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偽者王女ととある策略  作者: 八仙花
第一章 事の発端
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1) ことの発端はアヤツの逃亡

はじめまして。初投稿です。よろしくお願いします。

 「やばい〜〜!!」

 私は青ざめて、生物準備室を飛び出した。

 いないのだ。

 姿を消してしまっていた。

 準備室内をくまなく探して、最終的に扉の上方にある小窓が何故だか隙間だけ開いていたことに気がつき、アヤツがそこから逃げ出した可能性に思い至った。

 「ど、どうしよ〜!!バレたら怒られる〜っ」

 夏休み中の校内だ。人気は少ないものの、さすがにペットを学校に連れてきて、さらには逃してしまったことがバレたら、怒られることは必須だろう。

 しかもそのペットが、少し規格外のものであればなおさら……

 「と、とにかく……職員室と男子トイレと……女子更衣室にさえ入り込んでなければ……」

 最初の二つに入り込んでいた場合、私が探し回れる場所ではないので困るし、最後の場所は、第三者に見つけられた場合、大きな悲鳴とともに事件がおおごとになりかねない。

 「な、何か、手がかりさえあれば……」 

 廊下をまっすぐ歩いてくれるとも思えない。

 おそらくは、窓から校舎の外へと脱出していることだろう。

 熱帯生物とはいえ、湿気が好きなアヤツならば、炎天下で日光浴をするよりも、潤いを求めてることだろう。

 と、すれば水辺………

 「プールもいやああああ!!」

 一番最悪かもしれない。

 そこには、私の趣味を毛嫌いする、アヤツの天敵が今、県大会へ向けてトレーニングをしている場所なのだから。


 「どうしたの?みちる?」

 夏休みの部活動に来ていたらしいクラスメイトが私を見つけ、声をかける。

 「あ……ははは……アリちゃん……」

 確か合唱部の彼女は、可愛い小動物好き、という点では私と同類と言えるかもしれないが、その小動物が小鳥や熱帯魚、という一般受けする範疇であり、私の同士ではなかった。

 そして確か彼女の嫌いな動物は……うわあ、合唱部の歌姫にその声量で声を出された日には、校内中の先生たちにばれる可能性が高い。

 「ひ、久しぶり……休憩中?……合唱部、頑張ってるね」

 顔を引きつらせて私は笑った。

 「なにか探してるの?おとしもの?」

 腰をかがめて探し物をしている姿に、親切に手助けを申し出てくれるらしい友人に、私は首をぶんぶん、と振った。

 「違う違う!今、ダイエット中でさあ………ちょっとお腹がすいて、まっすぐ歩けなかったんだよ」

 「まあ!!!だめよ、みちる!!」

 アリちゃんは私の言い訳に声を上げる。

 「何でダイエットなんてしてるのよ!!どこにそんな必要があるの!?それに、まっすぐ歩けないくらいにお腹がすいてるなんて……正しいダイエットの方法じゃないわ!!」

 目くじらを立てて私に詰め寄ってくる彼女は、傍から見たら女子とっても男子にとっても理想的な体型であるが、スレンダーな体に似合わぬ胸とお尻の大きさに、本人はコンプレックスを持っているらしくて、ダイエットの知識は豊富だった。

 「ごめんごめん……今日だけだよ……明日、海に行くから、水着がねぇ」

 なんとか言い訳をひねり出して、その場を逃れようとするが、アリちゃんは親切にも、私の体を気遣い食いついてくる。

 「だからって、みちるは充分細いわよ。どこも減らす必要ないじゃない!」

 まあ、確かにあなたに比べれば、少し小さめかもしれませんけどね。

 でも平均よりはちょっとはあると思うんだけど。

 「もしかして、赤嶺くんが何か言ったの?気にすることないわよ!!」

 なんで新汰の名前が出てくるんだ。

 そりゃ、今最も恐れているのは、奴にあの子が見つかることだけど。

 「ふらついてて歩けないくらいなんて、ダメよ!明日海で溺れたらどうするの!!ちょっと待ってて、部室におやつがあるから!!」

 「あ……」

 言い訳をする暇もなく、アリちゃんはくるっと踵を返して駆けていった。

 ………おやつ?確かあの子も、夏休みの海水浴に向けてって、ダイエットしてなかったっけ?

 とにかく私は、アリちゃんの手から逃れたこの機を見逃すわけにはいかない、とアリちゃんとは反対方向に走り出した。

 こうなったら、校舎のすみずみを探している場合じゃない。

 彼が最も好みそうな場所にあたりをつけて、そこで待ち伏せるのが早いかもしれない。

 もちろん、彼がそこに来るかどうかは賭けなのだが……


ありふれた題材ですが、少しずつ個性を出していけたらと思ってます。


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