姉のミニスカート♡ ⑦ はじめての、ひみつの…お買い物
「いい? 優香。今日のお買い物は私に任せて…あんたは大人しくしてなさい」
鏡の前で、姉が厳しいプロデューサーのような目で僕をチェックする。
今日の僕は、淡いパステルカラーのワンピースに、薄手のカーディガン。
メイクも姉の指導で、より「清楚な美少女」に見えるよう仕上げられていた。
「……これ、本当にバレない?」
「自信持ちなさいよ。今のあんた、私より女子力高いんだから」
そうして連れ出された、日曜日の駅ビル。
隣を歩く姉は、僕の腕をぐいっと引き寄せ、仲良し姉妹のように振る舞う。
すれ違う男たちの視線が、ときどき僕に止まる。
(……やばい、心臓が止まりそう)
けれど、その視線は不審がるものではなく、明らかに女の子に向ける熱を帯びたもので。
それが、恐ろしくも、どこか甘美な快感を僕に与えていた。
「次はあそこよ」
姉が指差したのは、淡いピンクと白で統一された、
……お洒落なランジェリーショップ。
「えっ……ちょ、ちょっと待って! さすがにそこは……!」
「何言ってるの。見えないところを整えてこそ、本物の女の子でしょ」
抵抗も虚しく、店内に引きずり込まれる。
そこは、これまでの人生で一度も足を踏み入れたことのない、甘い香りと柔らかな布の世界だった。
レース、リボン、フリル。
宝石のように並ぶランジェリーたち。
「……綺麗♡」 思わず声が漏れた。
姉が手に取ったのは、繊細なレースがあしらわれた、シルクのスリップのセット。
「あんた、まだ胸は……まあ、これから育てるとして。まずは肌触りのいいスリップから始めなさい。これ、お肌に吸い付くわよ」
「なにっ? 育てる…なんて怖ろしいこと言わなかった」
「だいじょうぶよ。パットよ、パット」
試着室に押し込められ、僕は震える手でワンピースを脱いだ。
渡されたスリップを、頭から被る。
「……っ」
言葉を失った。
肌の上を、冷たくて柔らかい絹が、滑るように降りていく。
先日、姉に教わって磨き上げた自分の肌が、上質な布地と触れ合い、かつてない多幸感を生み出していく。
鏡を見る。
そこにいたのは、艶やかな布を纏い、頬を朱に染めた"女の子"だった。
肩から滑り落ちそうな細いストラップが、なんだか無性にいじらしい。
「優香ー、着替えた? 入るわよ」
「あっ、待って……!」
姉がずかずかと入ってくる。
「……ふーん、いいじゃない。あんたの白い肌によく映えるわ」
姉は僕の肩を指でなぞり、満足そうに頷いた。
「ブラは……そうね、今日はノンワイヤーの、この可愛いお花柄にしておきましょう。
気分だけでも盛り上がるでしょ?」
パッドを詰めた小さなブラ。
生まれて初めての、胸への重み。
店を出たときには、僕の財布はすっかり軽くなっていたけれど、心はふわふわと雲の上を歩いているようだった。
「……次は、これに合う靴ね」
姉の野望は止まらない。
その時。
「……あれ? 優斗……の、お姉さん?」
聞き覚えのある声。
振り返ると、そこには買い物袋を下げた 拓也 が立っていた。
(また来たーーーー!!)
しかも、僕の手には、バッチリとランジェリーショップのロゴ入り紙袋。
「あ、えっと……こ、こんにちは……♡」
拓也は僕の姿──
特に、いつもより大人っぽいワンピース姿を見て、顔を真っ赤にした。
「あの……今日も、すごく……その……素敵です……♡」
拓也の視線が、僕の足元から、顔、そして手に持った下着屋さんの袋へ。
彼は慌てて目を逸らした。
「す、すみません! お買い物中……ですよね、しかも……あ、ああいうお店の……」
姉がニヤリと笑う。
「あら、拓也くん。これからお茶でもしていく? この子(優香)、ちょっと疲れちゃったみたいだから」
(お姉ちゃん!? 余計なこと言わないで!!)
優香としての僕の、本当の試練が始まろうとしていた。




