八十三話 ゲームの攻略方法
ツリスの母親さんが帰って1時間が過ぎた。ラデルちゃん達はアニメを見ていた。
そのアニメは小さい頃俺が見ていたアニメなのだが…と思いつつ、テレビの氷を飛ばす攻撃を見て、オリィちゃんがはしゃいだ。
「これ私にもできるじゃん!やぁー!わーい!出来たぁぁ!」
小さい氷の粒を結合させて剣を作るという物なのだが、危ない。幼女にこんな危ないものを扱わせてはいけない。
という事で取り上げて、こういう物は危ないんだよ、と、説明する。魔法は時に便利であり、危ないものなのだ。
オリィちゃんがロリアさんが居ない時は最近大人っぽくなったなぁと思ったが、やっぱり子供っぽいと思った。
ツリスの隣に座り、大人しくテレビを見る3人衆を見て、
「やっぱ可愛い…」
と呟く。
「私から見たら、非雨も可愛いんだけどねー。」
「お世辞はいらない…と言いたいけど、自分でも可愛いかな?と思いつつある。」
「可愛いからね?もうちょっと自覚持ってね?」
「いやぁ、元がアレだからなぁ…うん。なんて言ってるか分かるでしょ?」
「いや、元がアレでも今の非雨は可愛いからね?」
可愛いと言われて悪い気はしない。
だが、元男だからなぁ…それをふくめると微妙な気持ちだ。
とりあえずスマホを覗くと、ついさっき雪菜さんから遊びの誘いが来てた。集合場所は学校の校門らしい。
今ちょうど暇していたところなので、行こうかなと思った。断る理由は…まぁ、作れるっちゃ作れるけど、行った方が良いのかもしれない。
「ツリスー、雪菜さんから遊びの誘いが来てたけど、行っていい?」
「うん、いいよ?楽しんできてらっしゃい。」
案外今日は何かやるのかもしれないと思ったが、考えすぎか…と思った。
「いや?今日はやるよ?何をやるのかは秘密だけど…ふふっ。」
「心読まないでって…びっくりするから…」
「いやー、私が何かしら非雨に関する判断を下した際に、心を読むと思った通りの思考をしていて楽しいよ。」
「…常時心を読む事はしてないよね…?」
「まさか、非雨だってプライベートがある事くらい知ってるよ。」
安心出来ないなぁ…と思いつつ、遊びの誘いなので、お金とスマホを持つ。
そして家を出る。今日は俺一人で行くので、ツリス以外のいつもの面子が
『行ってらっしゃい!』と言う。
俺はその姿さえ愛おしいと思ってしまった。要するにロリコンって事だが…
普通に歩く。透明化魔法を使って後ろから驚かすって言うのも考えたが、やめておく。
そして学校の校門に着く。程なくして雪菜さんがやって来た。
「やっほーー!」
まだ彼女の事をそんなに知らない俺は、この姿だけ見てしまったら、『活発な女子なんだろうなぁ』と思ってしまうであろう。
だけど、あの時はテレビのイケメン俳優とか、勉強で分からない所を聞いてくる。活発な女子もそういう事は思ったりしそうだが、俺のイメージ上、そういう人は影で勉強を頑張っていたり、イケメンに出会っても無愛想な返しをしそうって思ってしまう。
人はどういう思考をするのが分からないので、ツリスのいつでも心を読める能力が少しだけ羨ましいなぁと思う。
「やほー、雪菜さん。今日はどこ行くの?」
「えっとね、今日は私の家に来て欲しいの。両親が居ないから、好き勝手出来るし。」
あぇ?遊びに誘われたから、てっきり遊園地とかゲームセンターとかに遊びに行くと思ってたのに。
雪菜さんの家…まぁ、雪菜さんは俺が家の場所が知らないから、ここで待ち合わせして、出会ったら案内するっていう手順を踏んだかもしれない。
彼女がどう思ってるか分からないが、家に誘ってくれる以上、多少は信頼していると判断していいのだろうか。
「んでんで、来てくれたって事は、私の家に来てくれるって事だよね!?」
「えっ!?あっ、うん。今日は特に用事もなく暇だったから、来たんだけど…」
「じゃあ、着いてきて!多分非雨さんは私の家の場所分からないから!」
「お、おう。」
考えが命中…したのかな?
兎に角、雪菜さんに着いていこう。
そう言えば、今日って日曜日だよね…
雪菜さんの両親、どんだけ働くのに意欲があるんだ…いや、職業病なのか?
まぁ、家庭の事情には深く踏み込んだらロクなことが起きないって誰かさんが言っていたので、あんまり掘り下げないようにしよう。
道中、自販機で飲み物を買い、雪菜さんの分まで買ってあげたら喜んでくれた。
なんでも雪菜さんの分のジュースは雪菜さんの大の好みらしく…まぁ、人の好みを図らずとも買ってしまった俺は強運なのかはたまた偶然なのか…
アルミ缶のコーラをくいっと飲んでいたらいつの間にか雪菜さんの家に着いていた。家は普通の一軒家だ。
「さ、上がって上がって!んで、何をする?」
心なしか彼女のテンションが高い…ような気がする。こういう人って、友達が多そうだけどね。俺があんまり女子について詳しくはないんでよく分からないが。
現在の俺は、かつて変態姉貴から仕草等を矯正された。まぁ、ラデルちゃんを除くが、ツリス達の前ではだらしなく暮らしている。
そこに座ってて、と言われても、初めて来た家で胡座…まぁ、モノホンの女子はそんな事はしないと思うが、そんな事をする訳にもいかず、ついつい正座になってしまう。だが、正座でもスマホはいじってしまう不思議。
「ありゃ?非雨さん、そんなに堅苦しくなんなくてもいいんだよー?後、はい!ジュースとお菓子!コップも用意したから、自由に注いで大丈夫だよー。」
「あー、ありがとう。」
「いいの!非雨さんはジュース奢ってくれたし!」
それにしたって、この量のお菓子…明らかに雪菜さんに買ったジュースの値段を超えている。ていうか多過ぎる。
「ゆ、雪菜さん?流石にこの量のお菓子は私にも食べ切れないかな…」
「あ、ごめん!後先考えずに出しちゃった!ちょっと待って、しまってくる!」
忙しいなぁ…と他人事に思いながら、雪菜さんが2人で食べきれる量のお菓子を持ってきた。
「いやぁ、私の両親、大手お菓子メーカーで働いてるから、日々お菓子を持ってくるんだよね…ハハハ…」
あのお菓子の量はそういうことか、と納得する。確かに大手お菓子メーカーに勤務していたらあり得そうな話だ。
「えぇーっと、非雨さん、なんのテレビゲームをする?結構種類はある方だと思うけど…」
といい、色んなゲームが入ったかごを見せてくる。結構種類がある方だとは言ったが…
かごの中身を見た時、第一に思ったのは、いくらなんでも多過ぎる、と思った。軽く見た感じ、100個はあるのかもしれない。
「えっと…これ、かな?」
と俺が取り出したのは、いわゆるサバイバルゲーム。
巷では100人の追っ手からゲーム内時間で1週間逃げ切るというスマホゲームが大流行しているが、基本的にこのゲームは銃器を基本として戦うらしい。
しかもこのゲーム、インターネット対戦も出来るため、その気になればこのゲームを極める事が出来る。
なぜ俺がこんなに詳しいかと言うと、昔、師匠にめっちゃくちゃこの手のゲームを遊びつくしたからだ。そう言えばこのゲーム、発売されて8年も経つが、未だに人気は衰える事を知らず、新規ユーザーを取り入れている。
言うて、最後にやったのは1年前だが、あの時の戦法が今も通じるかが不安である。
「おぉ、結構popularなゲームを選ぶとは…分かってるじゃないか。」
ポピュラーの発音が地味に良かった事を突っ込みたいが、やめておく。
地味に吹き出してしまいそうだった。
まずは手合わせに3試合程やる。雪菜さんもこのゲームを結構やりこんでいるらしい。
しかーし!累計時間3年くらいやっているこの俺に、勝てるなんて思うなよー!
《試合終了後…》
以外とつおい…全勝したけど、ノーダメージで攻略は無理だった。
「だぁぁぁぁぁぁ!非雨さん強いーーー!」
「アハハ…」
だけど、雪菜さんも強かったので、そう言う相手に全試合白星なのは素直に嬉しかった。
そして、インターネット対戦を始める。人気は衰えるどころか、増しているので、少なくともbotにあたる事は無いだろう。
しばらくして対戦相手が見つかる。そして試合開始の鐘が鳴った後、武器を集める。
が、すっごいカクついている。試しに銃を撃ってみたら、撃っているのに装弾数が変わらない。2秒経った後ようやく減り、リロードしようとしたら全然されない。5回ほどリロードして、ようやく装填し終わった。
「「…」」
雪菜さんもこの異変に気付いているらしい。俺と雪菜さんから発せられた答えは…
「「うん、すっごくラグい。」」
そう、ネットの最大の敵、タイムラグ。なんらかの理由で雪菜さん家の回線がすっごく重くなっている。
だけど試合は始まっているので、まずはそれに熱中する。この場合、素直に試合を辞退して辞めるべきなのだろうが、雪菜さんはその考えはないらしい。
ラグいならラグいなりの戦術がある。俺はそれを師匠に散々言われた。
師匠はこう言った…
『タイムラグの時間を計算し、相手が取る行動を読み攻撃を打ち込む…ラグいのも良いものだ、例えば1秒のタイムラグがあるとしよう。相手が与えたダメージも、それは1秒前の自分に与えている。即ち、ダメージが反映される前に与えた相手を倒せば、そのダメージは反映されない』と。
インターネットゲームをやっているみんなは理解出来たであろうか。
それを実行する事により、リスクはあるものの、回線弱者の特権ともいえよう。
こうして、ラグい戦いはこの戦術により、勝ち星に持って行けたのであった。
「流石非雨さんだよ!勝てないと思った試合がこうも簡単に勝てるなんてさ!」
「まぁ、3年もやっていれば、攻略法の1つや2つは生まれるよ。」
「今度その攻略法を教えてよ!すっごい気になる!」
「ほほほ…その攻略法を覚えるのにはとても辛い事が待ち受けているのじゃぞ…?」
「喋り方が老人っぽいよ非雨さん…」
雪菜さんからツッコミとも言いづらい返しを貰ったところで、回線問題は解決したので、またやり始める。
この後、5連敗したのは、また別のお話。
「うっま!非雨さんすっごく上手い!」
雪菜さんが褒めている原因は、小さい頃からやっていたパズルゲームの新作をやっている時だ。
雪菜さんはこの手のゲームはちょっとしか触れておらず、それ故にこんな感じになったのだ。
「そう?そんなに上手い?」
「上手いよ!初心者の私がわかる方の上手さだよ!もうこんな複雑な組み方からどんな感じに消えていくかって言うの、分からないよ!」
「アハハ…慣れたらこれくらい簡単だよ…」
実際、この組み方も1週間で覚えたものだ。物覚えの良い人なら1日で覚えてしまうかもしれない。
「っと、もうこんな時間か、そろそろ帰っていいかな?」
時計は午後5時30分を指しており、外も若干暗くなっている。
「非雨さんの家、門限に厳しいの?」
「厳しいって言うか…あんまり遅く帰ると妹は心配するし、姉は怒るし…」
ツリスは遅く帰ったって怒りはしないだろうが、ラデルちゃん達は心配しそうである。
「そっか…じゃあ、また明日、学校でね?」
「うん、じゃ、明日学校で。じゃあねー!」
「バイバーイ!」
外に出て見送ってくれるのは優しいのかただ単に純粋なのか…
まぁ、悪い気はしないな、と思う非雨でした。
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