達が起きたらどーすんだ!
そう言うのを能力の無駄遣いだって?
うるさいうるさい!非雨達が守れていれば良いんだよ!
っと、一人二役している暇はない…いや、あるか。仕事もこの段階では無いし。
少し前からみんなと一緒にご飯を食べる事が多くなったので、今日はどんなご飯を作ろうかと考えている。
一昔前はよくあの店で1人ご飯を食べていたものだけど、その頃の私にゃ考えられない今の生活だろうな、と思う。
「ん、んーー…」
背伸びをする。
…こう待っているだけでは何もする事がない。こんな暇な時間こそ仕事やらなんやらするべきなのだろうが…うん何もない。
こう言う時に限ってペルさんやロリアが来て欲しいと思う。暇すぎる。
テレビでも見よう。何か娯楽番組の再放送でも流れているのかもしれないから、それに頼ってみる。
……うむ…通販番組しかないな…
本格的に面白くなってくるのは6時くらいかな…?現在時刻は4時30分…
1時間くらい、魔法の特訓でもしようかな…多分みんなはまだ起きないと予想する。
攻撃魔法はあのファイヤーフェニックス以外久しく使っていない。うまく使えるかどうかの確認も兼ねて打ってみよう。
的を作り…よし、展開出来た。全方向にちゃんと撃てるか…
あっ…1個外した…うわ…今度は5個も外した…これはまずい。命中精度が低い…よし、やっと全て破壊出来た。
《これを繰り返す事1時間…》
「ふぅーーー…よし、なんとか全て破壊出来た…」
ふと時間を気にすると1時間が経過していたので、部屋に戻る。
よし、まだ起きていない。そろそろ朝ご飯を作っていても違和感は無いと思うし、作ろうか。
今日は…よし、和食にしよう。
鮭を焼いて、味噌汁の塩分を確認して…漬物は…即席漬けでいいか。
じゃん!これは美味いでしょ!
と、1人ドヤ顔をするツリス。彼女は今
朝ご飯の出来が良い事に惚れ惚れしているだろう。
「おはよー…眠い…」
朝ご飯を作って30分が経過した後、非雨が起きた。
朝ご飯を出し、食べさせる。
特に文句も言わず美味しいと褒めてくれるので嬉しい。
続いて小さな娘3人衆。続いて朝ご飯を出してやると非雨より『美味しい!』って言ってくれるため、さらに嬉しい。
非雨が学校に行くための準備をし、オリィちゃんとソフランちゃんが着いて行く。残るのはラデルちゃん。
最近1人になるとこの世界の本をよんでいる…まぁ、非雨が学校から借りてきた本なのだが。
ソファーに座り、本を読む姿はさながら貴族の様に見えてしまう。
…まぁ、分からない漢字があれば聞いてくる。だがそれがまた良いのだ。
「うーん…ラデルちゃんも学校に行かせた方が良いのかなぁ…」
たまに外に出るが、ラデルちゃんはもしかしたら非雨の様に学校に行きたい…と思っているのかもしれない。
そう思ったのでラデルちゃんの心を読む…
(何がなんでそんな動悸があったんだろうか…世の中って広いんだなぁ…)
(なにか甘いもの食べたいなぁ…冷蔵庫から取ってこよう。)
(うん。これが美味しい。これをずっと食べていた姉ちゃんが羨ましいな…)
…目の前の事に集中していたね。ラデルちゃんは。まぁ、学校に行きたいって言った時に備えて色々と準備をしておこう。
「ねぇねぇ、オスゴー姉ちゃん。ちょっと疑問に思った事があったんだけど、聞いて良い?」
「ん?何があったの?」
「なんでこんな人がこう言う人を殺したの?」
「えっ…?いや、前ページに書いているんじゃないかな?」
「いや、この動悸にはちょっとおかしい事があった!なんで付き合おうとしていた男性を先に取られたから、『その男性に付き合っている女性を殺そう』っていう発想!ラデルにはこの動悸はおかしいと思う!」
こ、小難しいなぁ…
「えーっと、ラデルちゃんの言いたい事はわかる。わざわざ人を殺さずとも良いじゃ無いかって。だけど人には様々な思考を持つ人もいる。ラデルちゃんの世界だって、資源や優れた魔法使いを手に入れようと各国が争い事をしてたんじゃないかな?」
「いやぁ…そう言う情報、基本的に入ってこなかったんで…だけどそんな人も居るのか…うーん…」
ちょっともやもやが残ってしまったそうだ。まぁ、この話は昔ペルさんから仕入れた話なのだが。
と、ラデルちゃんがさっきの殺人の動機について考えていると、ロリア達がやってきた。
「やほー、あ、ラデル…ちゃんだよね?合ってる?」
「合ってます。」
「はぁ、良かった。んで非雨は今日は…」
「学校ですねぇ。まぁ学問を勉強する所って言えばいいかな?」
「んー…人間達を簡単に作れるようになったら学校って言う物を作ろうかな…?」
とりあえず立たせっぱなしはなんなので座らせる。テーレちゃんは非雨が居ない事を残念がっていた。
「あっ、今日テーレちゃんが夢中になって見ていたアニメのDVDを借りに行く?」
「お、ありがたい。じゃ、それに着いて行くよ。テーレちゃんの姿は…あー、ツリス、頼む。」
「あいよ。幻覚で尻尾とツノを隠せばいいんでしょ?んなの朝飯前だよ。」
「ありがとー。」
と、ロリアが自分の着ている服を見ていた。まぁ…一言でいうと、コスプレって言えるほど目立っている。
「…この服着替えた方がいいかな?」
「うん、そうした方がいいね。」
まぁ、私も人前に出るにはちょっと微妙な服装をしているのだが…まぁ、着替えましょう。
そうなると困るのはテーレちゃん。まぁ…買いに行くって言う手もある。が、本人の意志があるため、どうしようか…
「うーん、テーレちゃんの服は現時点ではどうする事も出来ないから、幻覚でなんとかするか…」
「ごめん、マジで助かる。」
そう言うロリアは今服を着替えるため下着一枚になっている。ここに非雨が居たらなんて言っていたか気になる所だ。
ちなみにラデルちゃんとテーレちゃんは2人仲良くテレビを見ていた。ラデルちゃんの膝の上にテーレちゃんが乗っかると言うなんとも姉妹みたいな光景だ。
「ラデルちゃーん、テーレちゃーん、出かけるよー。」
「ん?何処に?」
「テーレちゃんが欲しいDVDを借りに行くから、それを借りれる店に行くけど、ついでにラデルちゃんも欲しいDVDがあったら買ってあげるよー。」
「行くー。」
「ありがとう…ございます。」
うん。決まりだね。
と言うわけでラデルちゃんに服を着替えるように指示し、テーレちゃんを手招きして幻覚を纏わせる。
「ん…何を掛けたの…?」
「あー…今のテーレちゃんはこの世界では目立つから、それを隠す為の魔法を掛けたよ。大丈夫。決して悪い魔法じゃないから。そこに鏡があるから見てみよう。」
「あ…ホントだ。わたしのしっぽとツノが無い。そして、かわいい…」
テーレちゃんは幻覚で纏った姿に惚れ惚れとしている。その表情は、数少ない表情変化かもしれない。
現時点では非常にレアな光景を目撃してしまったわけだが、ラデルちゃんが着替え終わったので、出かける。
「いらっしゃーせぇー」
無事に着いたので、テーレちゃんが好きそうなDVDをカゴに入れる。とりあえず…シリーズ全話と…
ラデルちゃんは…中学生を主体とする学園恋愛物を借りるらしい。『シリーズ全話借りる?』と聞いたら『みんながテレビ見れなくなっちゃうから少しずつ見る。』と。
みんなの事をちゃんと考えてて偉いなぁと思いつつそれもカゴに入れる。
「お会計、9720円となりまーす。ポイントカードはお持ちでしょうか?」
「あ、ないです。」
「分かりましたー。えー、1万円お預かりします…280円のお返しとなります。」
「ありがとうございます。」
「またのお越しをお待ちしていまーす。」
特に何も無く借りれることが出来て良かったと思いつつ、店を後にする。
自販機でアイスを買う。同じ味がスーパーにも売っているのだが、自販機で買った方が美味しく感じる時も…あるだろう。
「あ、オスゴー姉ちゃん、この味好きかも。」
と、ラデルちゃんの味の好みが分かったところで家に着く。
そして4人で昼ご飯を食べる。今日は出前のラーメン。決して昼ご飯を作るのが面倒だった訳ではない。決して。