姉のミニスカート♡ ⑥『綺麗なお姉さん』への階段
一度、認めてもらえると……、
人間、いや"女の子"というものは欲が出るものらしい。
「……なんか、カサカサする」
お風呂上がり。
優斗は自分の膝を指でなぞり、小さくため息をついた。
今までは「男の足なんて…こんなもんだ」と思っていた。
けれど、鏡の中の『優香』としてミニスカートを履くとき、
そのカサつきは許しがたい欠点に思えたのだ。
気づけば、姉の部屋のドアを叩いていた。
「ねえ、……姉貴。じゃなくて、お姉ちゃん♡」
「なによ……その呼び方。…で、何っ?」
姉はスマホをいじりながら、素っ気なく答える。
優斗は意を決して、自分の膝を見せた。
「あの、ここ。……もっと、しっとりさせたいんだけど」
姉が動きを止めた。
ゆっくりと顔を上げ、弟?の膝を、そして顔を凝視する。
その目は、獲物を見つけた肉食獣のそれだった。
「……あんた。ついに『保湿』の重要性に気づいたわけ?」
「ひっ……。いや、なんか、その方が服が綺麗に見えるかなって」
「いい心がけね」
姉は不敵に笑うと、棚から見たこともないようなボトルを次々と取り出した。
「いい? 女の子の肌は一日にして成らず…よ。
まずはスクラブで角質を落として、それからこの高保湿ミルクを……」
「スクラブって…あ、ちょっと待って! メモるから!」
その夜、お風呂場は優斗の戦場になった。
慣れない手つきで肌を磨き、スキンミルクを塗り込む。
自分の肌が、今まで知らなかった"もちもち~"とした感触に変わっていく。
それは、どんなゲームのレベルアップよりも、直接的に胸を躍らせた。
「……すご。これ、ずっと触ってられる♡」
自分の腕を、脚を、指先で確かめる。
すべすべ、さらさら。
その時。
「優斗ー? お風呂長いわよー、お父さんが待ってるわ」
母の声。
「あ、ごめん! 今出る!」
慌てて飛び出した優斗は、バスタオル一枚。
……だったのだが、つい癖で、姉に借りたヘアバンドをつけたままだった。
前髪を上げて、おでこを丸出しにした状態。
脱衣所の前で、父と鉢合わせる。
「……」
「……」
父は、磨き上げられた優斗の肌と、可愛い猫耳付きのヘアバンドを凝視した。
「……優斗。お前、なんか……発光してないか?」
「え、あ、……気のせいだよ! 照明が明るいんだよ!」
「そうか? ……まあ、清潔なのはいいことだ」
父はそれ以上追及せず、鼻歌混じりにお風呂へ入っていった。
(……この家、やっぱりハードルが低すぎる!)
自室に戻り、優斗はこっそりスカートに足を通す。
保湿された肌に、布地が吸い付くような感覚。
「……あ。……前より、しっくりくる♪♪♪」
(そろそろ…女の子の下着も身に着けたいなぁ。
さすがに姉貴の拝借するのはヤバすぎだよな~^^; )
鏡の中の自分は、また一段と「女の子」に近づいていた。
その時、スマホが震えた。
拓也からのメッセージ。 『昨日のお姉さん、本当にかわいかった……。また会えないかな?』
「……バレてない、よね? これ、本当にバレてないんだよね?」
鏡の中の優香が、いたずらっぽく微笑み返した気がした。




