姉のミニスカート♡ ②ミニスカートと布団
反省は、していた。
本当に……。
だからこそ、今日こそは絶対に触らないつもりだった。
家族も全員いないし、宿題だってちゃんとやるつもりだった。
……なのに。
なぜ、姉のクローゼットの前に立っているのか。
「一回だけだからな」
誰に言い訳しているのかも分からないまま、
僕は前回と同じミニスカートを取り出した。
はいてみる。
やっぱり、軽い。
「うん、前回より冷静だ」
冷静な人間は、ここで終わるべきだった。
でも、視線は隣にかかっていた白いブラウスへ。
「……上も着たら、ちゃんと“コーディネート”になるよな」
謎理論。
ブラウスを手に取って、腕を通す。
ここで、違和感に気づく。
「……あれ? ボタン……?」
左右が、逆。
留めようとしては戸惑い、
戸惑っては鏡を見る。
「男女で向き違うって、こういうことか……」
どうでもいい知識が、なぜか胸をくすぐる。
ボタンを留め終え、
スカートとブラウス姿で鏡の前に立つ。
「……なんか、別人だな。」
褒めているわけでも、否定しているわけでもない。
ただ、不思議だった。
顔が男子だもんな、髪が長ければ可愛くなるのかもな。
その瞬間。
――ガチャ。
「ただいま」
「……え?」
父の声。
ゴルフに行ったはずだ。
「雨ひどくて中止になってな」
なぜ、今。
「ちょ、ちょっと待って!!」
反射的に廊下へ飛び出すが、
羽織ろうとしたコートが――ない。
「ない!? なんでない!?」
考える時間はない。
居間へ――
いや、コタツは上半身が見える。
「詰んだ……!」
視界に入ったのは、押し入れ。
その中の、客用布団。
迷っている暇はなかった。
布団を広げ、
そのまま中へ潜り込む。
――成功。
たぶん。
「なんで居間に布団出てるんだ?」
父の声が近い。
「……あったかいから」
意味不明だが、声は出た。
そこへ。
「ただいまー」
母。
さらに。
「今帰ったわー」
姉。
三連続。
布団の中で、僕は静止した。
動くな。
息もするな。
存在感を消せ。
母が言う。
「今日は急に寒くなったわね」
「そうだな」
「誰か昼寝でもしてたのかしら?」
布団の端が、少しめくれた。
――やばい。
姉が一瞬、視線を止める。
そして、気づいたように口角を上げた。
「……あー、なるほどね」
「なに?」
「いや、なんでもない」
姉はそのまま布団を戻した。
「その布団、あとで畳んどくね」
「……ありがとう」
かすれ声で、そう返す。
その日も、僕は助かった。
完全にアウトなはずだったのに。
なぜか、毎回。
後日。
姉がぽつりと言った。
「……次やるなら、ちゃんと片付けなさい。
それと、クリーニングに出したいから、優斗が払うのよ」
僕は、強くうなずいた。
――たぶん、次はない。
……たぶん。




