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第7話 冤罪と弁明と杖

「本当にこの家の子?」

「本当だってば!」


 念の為、確認を取ってみるがやはり村長の子らしい。いや村長の歳を考慮すると孫か。

 どちらにせよ村長の血縁者であることに変わりは無いがな。


「まあ、ここで言い争っても仕方ないし、とりあえず家の───」

「誰だ!わしの家の前で言い争っているのは!

静かにせんか!」

「「!?」」


 目の前の扉が勢いよく開き、声を荒らげながら出てきたのは紛れもない村長だった。


 この村の村長であるバーゼル・アルステンドは白髪の目立つご高齢の老人。

 なのは間違いないが、その高齢にそぐわない声と態度の大きさ。

 そして、この村随一の力自慢といっても過言では無いほどの筋力。

 正直その辺の冒険者より強いと思う。


 ただ、この強さには明確な理由があり、どうやら御先祖様にドワーフがいるとのこと。


 そんな強気なおじいさんであるバーゼルの大声に驚いた少女が今にも泣きそうな雰囲気。

 いや、泣いてるな。


「なんと!わしの愛しいセレナちゃんが泣いておるではないか!誰だわしの可愛い孫娘を泣かしたのは!?」


 お前だろというツッコミは心の内に収めておこう。

 そんなことよりあの子のセレナっていうのか。

 いい名前じゃないか。

 あ、変な意味は無いからな。


「おい!そこのガキ!お前だな、わしのセレナちゃんを泣かしたのは!」


 ここでまさかの責任転嫁。

 これは流石に傍観できない。


「違いますよ。てか、なんで俺になるんすか?」

「とぼけても無駄だ!お前がわしのセレナちゃんに泥を投げつけて泣かせたんだろ!」

「だとしたらなんで俺が汚れてるんです?村長の可愛いセレナちゃんが俺に泥を投げたというのですか?」

「そんなん知らん!とりあえずお前のせいだ!」


ダメだこのジジイ、話が通じねぇ。


「ち、違う。この人、助けて、くれた」


 俺が説得を諦めたその時、先程まで泣いていた少女もといセレナが口を開き俺の冤罪を弁明してくれた。


「な、何を言っているんだいセレナちゃん?あのガキに虐められたんじゃろ?」


 自分の可愛らしい孫娘が急に自身の目の敵を庇い始めたのでオドオドし始めるバーゼル。

 傍から見てると面白い。


「違う。私を、モンスターから、守って、くれた」

「モンスター?モンスターに出会ったのかい?」


 バーデンの問いかけに対し、少女はゆっくりと頷く。

 どうにか誤解が解けてきたようなので、ここで軽く説明しておこう。


「ここから先は僕が説明しましょう」

「⋯頼む」


 不服そうな顔が少し気になるが、誤解を解くために森でのできごとを全て話した。


「そうか。森でそんなことが⋯」


 信ぴょう性にかけるかと思ったが、納得はしてくれた模様。


「先程はすまなかった。恩人に対しての非礼、深く詫びよう」

「気にしないでください」


 自分の孫が服を汚して男と帰ってきたのだ。虐めにあったと考えてもおかしくない。

 それでも相手の言い分は聞くようにして欲しいが。


「そういえば名を聞いてなかったな。どこの家の子だ?」

「俺の名はバルト・ナーヴァスといいます。ハイゼン・ナーヴァスとゼレーナ・ナーヴァスの息子です」

「ナーヴァス⋯あぁ、村の入口付近に住んでいる若い夫婦だな」


 どうやら名は知られているらしい。

 村長という肩書きも伊達じゃないな。


「わかった。また後日お礼を持っていこう」

「そんなことしなくても大丈夫ですよ。お礼が欲しくてしたわけじゃありませんから」


 何よりハイゼンとゼレーナへの説明が面倒臭い。

 いや、この服の時点で説明からは逃れられないとは思うが。


「いや、借りは返す。絶対にだ」


 そうだ、ひとつ忘れていた。

 このジジイ、引くほど頑固なのだ。


──────


 バーゼルの借りは返す宣言を受けてから約1週間後。バーゼルとセレナ、そしてセレナの両親と思われる夫婦を含めたアルステンド御一行がナーヴァス家へやってきた。


「この度は娘の命を救って頂きありがとうございました」


 アルステンド御一行をリビングへと案内した後、一番最初に口を開いたのがセレナの父親だった。

 ちなみに、この場には俺の両親であるハイゼンとゼレーナも居合わせている。


「頭を上げてください。娘さんが無事で良かったです」


 セレナの父親からの感謝の言葉に真っ先に反応したのはハイゼンだった。

 俺はまだ5歳だからこういう面倒な会話をしなくていいのは楽だな。


「えぇ、娘をこうやって抱けるのもバルトくんのおかげです。本当にありがとうございました」


 椅子に腰かけているセレナの母親が自身の膝に抱いているセレナの髪を撫でつつハイゼンの言葉に反応した。


「わしからも改めて礼を言おう」


 セレナの両親に続くようにバーゼルも感謝を述べる。


「さて、確かバルトと言っておったな。セレナを救ってくれたお礼だ。遠慮せず受け取れ」


 そういうとバーゼルは布に包まれた長方形の箱を手渡してきた。

 布に包まれているから中身は分からないが明らかに普通のお礼じゃないのは分かる。


「開けてみろ」


 渡した本人がそういうので布をめくり木箱を開けてみると細長い棒が入っていた。


「これってまさか⋯」

「驚いたか?お前さんが魔法を使うと言っていたからな。知り合いに頼んでバーデンから取り寄せた魔法の杖だ」


 これはとんでもないものを頂いてしまったようだ。

この作品を読んで頂きありがとうございます!!

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