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物理

変なこと書いてあったら指摘していただけると幸いです。

 力学か。どんなんだったっけ。

 「なんだっけ、っていう顔してるね。」

 ばれた。なんか言い返そう。

 「力学ってほら、あれだろ。えーと、ほら、そのなんていうか。」

 「落ち着け、阿保。」

 「はい。」

 見苦しいところを見せてしまった。

 「質点がどーのとか、運動方程式がどーのとかいうやつじゃなかったっけ。」

 むう、そんなのもあった気がする。やばい、全然覚えてない。

 「まあ、そうなんだけど、これは別に授業ってわけじゃないから、もっとふわっとした感じで進めていこうかなと思う。」

 あいつが言ったのも結構曖昧な気がしたけど。ふわっと、ね、いきなり難しい話されても困るしな助かる。

 「じゃあ、どんな話するんだよ。」

 「うーんとね、力学って物理学の一端を担っているんだけど、物理ってほかにもいろいろあるよね。どんなのがあるか覚えてる?」

 なんかあったかなあ。あ、熱力学とか。あれ、でも、力学ってついてる。まあいいや。

 「熱力学。」

 「・・・波動?」

 「電磁気!」

 「量子論とかあったよな。」

 うわ、よくそんなん思いつくな。

 「うん。大体そんな感じかな。今、物理学の分野をいくつか挙げてもらったけど、一番初めに発展したのが、力学の古典力学っていうところなの。あとは、さっきも熱力学って出てきたけど、他にも解析力学とか量子力学とか、力学だけでもいっぱいあって、それらが絡まりあって現在の物理学があるの。」

 ふむふむ、物理って大変なんだなあ。でもそんなに沢山あったら、しんどくないかな。全部わかっている人とかっているのだろうか。いるんだろうなあ、世界は広いぜよ。

 「じゃあ、そもそも物理って何なんだと思う?」

 物理とはなにか、か、哲学的な問いかけであるな。人間とは何か。人生とは何か。

 「計算が難しい学問としか思ったことないなあ。」

 「僕もだ。改めて問われると、うまくこたえられる自信がない。」

 「・・・変態が好きなもののひとつ。」

 「いやそれは違うだろ。」

 「あはははは。うーん、計算が難しいっていうと、数学とどう違うのかわからないよね。」

 それもそうか。数学と物理の違いか。数学の方がエロい。いや違うな、なんだろ。

 「数学の方が無機質な感じがするしない。」

 「は?」

 「いや、なんていうか。物理って数学より身近っていうか、実際に在るものを扱っているっていうイメージが俺はある。」

 さっきの、”は?”、は”するしない”に対するものだと思うのだが。まあでも、言ってることはわかる気がする。

 「そう。物理は身近なの。もっとも、学校で習うようなのは現実離れしたものが多いんだけどね。」

 「ああ、空気抵抗がなかったりとか、摩擦ゼロとか?」

 「うん。それでね、どうして物理は身近なのかというと。そもそも物理が、世界を私たちの言葉で記述するもの、だからなの。」

 何言ってんだこいつは?

 「ちょっと、そんな顔で見ないでよ。」

 「僕は、何となくわかる気がする。」

 なにぃ、裏切りおったなこいつめ。全然わからんぞ。これが真面目に授業聞いていたやつとの差か。

 「どういうことだってばよ。」

 「ほら、物理の単元の最初に出てくるのって定義か法則だろ。」

 「それで?」

 「定義って数学でも出てくるけど、法則ってのは数学にはほとんど出てこないんだ。僕が数学でぱっと思いつくのは、ド・モルガン法則の法則くらいだけど、物理は、運動量保存の法則とか、クーロンの法則、ボイル・シャルルの法則、まあいっぱいある。」

 「それが?」

 「・・・あ、分かったかも。」

 えっ、分かってないの自分だけ?

 「俺はまだよくわからん。」

 よかった。仲間がいた。こいつよりは先に理解しよう。そう心に決めた。

 「それでさ、法則っていうのは、観測結果から導き出した推論で、誰かがその正しさを保証しているわけではないんだ。さっき挙げたクーロンの法則だって、プラスとマイナスの物体を置いたら近づいた、という結果があって、それに外れたものがいまだ見つかっていないから、正しい法則として使っているんだよ。」

 へえ、そうなんだ。しかし何こいつ、あれだけの説明でこれだけ理解できるものかね。羨ましい。まあでもなんとく分かった。

 「つまり、物理で使っている法則は世界が示しているものだということなのか。」

 「俺も分かった。世界から少ない法則を見つけ出し、それで世界を説明する。それが物理ってことなんだろ。」

 「・・・数学は、法則の代わりに公理を使っているの。これは証明できないけど、正しいと信じるの。」

 「あらら、私が説明するとこなくなっちゃった。みんなすごいね。」

 「ふっ、まあな。」

 「お前が威張るな。」

 ちっ、なぜこいつは突っかかってくるんだ。鼻をめしょめしょにしてやろうか。

 「物理と数学の違いは分かったけど、あれだ。物理と化学は何が違うんだろうな。」

 「えーと、化学のことを深く知っているわけじゃないから、想像も入っちゃうんだけど、物理は世界がどう振舞うのかを説明するもので、化学は世界がどうやってできているのかを説明するものだと思う。ほら、化学って元素表を覚えさせられるよね。それぞれの性質を覚えて、実際にあるものがどんな構成なのかを、滴定とか指示薬とかあらゆる手段を使って分析したり、逆にほしい性質を持つように作ってみたり。そんなところじゃないかな。」

 ふーむ、奥が深いのう。何が違うのかを認識するのは大事だよなあ。与えられたものを指示通りに熟すのと意味を理解してやるのでは、価値が違う。そんな気がする。

 「物理が何なのかわかったかな。それじゃあ、ちょっと休憩しようか。」

 「賛成!お腹すいたよな。」

 「お前はそればっかだな。」

 「悪いことあらんや、欲望には忠実でいたいじゃろうが。」

 「お前は時々よくわからん。」

 「・・・面白い。」

 「そうか?バカっぽいけどな。」

 「失礼な。お前の方がバカだ。バーカバーカ。」

 「はいはい。休憩終わったら、古典力学をやるからね。」


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