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エピローグ

 エピローグ


 地球連邦軍が<コア=エデン>にアンカーを打ち込む。そのアンカーに向け<ネオ=マルス>からトラクタービームが照射され、<コア=エデン>は地球から離れ、落下を免れた。

 その日、無数の流星が地球の各地で見られた。

 <コア=エデン>や<ルシファー>の破片であるそれらに“PD13”も“触媒”も含まれていなかった。


 <地球連邦>は、ウィルス学の権威ディラノイ教授(啓作の恩師・第二巻第一章参照)の協力を得て、“パルボウィルスB19”を元にPD13を選択的に攻撃する“治療薬”という名の“生物兵器”の開発に成功。

 PD13感染者を感知し空気感染、わずか1日の潜伏期後、軽い感冒症状が2日程あり、頬に赤い発疹が現れる。それはパニックを避けるため、極秘のうちに銀河系中にばら撒かれた。地球人の実に約11%にこの発疹は見られ、『新型リンゴ病大流行』と報道された。感染者が全て麻薬使用者ではないが(ヒトヒト感染のケースもあり)、銀河パトロールは流通ルートの手掛かりになると喜んでいるらしい。

 こうして時間切れ寸前で滅亡の危機は回避された。

 <ヘヴン教>は銀河パトロールの一斉捜査が行われ、事実上消滅した。


 私・流美理と山岡麗子はルリウス星へ無事帰還した。

 ピンニョちゃんがボヂィガードとして同行したが、今の所<神の声>の報復らしきものは無い。<地球連邦>の人と思われるおじさん達をたまに見かける。私たちをガードしてくれているのか監視しているのかは分からない。

 教師のマッスルとザマスはそろって退職、カケオチしたと噂されている。私が十字星雲で<フロンティア号>を無免許操縦した事は緊急事態だったため反古にされた。

 麗子はPD13に感染していなかったらしく、真っ赤なほっぺになる事はなかった。

 彼女は陸上部の大会に途中から助っ人参戦したが、5位入賞にとどまった。これでも凄い事なのだが、部員たちに終始謝っていた。彼女らしい。

 明くんは右腕複雑骨折と全身打撲と軽い酸欠で入院。私たちが十字星雲にいた間にあったサッカーのユニバーサルカップ(旧ワールドカップ)を観損ねて落ち込んでいた。

 ボッケンちゃんも軽い酸欠で入院。ヨキくんもESPの使い過ぎで入院。実は<コア=エデン>にバリアーを張り空気流出阻止と宇宙線防御していた(三分間だけだけど)。

 みんな命に別状なくて良かった。

 啓作兄さんの機嫌が悪いのは、大嫌いな生物兵器に頼らざるを得なかったから。ワクチンではこの危機を救えなかったのは事実だが、地球連邦がこうも簡単に生物兵器を使えるのは危険と考えたのかもしれない。

 <フロンティア号>の損傷は深刻で、月面で修理中。改造もするみたいだけど、報酬のほとんどはこれに消えちゃうとマーチンくんが嘆いていた。ごめんなさい。

 ボルン君は右前脚をクローン修復、本当にヘンリー博士の助手になり、近く探検に出発するらしい。


 季節は夏から秋へ。

 美理と麗子は寮のベランダに立ち、夜空を眺めている。

「心地いい風」

「来た」美理の肩でピンニョが言う。

「どこ?」

「ほら、あそこ」

 星が動く。みるみる大きくなり、デルタ翼の宇宙船の姿になる。

 手を振る彼女らのはるか頭上を、<フロンティア号>が通り過ぎていく。

 遅れて爆音。

「直ったんだ。よかった。明くんも<フロンティア号>も」

「明くんか」麗子がぽつりと言う。

「え?」

「美理、気付いてる?明さんから明くんに呼び方変わってるの」

「え?そう?」


 <フロンティア号>のコクピットでは、明がシャーロットに怒られていた。

「寄り道したから3時間のロスよ」

「遅れは取り戻す。ワープ準備!」

 <フロンティア号>はルリウス星の大気圏を突破、ワープに入る。


「あ、ワープした」

「気をつけて・・」

 静かになった草むらからは虫の音が聞こえてくる。

「今度いつ会えるかな?」

 不思議とさみしくない。

 どんなに遠くても、何光年離れていても、みんなとはこの宇宙そらで繋がっているんだもの。

 ・・それにしても、よくやれたと思う。

『信じあえる仲間が集まれば、いくつもの力が一つになれば、不可能も可能になる』

 本当だね、父さん。

 私はこの夏を忘れない。

                                   

                                    完


 読んでいただきありがとうございます。長かったー。遅筆ゆえ一年以上かかった。

 スペースマンは昔描いた漫画を小説化したものです。このエピソードを描いたのは1990年頃、オウム真理教による一連のテロの前です。勿論予知したわけではない。信仰は時に残酷だ。でも当時は、宗教法人って色々恵まれてるなあ→よし今度の敵は宗教団体にしようと決めた(笑)。

 重力レンズによる星の滅亡はアリンコを焼いてではなく、重力レンズ効果を紹介したテレビを観て思い付いたが、既に星野之宣先生が「2001夜物語」で描かれていました←名作です。小説化に当たり設定変更も考えたが思い付かなかった。人間核爆弾を作るウィルスの名がPD13なのは、プロフェッサーディラノイの発見した13番目のウィルスだからと言う事にしといてください。本当は最初舞台がプレアデス星団の予定だったから。

 これでスペースマン第一部・完です。次は銀河帝国編。あの男が帰って来る。平和な時代は終わった。

 (いつになるやら)


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